甲斐君のつぶやき Ⅱ-1(玲子さんの婚活物語 )

甲斐君のつぶやきⅡで玲子さんの尻に敷かれてしまった孝太郎君。

玲子さんの婚活物語に話が飛んだのもここからだったんですよね。

栞様の期待にお応えしてUPします♪

このお話は「玲子さんの婚活物語 11」の番外編となります。

 *

俺に気が付いた玲子さんと絡み合う視線。

楽しそうに知らない奴と笑顔で交わしてた会話も途切れた。

「玲子さん・・・」

カラカラに乾いた口の中は思う様に言葉が発せられず飲む込む唾液もないままにゴクンと息をのむ。

そして、俺を気にしてないと言う様に玲子さんの顔は俺から逸らす様に別な男に振り向いた。

なにかに押される様に玲子さんの側により右の手首をつかんだ。

「甲斐君どうかした?」

俺の手を振りほどくこともなく玲子さんは身体ごと俺に向かい合う。

「気になる女性でもいた?」

「・・・あなただ」

「えっ?」

驚いた様に見えた表情はすぐに冷静な視線を俺に投げかかる。

「気になって・・・目が離せなくて・・・」

「他の男に笑いかける玲子さんを見たくない」

「遅い」

何もかも見透かしているとでも言う様に玲子さんが笑った。

「この前私に言ったこと全然覚えてないでしょう」

「この前って・・・」

「1か月前一緒に朝まで飲んだことあったよね」

いきなりネクタイつかまれて引き寄せられて玲子さんの顔が俺の鼻先に迫る。

「あの時、私に好きだって言ったこと・・・」

「えっ?えーーーーーーッ」

「お?あっ?へぇ?」

「そんなに驚かなくていいでしょう」

「さすがの私でもドキッとなったわよ」

「意識した途端に翌日はなにもなかったように出勤してたんだよね。孝太郎君」

「明るく、いつもみたいに『おはようございます』なんて言ってくれちゃってね」

全く覚えてない。

彼女と別れた話をしたのは覚えてる。

そこで俺が玲子さんに告るって・・・。

失恋の痛手。淋しさからの逃亡なんて思われても仕方ない。

そんな心の傷はなかったと確実に言いきれる。

普通は信用されないよな。

「覚えてないけど、本心です」

「何でも許せるくらいに君の性格は分かってるからね」

クスッと笑みを浮かべる玲子さんと対照的に心音がドクドクと跳ねあがる。

「でもね自分から言い出すの癪に障るし・・・」

「すっかり忘れられてちゃ、仕返しの一つでもしたくなるわよ」

「だからって、こんなやり方卑怯じゃないですか」

「告白して、すっかり忘れてる人に言われたくないわよね」

主導権は完全玲子さんに握られている。

それでも、それが居心地がいいって感じる俺って・・・マゾ?

フワッと玲子さんの腕が俺の首筋に巻きついて、耳元でささやかれた。

「もう一度言ってくれたら、許す」

わずかに耳元に触れる唇。

甘く官能的に響く声。

抗うことも忘れて捕われていく。

「・・・好きです」

離さないように君を抱きしめる。

俺・・・

この人の手腕にはかないそうもない。