下弦の月が浮かぶ夜7
*「牧野、このままあの噂に付き合うか?」
「えーッ!」叫んだ後にごくりとなる喉。
『かたづを飲む』って、この事を言うのかと息をひそめた。
もし・・・
このまま美作さんの言うとおり彼女のふりして、噂が広まれば道明寺の耳にも入るよね?
どうなる?
考えなくても答えは決まってる。
青筋くらいで済めばいいけど・・・
許せねぇッて迫ってこられたら・・・
監禁されそうだ。
「無理にとは言わないから」
クスッと笑う頬笑みにわずか漂う哀愁。
美作さん・・・
本当に困ってるんだよな。
弱い部分にグッと食い込んでくるのは手腕か?
頭の中ではガンガン警報がうるさいくらいに鳴ってるのに心は美作さんを助けなきゃッて方向に傾き始めてる。
「他にいい方法ない?」
「俺が親父たちの言うとおり受け入れれば済むことだから」
もう!
こんな言い回しされたら断れないよぉ~。
「道明寺にばれたら困る」
「ばれるのは時間の問題だと思うけど」
「ばれたらあとは俺が殴られてやるよ」
殴られるって言いながら笑う美作さんがやけに明るく見える。
もしかしてマゾ?
錯覚しそうな表情。
「その前に、見合い相手に会いに行かなくちゃいけないからな」
「牧野が俺の作戦に乗ってくれるんだったら気が軽くなる」
「それは良かった・・・」
言葉とは対照的に落ち込む様にハーアーと息を吐く。
「考えをまとめたいから帰る」
椅子から立ち上がりながら目眩を起こしそうになった。
バカだよなぁ私。
「牧野送っていくから待て!」
「いい、風に当たって帰りたいから」
これ以上美作さんと一緒にいたら道明寺に言い訳ができない気分に落ち込んでしまってる。
何度も送ると言う美作さんを振り切って部屋を出た。
どうしてこんな展開になった?
道明寺との久しぶりにデートのはずが、変な男にナンパされそうになって、そしたら美作さんが現れた。
彼女と別れるのに付き合えって連れてこられたら別れたい彼女は複数形。
別れた理由が親に結婚を迫られてるからでそれを断るために私が美作さんの彼女の振りをすることになった。
誰がこんな展開予想する?
「牧野だからじゃん」
「自分からトラブルしょってくる」
花沢類にも西門さんにも良く言われる。
「このバカッ!」
とどめは道明寺の不機嫌この上ない責める口調。
道明寺が・・・
あいつがデートをドタキャンしたせいだ!
こんな言い訳通じるかな?
うっ・・・。
無理だよなぁ。
このまま座り込んで泣きたい気分。
それに浸りきるほど落ち込むこともできない。
美作さんの為だ!
噂は噂だしね。
美作さんとはなんでもないし・・・
これまでも相当面倒見てもらったからしっかりおかえしもしないとね。
楽天的に考えよう!
っか、考えもしょうがない。
落ち込んだり立ち直ったり、さっきから考えがまとまらない。
きっと今の私の表情は百面相に近いくらいにクルクル変わってるに違いない。
このアホ!
考えなし!
優柔不断!
浮気者!
夜空の上に私を怒なりつける道明寺の顔が見えた気がした。
つづきは下弦の月が浮かぶ夜8で
拍手コメント返礼
しずか様
司が怒らないわけないですよね。
あきらにはどんな態度をとるのか司クン。
T3は出てくるのか!
すべての登場人物が入り乱れたらドタバタになりそうですよ~。