いくつもの嘘を重ねても 20

司君が登場したところで無事に脱出できるのか!

たぶん・・・(^_^;)

司を拉致する為には相当な被害を覚悟しないと無理でしょうからね。

「邪魔だ」

一歩足を踏み出しただけで数歩後ろに下がるSP。

腰が引けてどうすることもできないって表情を浮かべて錦織を見つめる。

以前から錦織に付いていたSPなら牧野が錦織の妻じゃないことだって把握してるはずだ。

ガクンと膝をついて座り込む錦織。

泣いてるのか、笑ってるのか、わからない声が錦織の口元から漏れる。

「お前、子供がいるんだよな?」

「その子供のとを考える必要あるんじゃないのか?いなくなった幻を追いかけてどうするんだよ」

牧野がいなくなって、必死に牧野の幻を追いかけてた俺がそれを言って苦笑する。

こいつの気持ちは解かるが同情する気はない。

止まっていた空気の流れに伝わる振動。

ザワツキと熱風が玄関先から入りこんでくる。

「司!返事しろ!」

ドサッ!

俺を呼ぶ声と何かを叩きのめす音が廊下に響く。

あいつら・・・とうとうしびれを切らしたか。

「おまえら乱暴だな」

牧野を抱き上げた俺の前に姿を現した類に総二郎にあきら。

「司に乱暴って言われてたまるか」

遠巻きに見つめる男たちの状況に余裕の笑みを総二郎が浮かべた。

「リビングに人が多数集まってるのをメカが感知したら何かあったと思うだろう」

秘密裏のことを進める計画はどうしたとあきらがブツブツと呟く。

牧野は俺の手中に有るんだから文句を言われる筋合いはねェよ。

「牧野?」

腕からガクリと下がった牧野の頭。

不安げに類が覗き込む。

「眠らされてるだけだから心配ない」

牧野の身体を安定させるように腕の位置を変えて抱き直す。

「この状況でいい顔してるね」

「類!見るな」

穏やかな優しい眼差しを牧野に向ける類。

目覚めてたらきっと牧野は頬を真っ赤にして照れる表情を見せるはずで、そう考えるだけでムカつく。

「あっ、類、なに触ってんだよ」

類の人差し指が牧野の頬を軽く突く。

「本当に牧野かなって確かめたくなった」

「触るな」

背中で類を追い払う様に足を進めてリビングを出える。

「相変わらずだな」

「やっと司らしくなったって事だろ」

おい!ここはまだ敵地だぞ。

気を抜くの早過ぎだろうが。

「後は任せろ」

ボキッと指を折る音にまぎれたあきらの声が背中越しに聞こえて来た。

錦織の屋敷を出たところで見覚えのある車がスーと横付けされる。

この用意周到さは流石あいつら。

車に乗ったら敵の車だったってオチはいらねェぞ。

「御無事で」

運転席から降りてきた里井が嬉々として後部席にドアを開ける。

牧野・・・

本当に無事だった。

後部席に乗り込んで、俺の膝の上で寝息をたてる牧野。

どれだけ心配かけたのかわかってんのかよ?

上を向いた鼻先をキュッと掴む

「ウッ・・・」

息苦しさを逃がす様に牧野の口から息が漏れる。

俺の苦労も知らない平和そうな寝顔。

俺を呼ぶ牧野の声がもう一度聞きたい。

「道明寺!!」

少し照れくさそうにほころぶ笑顔を早く見せろ。

下唇を形に添って指先がゆっくりとなぞる。

車の中のこの窮屈さじゃキス一つ出来そうもない。

目を覚ませよ。

寝返りをうった牧野は横を向いたまま相変わらずの無邪気な寝顔。

いま目を覚ませばギャーとか騒ぎ出すに決まってる。

驚いて、焦って、強張るこいつの表情を想像するだけで、くすぐったい笑いが頬を緩めてくるのが分かった。