SP物語 10(ソラノカナタ スピンオフ物語)

今日は大荒れの天気の模様。

こちらのSP君の周りも暗雲が立ち込めております。

この話は『ソラノカナタ 15』の番外編となります。

*

スィートルームに戻った代表を確認して先輩と見合わせてつく溜息。

「先輩・・・」

「どうなってるんですか?」

「俺にわかるわけない」

相葉先輩までも不機嫌な表情を浮かべる。

ただ一つ俺にもわかるのは彼女が十分にショックを受けて傷ついてるってこと。

「代表浮気しちゃったんですかね?」

「あの人はそこまで器用じゃない」

閉じたドアの先の代表を見つめるように先輩はつぶやく。

「部屋に二人っきりでいた時間は浮気するには十分な時間でしたよ」

朝まで何やってるか想像するのは・・・。

邪心は捨てろ!

「あの女は代表の趣味じゃないよ。それに代表は女にもたれ掛る様に連れ込まれたって、一平は言ったよな?」

「ふらふらしてる感じではありました」

代表の脇を抱え込むように歩く女性。

酔っぱらってるようにも見える体勢の代表。

彼女と喧嘩してヤケ酒って俺も経験ある。

そんなところは代表も俺たちと変わらないって思った親近感。

あのままで大丈夫かってはちらっと頭をかすめたが、先輩が大丈夫って言ったんですよねッ。

「普段なら代表は、あったばかりの女を近づかせないくらいの警戒は怠らない」

それじゃ昨日のことは珍しい例外のパターン?

「代表との接点を持つためにたまにあるんだよ。女性を送り込んでくるやらしい手口」

「代表は女で転ぶタイプじゃないだろう。つくし様だけは別としてな」

俺も今回のことで代表の弱点は彼女だとわかりましたよ。

彼女とうまくいってれば代表の機嫌はすこぶるいいってこと!

女性を送り込む原始的な手口があるんなら事前に教えてくれてもいいじゃないですか!

恨めしくそんな気分で先輩に視線を送る俺。

「普通なら女性が近づいた時点で「失せろ」なんだよな」

あの「失せろ」は男でもビビるって先輩は小さく笑う。

「薬でも盛られたってところだろう」

「見抜けなかった点では一平は責められても仕方ないかもな」

だからほっとけって感じの指示を出したのは先輩ですって。

「俺を責めてます?」

割に合わない気持ちのまま口をとがらす。

「まあ、ある程度西田さんの予測通りみたいだから俺たちには太刀打ちできないって思うけどな」

「西田って・・・」

先輩に聞こうとしたところで突然開くドア。

携帯を握りしめたままの冷めた表情。

整った顔立ちはいつもより凄みを増して冷酷さを浮き彫りにしてるように見えた。

このホテル・・・氷のホテルじゃなかったよな?

もしかして彼女は部屋にいなかった・のか・・・?

だよな。

普通浮気現場を見て一緒の部屋に戻る相手が居たらお目にかかりたい。

ゆっくりと俺たちを見渡す鋭い視線。

あきれたように一息に吐く声

「誰も牧野についてないのか」

光線ビームの威力並みに一直線に俺たちの心臓を突き刺す。

このまま気を失って倒れたいって言うのが本音。

「使えないやつらだ」

「探せ」

大音響の号令に飛び散る様に俺たちは代表のもとを離れた。

先輩とも離れてホテルの中を探し回る。

North and south 建物が分かれたホテル。

半端なく広い。

行き先が分からないから探す当てが見つからず行き当たりばったりの捜査。

時間だけが過ぎて、疲れを逃すようにタイを緩めて探し回った。

徹夜気味の身体に加わる心労に今は耐えるしかない。

日本に帰ったら1週間は休むぞ!

どこが楽な仕事なんですか!

うらやましがっていた同僚の顔を浮かべて叫んでいた。

今度担当になったら代わってあげます。

ホテルの中央に設置されてるガラス張りの透明なカプセル型のエレベーター。

その中に見つけた彼女。

エレベーターは地上に向かって下降を続ける。

俺のいる位置からは体力を使って階段を走った方が早い。

数段飛び越して一階ロビーを目指す。

フロント近くに設置されてるソファーに座り込む彼女を見つけた。

乱れた息を整えるように腰を折って両膝につく掌。

フルマラソン並みの体力と精神力を消耗した気分だ。

えっ・・・

彼女に近づく長身の男性。

こんなところを代表に見られたらッ!

失敗の上積み!

代表の機嫌急下降!間違いなしだ。

慌てて彼女のそばに駆け寄った。

「こちらでしたか」

肩越しにかけた声に振り向く彼女。

泣き明かしたような表情は儚げに見えて、切ない痛みを胸に感じる。

「ねぇ、もしかして昨日、私を部屋から出さないようにしたのは道明寺があの部屋に入ったのを知ってたから?」

彼女に張り付いていたのは先輩で・・・

先輩は彼女を部屋から出さなかったってこと?

俺が代表のことを報告した後なら先輩が取った行動は理解できる。

どう返事する?

この返事によって事は動く!

彼女を傷つけない返答はあるのだろうか。

俺にできるか?

戸惑ったまま頭の中は急速に焦ってる。

ほとんどパニック。

知ってました!

見逃しました!

すいません!

言えるかぁーーーーーーー。

働け!俺の脳!

「行きましょ」

何かを決心したような強い意志を伝えるような声。

声をかけられたのは俺じゃなくハンサムな白人の男性。

ルフレット王子と一緒にいた人物。

俺を完全に否定するように離された視線。

俺はまた判断を誤ったらしい。

じろりとにらむ不機嫌な顔が目に浮かぶ。

これで俺の人生は終わった・・・。

「使えないやつだ」今度は一人称で言われっかな。

だが・・・

彼女から離れるわけにはいかない。

俺の存在を無視するように歩く彼女。

その後を遠慮がちに距離をとって、ついていくしかない。

「先輩、早く来てください」

マイクに助けを求めるように叫んでた。

拍手コメント返礼

ゆげ様

一気読みをしたい気持と葛藤しながら読んでもらえるなんて~。

最新UPからさかのぼって読んでもらってるんですね。(笑)

今日から4日間は家を留守にするので予約UPとなります。

新作&短編なのでさかのぼれないですよね。(^_^;)

ホテルのイメージがドバイのバージュ・アル・アラブ、

あとでネットで調べてみます。

一平君はほとんどテンパってる状態ですよね。

SPが冷静さを失って大丈夫なのかと思いながら書いております。

護衛に関係ないところで悩ませてはいけないぞ~。

西田さんなら仕事の内容には関係ありませんって一笑されそうですけど~。

司の傾向と対策にはどうしても切り離せないつくしちゃん」。

これが一番大変だったりして。

モンペって本当に便利ですよ。

ただ一つ問題なのはスカートがしわになるっていうことぐらいかな。

掃除はしやすかった記憶があります。

全国に流行してないのが不思議なくらいです。

だから秘密のケンミンショーって面白いんだろうなぁ。

なおピン様

私は4日遅れて返事を書いてます♪

核心的なお話の部分。

あと少ししたら平和が来るから~。

ひーさまふぁん様

一平君と同じ疑問はきっといつまでも起こるような気が・・・

「だからしてねェて!」by司