春光の遥か 6
またまたアップが遅くなりました。
それも少し脱線気味なお話。
総ちゃん、しばらく我慢。
*慰めようとか・・・
元気づけようとか・・・
そんな思いより、ただ自分が安心したかっただけ。
西門さんと赤ん坊の取り合わせはどうもピンとこない。
西門さんの傍にいるのはどこまでも自分の華やかさを強調するか競うような女性達だ。
私の評価は高校の頃からほとんど変わっていない。
私には絶対無理!なタイプ。
でも、遊びで付き合ってるとしても責任感のない態度を西門さんがとるとは思わない。
西門さんが知らない赤ん坊が出てきてもそれはそれで驚かないんだけど、それなりに心配してた。
なのに!
どうして私が脅される。
「会ったこともない相手に俺の子供を産んだって言われてるんだぞ」
「司が身に覚えなくてもなぁ」
たく!
タダじゃ終わんないんだから。
いとも簡単に西門さんに乗せられる自分。
私も高校の頃から何ら成長がないじゃないかぁぁぁぁぁ。
道明寺と結婚して一緒に暮らす日々。
司法修習のため時々しか帰らなかった半年、そして今ようやく落ち着いている。
屋敷の塀が見えてきたところで車を止めてもらう。
「少し歩きたいから」
車が見えなくなったのを確かめてゆっくりと歩く。
お金とか、小さいものじゃないんだから!
なに腰をかがめてるのか。
段ボール箱とか・・・。
段ボールに入ってるのは捨て猫か捨て犬。
普段見慣れない景色はないか確かめるように歩く。
屋敷の周囲を慎重に見落としがないように目を凝らした。
屋敷1周30分ってどれだけ無駄に広いのよーーーーーッ。
でも本当に・・・
西門さんが言う様に見つけたら私はどうするつもりなんだろう。
「司の子どもだって」
わざと目の前に脇を両手で持った子供を差し出す。
目鼻立ちは ○・×なのに髪の毛だけは天パーの黒髪が浮かぶ。
ついでに道明寺の反応を想像。
たじろぐ。
それはない。
「なに寝ぼけてんだ!」
不機嫌な表情で子供を無視。
それが一番道明寺らしい対応。
覚えがあれば狼狽えるだろうけど。
変なことを考えてるよ。
心の中で完全に苦笑する。
一番ありえないつーの。
目の前の重厚な門の扉が左右に開く。
ここから玄関まではまだ数十メートル?
屋敷の玄関のドアはここからは見えない。
後ろに感じる気配。
「なにやってんだ?」
私の横に止まった車の後部席のドアがスライドして目につくクルクルの黒髪。
いつもより印象深いのはさっきの頭に描いた映像のせいだ。
「なにきょとんとしてんだよ」
「お前へん、変なのはいつもか」
目の前の顔は憎たらしいくらいに満面の笑みを浮かべてる。
「帰って来るの早くない?」
「お前がいるから早く帰ってくるんだろうがぁ」
さらりと言うから照れそうになる。
「さっきから帰らずになんで家の周り歩いてるんだ?」
「・・・」
一瞬で血の気が引いた。
「見てたの!?」
さっきのいたずらっぽい道明寺の顔つきの意味がわかった。
「コソドロでもしそうな雰囲気」
「周囲をきょろきょろうかがってる視線」
「背中に風呂敷き背負ってるみたいなやつ」
いったいいつの時代の泥棒を想像してるんだ!
出来るならルパンとかキャッとかの華麗さの想像はないのか!
私のキャラじゃなかった。
「自分の家に忍び込むつもりじゃないよな?」
意地悪く言いながら優しく目は笑ってる。
後部席のドアが開いてエナメルの輝く靴は地上に立つ。
「たまには歩くのもいいかもな」
ゆっくりと肩に回される腕。
門はくぐらず壁に沿って道明寺と歩く。
もう十分歩いたんだけど・・・。
楽しそうに、嬉しそうに、無邪気な表情を作る道明寺に何も言えなくなった。
次回の展開までのティータイム。
結婚前なら絶対車につくしを引きずり込んで~
速攻で屋敷内に監禁ですかな?