HAPPY LIFE 23 by 司

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久しぶりの穏やかな休日。

家族3人で楽しもうって言ったら思った以上にはしゃいだ笑顔。

母親につられる様に笑い声を上げる駿に無性にうれしくなる俺。

何気ないやりとりはかけがえのない優しい時間を作る。

それをかき消す携帯の着信音。

ボタンを押す前から舌打ちをする。

着信音は西田からのもの。

用件は仕事がらみ以外はあり得ねぇ。

うざったく出た携帯を不機嫌に切った。

「仕事?」

俺が言う前につくしがつぶやく。

落ち込んだような表情。

そんな表情見せられると無性に辛くなる。

「すまん、すぐに済ませるから待ってろ」

腕の中に抱きよせたつくしを離せないままにつぶやく。

つくしに言い聞かせてるのか、自分に言い聞かせてるのかわかんなくなる感情がそこにある。

不機嫌をそのまま表す様に足音を響かせて二人に見送られた。

遊園地だったか・・・。

動物園だった・・・。

今日の予定?

「駿は初めてみるものばかりで喜ぶよ」って、一番楽しみにしてたのあいつだよな。

朝から弁当なんて作ってたし。

昼までには帰れっかな?

走る車のなか仕事の思考へと頭を切り替える様にシートにもたれて大きく一つ息を吐き出す。

「西田、わざとじゃねぇえよな」

ビル入り口で俺の到着を迎える仕事人間。

俺のきつい視線も素通りする態度の西田。

「代表の英断が必要でお休みの所申し訳ありません」と軽く頭を下げられた。

西田から奪い取る様に手元から書類を受け取る。

「早く終わらせるぞ」

言い残して執務室へと向かうエレベーターに乗り込んだ。

思ったよりてこずった仕事が終わったのは午後3時。

間に合わねぇよな。

まあ・・・

仕事だったと諦めてはくれてるだろうけど。

急いで帰って機嫌でもとるか?

俺が機嫌取るこの世界中で二人しかいない貴重な存在。

国宝級!世界遺産!みたいなもんだぞ。

運転手をせかせながら帰り着いたあいつらの待つ家。

エントランスに出迎えるはずの愛しい二人の姿が見当たらない。

「どこだ?」

すぐ横にいた使用人に声をかける。

「はぁ・・・」

煮え切らない返事にいらっとくる感情。

「つくしはどこだ?」

居並ぶ使用人が気まずそうに顔を見合わせる。

「いないのか?」

もしかして俺なしで出かけた?

その割にはSPの数は減ってねぇ。

「どこ行ったかいってみろ!」

荒げる俺の声に完全に委縮する使用人たち。

「つくしなら出て行きましたよ」

使用人たちの後ろからコツンと杖をつきながら姿を現すタマ。

その声にギョッとなる。

出て言ったって・・・どこに?なんで?

疑問と不安が入れまじった情けねぇ気分。

「実家に戻るって駿坊ちゃんと一緒に二人で出ていかれました。

愛想尽かして出て行ったんじゃないんですか?」

コツンとタマが杖をつくたびにビクンと胸の奥に響く。

休日休めなかったの仕事だぞ?

ドタキャン・・

これで何回目だ?

それにつくしが切れたってことか?

「なんで止めなかったんだ」

「言い出したら聞かないのはどちらも一緒だと知ってますからねぇ」

タマの言うことならつくしは聞くだろうがぁーーーー。

タマじゃなければ襟首つくかんで引きあげて睨みつけて、ぐちゃぐちゃに丸めこんで投げている。

ぐちゃぐちゃのしわくちゃの顔を眺めて唇をかむ。

絶対俺をいじめて喜んでいるぞ!このばぁさん。

タマに手出しできない反動で威嚇する対象はSPに向けられる。

「お前らッつくしにつけたSPだろうがぁ」

完全にやつあたりだ。

声にならない悲鳴を呑み込んで黙り込む大柄な男たち。

「早く迎えに行った方がいいんじゃないんですか?」

「こんなことは時間が長引くと収拾がつかなくなるものですよ」

見かねた様にタマが口を挟んだ。

「チッ」舌打ちしたまま今降りたばかりの車に乗り込んだ。

あいつ・・・

本気で怒ってるのか?

