If 16

砂浜♪

ご希望が多いようで(^_^;)

夜まであの場所に居て、寝っ転がっていただけってないですよね?

いたらない妄想が~~~~~。

砂まみれにならないものだろうかとそこが心配。

確か服は着てたけど・・・

敷物もなかったしな・・・

どうしよう・・・

別な場所に移動して戻って来た?

それとも海の中?

その方が無理がありそうだし

まだ先だからもう少し考えをまとめておきます。

*

沈む赤い夕陽。

大自然の輝きは人工の派手やかなネオンに形を変える。

砂漠の真ん中に突然現れた艶やかな光りの洪水。

牧野は助手席で身を乗り出す様に立ち上がって、さっきとはまた違った感嘆の声を上げる。

オープンカーにしたのは正解!

おかげで牧野は頭を打たずに済んでる。

スフィンクスエッフェル塔自由の女神まである!」

少しは落ちつけって。

ラスベガスはもともとギャンブルの街として有名だがカジノ以外にもさまざまな施設が立ち並び世界最大級のエンターテイメント都市だ。

牧野が今まで経験したことのない派手やかさがある。

目を奪われるのもしかたない。

俺にはしゃぐなって口を尖らせたわりには牧野も楽しんでる。

呆れるよ。

素直に俺と2人っきりの旅行が楽しいって言えばいいんだ。

艶やかな豪華なホテルをしり目に1泊数十ドルのモーテルに車を寄せる。

俺がこんなところに泊まるなんて・・・

鍵を無造作に渡されて階段を駆け上がる。

薄汚れたドアの開けた先には何にもない部屋。

牧野の社宅を知っていて良かったってこの時ほど思ったことはなかった。

ガランとした部屋に備え付けのクローゼット。

ベッドもねえのか?

中に入って何気なく見上げた壁には取っ手がついていた。

それを無造作に引っ張ると落ちてきたのはダブルベット。

それだけあれば俺には十分。

フッッと緩みそうになる頬を引き締める。

期待するのはしょうがない。

牧野との二人っきりの夜。

誰も邪魔するものはない二人だけの部屋。

そしてベッドも一つ。

後は早く鏑木を見つけだしてティアラの情報を掴めば朝までは俺たちの時間が待ってる。

このままじゃ緩みっぱなしになる。

「行くぞ」

邪心を隠す様にぶっきらぼうに声を上げた。

鏑木に会うことは出来たがティアラの情報を得ることはできずにモーテルに戻った。

帰り道にあきらから香港での裏オークションの情報。

思わぬところからティアラの情報が分かった。

落札予想価格は300億。

その値段に牧野は顔色を無くしてる。

さすがの俺もおふくろに内緒で動かせる額じゃないことは分ってる。

だが、絶対取り戻す。

俺たちの結婚のために!!

「裏オークションどうするの?」

「俺らで落札するしかねェよな」

ほかに手立てがあるわけがない。

「だって・・・300億なんてお金・・・、持ってるの?」

一呼吸間を置いた牧野が期待と驚きを持った瞳で見つめる。

「会社の金を自由にできれば、なんとかできねえこともえね。でも、さすがにそれは、今の状況だとできねぇな」

「だよね。道明寺のおかあさんにもばれちゃうし」

ガクッと肩を落とした牧野が考え込む表情を浮かべる。

お前は考えてどうにかなるような額じゃねえだろう。

3000円のものを買うのに悩んでるようなやつ。

俺を引っ張りまわして結局買わなかったて事が何度あったか覚えてるか!!

1度や2度じゃねえぞっ。

俺が買ってやるって言っても「ヤダッ」の一点張り。

可愛くないって思いながらしょうがねぇっていつも苦笑する。

「なあ」

「うん?」

生返事でつくしが俺に視線を向ける。

考えてもしょうがねェぞ。

何とかなる!

何とかする!

今俺に大事なのはティアラより牧野!お前といる時間だ!

「一緒に寝るか?」

普通に・・・

自然に・・・

誘う!!

