涙まで抱きしめたい 10

さて!あきらはどんな行動をとる!

司化するのかな~

そんなお話は続きからどうぞ

*

マンションに帰りかけた車を葵のいるはずの店にと行先を運転手に告げる。

そのまま後部席のシートに身を沈めた。

落ち着かないのは今も変わらない。

俺のそばにいるといったあいつを信じてないわけじゃない。

ただ俺以外の奴に微笑みを向ける葵を想像したくないだけ。

想像しなければいい。

このままマンションに戻って帰ってくるはずのアイツを静かに待つ。

きっと葵は息を切らせて慌てて戻ってくるはずだから。

落ち着かない感情は出口を求めて体中を走り回っている。

やばいくらいに嫉妬している。

感情のままに行動するのは俺らしくない。

俺が葵のいる店に現れたら・・・

顔をしかめる葵は容易に想像できる。

あの里中なら香港でも会っている。

俺たちの関係に気が付いてるかもしれない。

自分に都合のいいように解釈してた。

少しライトを落とした暗めの店内。

ざわついた音に揺らめくように煙草の煙が上がる。

近くに行かなければ誰か認識できない店内では俺に気を留める奴は皆無だ。

騒がれることなくテーブルの合間を抜けるように進んでその奥に葵を見つけた。

「すいません、帰ります」

「今の携帯は彼氏?」

里中の声に葵は無言のままだ。

「携帯に出たのは謝る。着信が切れなくて、2回も続けてかかってきたし急用かと思ったから」

椅子から立ち上がった葵の腕を取り、座るように里中が葵を引き戻している。

「店の名前は伝えといたから」

「言ったんですか?」

非難気味の声を葵が上げる。

「教えられたら悪かったか?」

近づいた葵の耳元で小さくつぶやいた。

本当は葵の腕をつかんで抱きしめたい衝動。

理性で押さえてる。

「社長!」

素っ頓狂に声を上げたのはテーブルを挟んで座る里中。

立ち上がった拍子にワインのグラスがカランと倒れた。

床に滴り落ちるワインも気にならない様子で俺に向ける里中の視線は固まったままだ。

葵が慌ててグラスをもとに戻してテーブルをおしぼりで拭きあげた。

「もしかして・・・着信の『あき』って、社長の美作あきらだったのか?」

テーブルを片づける葵に注がれる視線は戸惑ったまま注がれる。

ガタッ!

力が抜けたように里中が椅子に座りこんだ。

「君がなかなか彼氏に会わせたくなかった訳だ」

「すいません」

葵は俺を非難するように見て里中に視線を移す。

「騒がれると困るから言えなかったんです」

「何となくわかるから・・・そうか、考えたら香港の時に気が付くべきだったんだよな」

「えっ、あの時はまだ・・・・」

葵の表情は見えないが発した声は照れている。

モジッとした感じは俺の心をくすぐる。

「あの時には、しっかり好きだと伝えただろう」

「こんなところで言わないで」

たしなめるような口調にかわっても照れ具合は変わってない。

「大丈夫かな?」

「えっ?」

「俺は言うつもりはないけど」

里中がチラリと斜め前に視線を投げる。

「社長!キャー」

「なんでいるの!」

振り向いた俺の目に見覚えのある社員の嬉々とした顔が数名飛び込んできた。

ほかに会社の奴らがいるとは予想もしてなかったのは俺の落ち度。

会社の近くの飲食店。

ほかにもいるのか!

思わず見渡す店内。

すべての人々が社員に見えてきた。

葵は笑って許してくれるだろうか・・・。

不安になった。

拍手コメント返礼

pollon様

こんにちは♪

このお話の更新を楽しみにしてもらえてうれしいです。

コメントいただけて有頂天気味です。

連載の話の数がなぜか増えてる状態でいままで一番多い状態で執筆してます。

頭の中は5分割くらいの状況。

少しペースは落ちますががんばってUpしていきます。