ウソつき!バカ!くらいならいいが・・・

帰らない!

別れる!

言われたらどうする?

さすがにつくしの実家の玄関で言い合いはできねぇし。

両親の前で「悪かった」と頭下げる俺。

想像できねぇつーか、ムリだ。

車が止まったことも気が付かず悩みこんでいた。

運転手に付いたと言われても足が動かない。

どれだけビビってんだ。

普段5歩程度で着く小さい玄関。

10歩かかってベルを押す。

開いたドアの先でつくしの親父さんがあんぐりと口を変えたまま固まった。

「つ・・つ・・つ・・・」

数秒後どもりながら部屋の奥へと転げるように親父さんが消えていく。

「迎えに来てくれたんだ」

駿を抱いたつくしは笑顔で・・・って

何か違わないか?

怒ってる様には見えない。

不安は不機嫌に微妙に移動する。

「車も使わずにSPも付けないってどう言うことだ?」

喉の奥から絞り出す低い声。

「えっ?実家に帰るだけだし、すぐに帰るつもりだったから・・・

大丈夫でしょ?」

遠慮がちに言って俺の不機嫌の要素を探る様な態度をつくしがとる。

こいつ・・・ぜんぜん怒ってねぇーじゃねーかッ。

どう聞いてもただたんい実家に遊びに来ただけの感じだ。

タマのやつーーーーー。

騙しやがった。

今頃ニンマリして和室で湯のみを両手で包みこんでお茶でも飲んでんじゃないか?

「・・・っ・・・騙された・・・」

つくしの両肩に置いた手が気が抜けた様にがくっとなって溜息がホッと漏れる。

「騙された?」

「愛想尽かして出て行ったんじゃないんですかって、タマが・・・」

「もしかして・・・出て行ったと思って迎えに来てくれたの?」

「悪いか」

自分の慌てふためいた様が気恥ずかしさに変わる。

そんな俺の気持ちに気が付いてる様につくしがクスッと笑った。

「心配しなくても大丈夫だから」

「心配なんかしてねぇよ」

ほら吹く感じで強がる俺。

「それじゃ、帰るから」

目の前の駿が俺に抱っこをせがむ様に両手を伸ばす。

抱き上げた駿が「キャッ」とうれしそうに声を上げた。

心配した俺がバカなのか?

こいつらのことになると慌てたしまうのはどうしようもない。

もうニ度と騙されねぇぞ。

駿をあやしながら自然と顔がほころぶ。

「先に行ってるぞ」つくしを一人のこして玄関を出る。

すぐにつくしが俺達のあとを追って車に乗り込んだ。

走りだす車の中「幸せだね」とつぶやくよう言ったつくしが俺の肩にもたれかかる。

「そうだな」

甘ったるい気分の中で二つの大事なもんをしっかりと抱きよせた。

tsun 様より『出て行った?そんなことないよな?と不安な気持ちでやって来る司側を読んでみたいです。

SPや使用人達に怒鳴りつけながら、迎えに行く様子。

想像すると笑える。』

とのコメントでお題をいただきましたので司サイドのお話をUPしました。

お楽しみいただけたらうれしいです。

拍手コメント返礼

Noemmi様

久しぶりのタマさんというか、うちでは滅多に登場しないタマさん。

掴みどころはばっちりです。

西田さんキャラもそろそろですね・・・

しばらくご無沙汰ですものね。恋しくなったかな?

annie様

こちらのつかつくは何事も事件もなく穏やかに過ぎていく感じです楽しく書いてます。

本当に何もひねらずにかけるので書いてる私も楽にかけて好きなんです。

家族の時間はこうでなくてはと願望気味かも(^_^;)