下弦の月が浮かぶ夜34
*「見たわよッ!どうして逃たのよ」
「アッ・・・」
「それはね、紹介できそうもなかったからでね」
「キモイ!そう、ブサイク芸人みたいなやつだから」
「本当!そうなの」
こけそうになった。
すれ違い様に聞こえてきた葵と数名の女子社員との会話。
俺がブサイクかッ。
イママデ言われた事もないぞ。
俺と一緒にいたのが同僚にばれたくないからって、その言い訳がそれって、捻りがない。
クスッと声が出た時、しまったみたいな葵の表情を視線の先がとらえて、また笑みが漏れる。
大声あげそうになった。
「今日は、帰らないからね」
小声で聞こえた声。
咄嗟に回りが気が付いてないことを確認して葵の腕を取り人目から避けるようにすぐそばのドアを開けて部屋につれこんだ。
「なに、こんなところで声をかける。俺とのことばれたくないんだろう」
「俺はどうせブサイクだしな」
からかい気味の気分で声を出す。
「やつぱり、聞こえてたみたい・・・ですね」
困った顔にキッと力が入って眉が少し吊り上がる。
「そっちこそ、気が付かれたら大騒ぎになるわよ」
言いながら小さく開けたドアのすき間から廊下を見てすぐにドアを閉めた。
さっきより殺気を感じる視線を向けられた。
「結婚式のあとから携帯のメールどれだけうるさかったか知らないでしょう」
それは想像は付く。
俺との関係を確認する内容が大半て事も・・・
そっちは誤魔化すの無理あるだるだろう。
ブサイク芸人じゃ収拾つかないだしなッ。
そっちはどう誤魔化したのか、さっきの同僚の反応より気になった。
「今日仕事が終わったら、用事があるから実家に帰るからね」
思いだすように葵が呟く。
俺の興味をそらすつもりかと思ったが、何も裏がないって感じの素直な表情が見えた。
考えがある奴なら、俺との関係を大々的に利用してるに違いない。
葵にはそう言ったずるい性格は見当たらない。
だから俺もそばにおいて置けるのかと気が付いた。
「用事って、なに?」
「関係ないでしょう」
俺を拒否するような思いを感じる声。
無性にその訳をこいつの口から聞きたくなった。
iPadで初投稿です。
やっぱりパソコンが楽です。
慣れたら楽になるのかな?
短めになってしまった。