君じゃなきゃダメなんだ 1

あきら&葵の第四弾です。

連載を2つくらいにしてからと思っていたのですが、早く続きを~の声に押されてしまいました。

1日しかあかなかった・・・。

『涙まで抱きしめたい』の番外編で葵のプロポーズに応えてないと気が付いたあきら君

どうなるんでしょうね~。

結婚まで簡単にはいかないぞ~というお話?

いえいえそんな姑息なことは考えておりません。(^_^;)

*

他愛のないおしゃべりも・・・

傍で感じる温もりも・・・

居心地がいい。

そばにいるだけ不思議と落ち着く。

生活の中で楽しく過ごせる空間を作り出してくれるただ一人の女。

俺に向ける屈託のない葵の笑顔が好きだ。

葵は俺に向いている女なんだと思う。

君はきっと俺と同じ価値観で歩いて行ける人。

笑ったり・・・

怒ったり・・・

泣いたり・・・

喜んだり・・・

同じものを見て、感じて一緒に暮らしたい。

今、確かにそう思う。

「・・・結婚・・・してください」

今でも覚えてる俺の胸の中で震えてた唇。

「結婚って・・・」

「私からプロポーズしたら悪い?」

「プロポーズなら俺からだろう?」

「相手を好きな方がするべきだと思うから」

「それじゃ、やっぱり俺だ」

どんなに頭の中でリピートしても「結婚しよう」って言ってない俺。

浮かれて司らにプロポーズされたと報告して気が付いた。

抱きしめたことでOKになってないか?

女はなによりも雰囲気と言葉を大事にする生き物だ。

これまでの経験上の知識。

葵だとなぜ今までのようにいかないのだろう。

星の落ちそうな夜空も輝く夜景も冷えたシャンパンもなにもなくて、少し塗装のとれたベンチ。

サンドを食べながらプロポーズされたのは俺。

あれから1週間、社内では何もなかったように落ちついているのは・・・

社長室だけ。

葵も俺の秘書へと戻ってきた。

社内を歩くたびに集まる視線。

葵はほとんど顔を上げることができずに歩いてる。

ほとんどが好意をもって見られているのに気がつかずにいる。

モデル並みのスタイル!

頭脳明晰!

お金持ちの御令嬢!

じゃ・・・なかったのが好印象だったらしいと聞いても葵は喜べないだろうけど。

「自分がすべて持ってると相手には何も要求しないものなのね」

漏れ聞こえてきた社員の会話。

正直で嘘がなくって自分の感情に素直で不器用で・・・

そんな葵がほっとけなくて・・・

俺のそばにいて。

一番厄介な要求を押し付けている。

「結婚式はいつですか?」

聞かれるたびに舞い上がっていた俺。

すっかり今日で抜け落ちた。

「おい、大丈夫か?」

珍しく司に気を使われた。

「俺・・・帰るわ」

めまいがしそうな気分で部屋を出た。

「しっかりしろ!」

司!総二郎!類!誰の声かもわからなくなっていた。

葵の待つマンションへと向かう。

二人の生活もプロポーズ以前となんら変わっていない。

結婚して変わるとしたら葵が俺の秘書じゃなくなるということぐらいだろうか。

部屋の鍵を開けて玄関のドアを開ける。

リビングから漏れる明かり。

普段ならその明かりと共に「おかえり」と嬉しそうなはしゃいだ声が響く。

その声が聞こえない。

電気がついているのだから葵がいるのは間違いないはずだ。

心臓がドクンと脈打つたびに不安を絡めてくる。

葵もプロポーズの返事を聞いてないと気が付いたか?

それにしたら反応が鈍い。

1週間我慢してしびれが切れた!

そんなのプロポーズを3回も断られた時の俺の落ち込みを考えたら大したことないぞ!

言えねぇよな。

しーんと静かなリビング。

人の気配もない。

「葵・・・」

名前を呼びながら向かう寝室。

電気もついていなかった。

そして葵の荷物の置いてある客室。

もう1度葵の名前を呼んでドアを開けた。

「ビックリした」

振り向いた葵は気が付かなかったと俺を見て本気で驚いている。

「早かったのね」

「みんなと会ってるって言ってたから遅いかと思ってた」

「あいつらといるよりお前といる方がいい」

葵の向ける柔らかい表情に自分の調子を取り戻してる。

「なにしてた?」

葵の足元に開けられたスーツケース。

中には葵の荷物が押し込められてる。

「家に帰ろうかと思って・・・」

「どういうこと?」

「このままずるずるって訳にもいかないかなって」

葵の明るい声。

この部屋を出ていくとそこまで明るく言えるのか?

俺の胸の中では最悪な気分が渦を巻いている。

「別れるつもりか?」

「どうして、そうなるの?」

「プロポーズの返事してないからか!」

「えっ・・・プロポーズはOKじゃないの?」

目を見開いたまま葵が俺を見つめる。

「結婚するって言葉じゃ伝えてない事に気がついた」

「あの時しっかり抱きしめてくれたからOKだと思ってたんだけど・・・」

目の前の顔は少しほんのりと染まる。

「断られたんならその時にこの部屋を飛び出してるわよ」

そこまで神経は図太くないって・・・

俺からのプロポーズを断った時は何事もなかったように俺の腕の中で寝てたよな?

「今さら、出ていく必要はないだろう?」

「結婚までこのままって、やっぱり気が引けるというか、実家に帰った方がいいかなって」

「いろいろ考えたいし」

いろいろ考えたいってなんだ!

結婚をやめるとか・・・

別れるとか・・・

会社を辞めるとか・・・

・・・。

どうして葵が俺と離れることばかりマイナスに考えるんだッ。

いつもの俺はマイナス思考じゃないはずだ。

「そんな不安そうな顔しないの」

葵の腕がふわっと俺の首筋を包み込む。

「出ていくって言うなッ」

「子供みたいだね」

葵が耳元でクスッと笑う。

やっぱり・・・

いつもの俺じゃない。

自分の心をワガママにさらけ出す。

葵の言う通りだ。

あいつらが見たら笑われそうな俺。

お前だけしか知らない。

お前の前でしか見せない。

感情をコントロール出来ずにもて余す。

愛は深くなるほど難しい。

拍手コメント返礼

りっ**様

UP後すぐの拍手コメントありがとうございます。

つかつくより楽しみと言っていただきうれしいです。

司はいじけてるかもしれませんが(^_^;)

私は素直に喜ばせてもらってます。

いましたね。頼りのないお兄様。

その前に部屋を葵は出ていけるかな~。

ゆめ***様

応援メッセージありがとうございます。

すぐに新しいお話をUPしたくなる皆様の後押しが力になります。

感謝!

b-moka

タイトルを褒めていただいてうれしいです。

いつもタイトルを決めるのに迷うのでこれが一番の難関かもしれません。

文章は浮かんでるのにタイトルが~でもう何でもいいやと付けたタイトルもありますし(^_^;)

ハラハラドキドキの二人の展開を楽しんでやってください。