そう思っても声が上ずってしまった。

牧野をマジに見れなくて壁の取っ手を引いて収納されてるベッドを下ろす。

照れくささを隠す様にベッドの上に飛び乗って寝転がった。

ひんやりとシーツが熱くなりかけた身体の熱をわずかに奪う。

「えっ?何言ってんのよ、急に!今は話的にそう言う展開じゃないでしょう!」

今までそう言う展開になってもうまくいかなかったのはどう説明する?

関係なかったろうがあ!!!

「結婚すんだぞ!俺たち」

今での我慢を押しつけるように強引に牧野の腕を引っ張ってベットの方に引き寄せた。

バランスを失った牧野はうまくベッドの上に倒れ込んで俺の身体の下に組み敷いてる。

予想以上のうまい流れ。

やわらかな肌の弾力を感じながら熱い電流が体中を駆け巡る。

ドクンと高鳴る心臓。

今まで俺もよく我慢できたものだって本当に思う。

「だからなによ!」

全然甘えてない勝気な瞳。

「だから・・・」

牧野のためらいを封じるように唇を寄せた。

「ガタン」

突然入り口のドアが音をたてて開く。

その音に慌てて反射的に体を起こした。

「鏑木さん・・・」

現れたのは予想外の鏑木だった。

「おまえ、なんだ、こら!ノックもしねぇで!」

その気になっていた俺は思いもよらない展開に動揺してる。

つーか、なんでここでもこんな展開だ。

さっき俺が殴りかけた相手が飄々と登場するなんて考えも出来ないだろうがぁ!

飛行機を降りて初めての二人きりの夜。

ここまで来て邪魔されるって・・・

考えられないだろうがぁぁぁぁぁ。

俺と牧野は呪われてるのか?

一生牧野と一つになれないってこと?

んなことあるわけねェ―――ッ。

牧野はすぐさま俺から手を出せない位置に飛びのいて安全を確保してる。

逃げなくても、もう、手が出せるか!

高まりかけた変化を鎮めるのはそんなに簡単じゃない。

二人から隠す様に背中を向けてシーツで下半身を押さえつける。

なんか情けねェ。

「俺が受け取った5百万ドルだ」

鏑木が俺の腰かけるベッドの上にスーツケースを投げ出した。

ベットの固いスプリングがスーツケースで数度小さくはずむ。

胡散臭い感じでそのスーツケースを開けた。

ぎっしりと詰め込まれたドルの札束。

部屋を出ていく鏑木を追いかけるように牧野は出て行った。

帰ってきた牧野は何か考え込んでうつろで俺のことは見てもいない。

声をかけても気が抜け多様な返事しか返ってこない。

「おい、どうした?まさか・・・、あのクソ野郎に惹かれてぇんじゃねェだろうな」

「えっ?ち、違うよ」

牧野は動揺したように声が上ずってる。

そんなはずはないと思いながらも牧野を責めることをやめられない。

「おまえは本当浮気性だから、この先思いやられるっつんだよ」

刺々しいままの声。

それはきっと俺の期待する状況がうまくいかなかった焦りそのまま。

「この先が思いやられるのはこっちだよ。すぐにカッとなってさ。鏑木さんじゃないけど、あの人にくらべたら、ほんと子供だよ!」

「おい!」

カチッと頭にきたまま牧野に詰め寄る。

このままじゃどうしようもないって分っていてもイラつきは着岸点を見つけられずにいる。

素直にお前が謝ればいいんだよ!

「おいおいおいおい!、やっぱり、あの野郎に心惹かれてんじゃねェか!」

「ちがうって!」

「あいつは俺らの結婚を阻止しようとしてるやつの片棒を担いでるんだぞ。勘違いすんなよ、この浮気女!」

「ちょっと!その浮気キャラ呼ばわり、本当にやめてくれない!」

牧野の抗議の声もムカつく。

ベットに一人寝転がって牧野に背を向ける。

俺から掛布団をはぎ取って牧野はソファーに寝転ぶ。

誰が謝るか!

俺たちは同じ部屋に居ながら寄り添うこともなく別々に眠った。

ちくしょっ!!

悪いのは俺じゃないからな!

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