幸せの1歩手前 10
*「何喜んでるんだ」
「いや・・・別に喜んでるわじゃないんだけど・・・」
道明寺の顔色をうかがいながら下からそっと上へと視線を移す。
不機嫌そうに引きつる頬。
「ったく」
吐き捨てる様に言葉を吐いて強引気味に腰に回して来た長い腕が私を引き寄せた。
「なっ、なに」
思わず裏返る声。
「西田さんもまだいるのに!」
近づく顔をそのまま両手で遮る。
「イチャイチャしてれば遠慮して出て行くよ」
「イチャイチャって・・・」
両手も押さえこまれて身動きが取れなくなったまま耳元にかかる息。
「気が付きませんで」
動じてない声の主に思わず首だけ横に向ける。
「二十分だけですから」
表情を変えずに出ていかれた。
さっと血の気が引く気分。
西田さん中途半端な時間作らないでよーーーーーッ。
無情に閉じたドアを非難する様に見つめた。
「たんねぇよな、二十分じゃ」
「五分でいい、いや三分で十分」
ブルと思わず首を左右に振る。
無視するように左右の頬を道明寺の手のひらが包み込む。
「二十四時間」
へっ?
二十四時間って・・・一日!
それは無理だ!
仕事!仕事がある。
それに今から関西に行くんでしょうがぁぁぁぁぁ。
「なに、言ってるの!」
焦る様に声が高音になる。
「お前に触れてない。昨日から二十四時間以上」
そうだったか?
昨日は道明寺を残して出社して、帰りは何とか一緒だったし手ぐらいは握った様な気はするけど・・・。
ふて寝してたのは道明寺の勝手だし、たまにはそんなこともあるだろう。
って・・・
理屈が通じる相手じゃなかった。
「一緒に寝てたじゃん」
これが意味あるわけないのは分かってるのに言ってしまうのはなぜなんだろう。
ギリギリの虚しい抵抗だ。
欲望のままに熱く見つめる瞳とぶつかった。
拒否する間もなく重なる唇。
官能的に急速に駆り立てる様なキス。
それは道明寺の情熱のままに躊躇することなく私に注がれてくる。
それを抗うだけの経験は私にはない。
「続きは夜な」
名残惜しそうに離れた唇。
気持ちだけ取り残された様に戸惑う。
目の前のあいつは満足そうなほほ笑みを見せる。
私は現実に戻れないまま返事もできずにボーッとしてしまってた。
「お前がうんざりするくらい側にいてやるから覚悟しとけ」
コツコツと遠ざかる靴音。
振り向きざまに響く道明寺の声。
上昇気味に機嫌のいい響き。
部屋に私を残したままパタンとドアが閉まる。
ゆるゆると床に座り込む。
「はぁー」
「つかれた・・・。」
身体から空気が抜ける様に小さく声が漏れる。
二十分経ってない。
腕時計の針は数分の経過しか示していない様な状態。
キスだけでこれって・・・。
耐えられるのだろうか・・・。
心によぎる一抹の不安。
お手柔らかにお願いしたい。
通じるかな道明寺に。
「はぁー」
また溜息が洩れた。
久々にちょっと甘い感じで~。
この差がどう出るのか?
西田の思い通りにはさせないぞ!という坊ちゃんの意思を読み取ってもらえればと考えてUPしてみました。
それでもやっぱりドS倶楽部は健在ですから~。
拍手コメント返礼
hokuto☆raou様
周りを気にする様な道明寺じゃないでしょけどつくししかか見えてないから大変でしょうね。
西田さん目線も頑張ってみました。