ごめん それでも愛してる 1

この物語は『下弦の月が浮かぶ夜』の続編となります。

あきらと葵(オリキャラ)の恋の行方がメインのお話です。

*

機体を大きく傾けつつ高層ビルの立ち並ぶ高さすれすれに着陸くした啓徳空港から香港国際空港に姿を変えたのは、イギリスから中華人民共和国への香港返還当日だったと記憶する。

香港国際空港はアジアのハブ空港の一つとしての地位を獲得している。

ロンドン・ニューヨークと並ぶ世界三大金融センターの一つと評され、多くの多国籍企業が進出してる香港で、日本からの企業進出に手を貸してる最大のボスがあの爺様。

葵と結婚したら香港の拠点はすべて譲ると言うのがあの爺様の条件だった。

香港を手にするということは美作一族の長なるに等しい。

俺より親父がその気になってる訳も分かる。

葵はそのことは知らないはずだ。

『借金を肩代わりするから一緒に住め』みたいな事で始まった同居生活。

2カ月たった今もキス止まりの関係はあいつらに知れたら病気扱いされそうだ。

「私、香港っていうか、海外に来るの初めてなんです」

「パスポートも初めてで・・・」

目の前でパスポートを握りしめて顔赤らめてるやつ初めて見た。

税関で入国の判を押されるのもうれしそうに眺めてる。

こいつといると人間なんでも感動できるものだと錯覚しそうになる。

「なぁ、その他人行儀に丁寧に喋るの止めないか?」

俺の好きだって告白を受け入れてくれたのは数時間前。

「今は仕事中ですから」

表情まで秘書の顔にもどった。

つーか、すげー機嫌悪くないか?

原因は想像がつく。

にこやかな顔で顔なじみのCAに何度となく声をかけられた。

機内で渡されたCAからの名刺、数枚。

そこには今日泊まるホテルとか、携帯番号が記載されてるはずだ。

葵の目の前でそれをにこやかに受け取ったのは習慣みたいなもの。

受け取った時はポカンとした目で葵に見つめられていた。

見もせずに破ってポケットにしまい込んだが遅いよなッ。

ここで言い訳したらまずい気がして葵がなにか言うまで待とう心に決める。

が・・・

葵はウンともスンとも言わなくなって、ヘッドフォーン付けて無視を決め込まれる。

こいつの扱い方が分かんらない。

司に聞いておくべきだったか?

純情、強情女の扱い方。

そっちの対応の仕方は司の方が経験値は積んでいる。

でもあいつらも喧嘩ばっかだもんなぁ。

参考になるのだろうか。

ようやく声を聞いたのが「香港初めて~」

俺が持っている葵のトランクまで、「社長に持たせる訳にはいきません」と、言い出す始末。

「彼氏ならいいだろう」

トランクを取りあいになる寸是で俺の言葉に大人しく葵は手を引っ込めた。

つーか周りをキョロキョロするなッ。

誰も知り合いはいないはずだ。

目についたゴミ箱の中にさっき破り捨ててポケットにしまっていた名刺を捨てる。

「なにもないから」

後ろについてきている葵を気配で察知しながら振り向きもせずそうつぶやいた。

迎えの車に乗り込んで支社ビルに向かう。

助手席に座ろうとする葵の腕をつかんで強引に後部席に一緒に乗り込んだ。

まだ機嫌は直ってないと言う様に車窓に顔を向けたままの葵。

不機嫌感情をどう扱うか・・・。

計算した女の不機嫌さに合わせる術はしってるが感情に偽りがないのはお手上げだ。

答えが見つからない。

「悪かった」

「別に怒ってませんから」

その不満そうな顔が怒りじゃなきゃ理屈が通らない。

わずかに後部席の背もたれと葵の腰の間に見つけた隙間からそっと手を滑り込ませ、葵を自分の方へと引き寄せる。

「キャッ」

小さく上がる声。

俺の胸の中に葵のスッポリと収まった。

俺を見上げるように葵が顎を上げる。

「本当はさっき、お前の返事を聞いた時にキスしたかった」

俺の吐息を感じてわずかに動揺の色合いをにじませる瞳。

それが俺の心を引き寄せる。

二人の唇がぴったりと重なった。

俺も本心のまま動いてる。

すぐに新章スタートです。

さぁ~。

二人の仲が進展する前にお仕事ですよ~それとも事件?

司なら「馬に蹴られて痛かった」

言われるだろうな・・・・

拍手コメント返礼

かなめ様

どうもありがとうございます。

お手数おかけしました。(^_^;)

こちらの話も気にしてもらえてうれしいです。

今一番書きやすいお話なんですよね。

大体が出来上がってるのでさら~と書けるんです。

しばらくはこのお話がメインで更新になりそうです。

hanairo様

気にかけてもらってうれしいです。

司とするとおとなですよねあきら君。

あきら君なら温和な生活が送れそうな気がするんですけどね。

ふブンチャン 様

あきら君の恋バナもつかつく同様よろしくお願いします♪