呆れるほどの無駄なジェラシー(ドライブ編)

第3話目です。

このお話のカテゴリーは、家族編にいれてますが、ここまで書くと、なんだか、つかつく編で良かったような気がしてきてます。

*

「なにしてる・・・」

アホなものを見た!

そんな表情が運転席のドアを開けて頭上から私を見下ろす。

「運転しようと思っただけでしょう!」

助手席から這い出すように運転席に手をついて四つん這いの状態で頭をもたげてる私。

この恰好、窮屈なんだからね。

足をここからどう持って来よう・・・。

私の体勢には無頓着に運転席に乗り込んだ司に助手席に追いやられた。

「普通、初乗りは私でしょう」

それでなくても邸まで司が乗っちゃって来てるのに!!

「俺がいるときは俺が運転してやるよ」

恩着せがましく言うなッ!

ハンドルを握るしなやかな指先。

エンジンのスイッチを押してブルッと唸りだすエンジン音。

高級車では聞こえてこない騒音。

その騒音さえ聞こえなくなる。

アクセルを踏む綺麗な横顔。

無駄のない動きはしなやかで、窮屈さを感じさせない空間。

空気の色が変わった。

なんなんだろう、この高級感。

司の横顔を久しぶりに眺めた気がする。

運転に集中するクッキリとした顔立ち。

さっきまでの言い合いを忘れた様な艶。

違い過ぎる空気感がドクンと心音を上げる。

高級スーツに、左手の腕からチラリと見える高級時計。

軽にしては珍しい革張りの席。

広さを比較しなければ、軽自動車だって思えないよ~

「駿たちを置いてきたままなんだけど」

振り返って遠くなる屋敷の門を眺めて呟いた。

子供達を連れてきた方がにぎやかで落ちつけそうだ。

「まぁ、チャイルドシート3つは載せられないけどね・・・」

「よく見ろ?」

見ろって何を?

まさか子供達を私が気がつかないうちに乗せてきたとか!

子供の騒がしさがまったくない静けさの中で後部席を確かめる。

何かが違う・・・

なに?これ?

後部席が三つに区切られて一つ一つが小さな椅子になっている。

チャイルドシート仕様に改造してある」

シッカリ子供達のこと考えてるんだ。

司も父親だなぁって見直したぞ。

でもこれだと数年で乗れなくなるんじゃないの?

「子供以外は乗せられねェだろう」

満足な笑みで司がちらりと私の顔を窺ってる。

「変なやつ乗せるなよな」

それは・・・

家族以外は乗せるなってことか?

「一体誰を乗せるっていうのよ」

ちょっとした買物とか、子供達を遊びに連れて行くときに使おうとしか思ってないのにッ。

後部席にチャイルドシート二つ。助手席にジュニアシート。

こっちの方が大人は運転席だけしか乗れないと思う。

わざわざ後部シートを作りかえる必要なんてなかったのにッ!

弁護士の仕事と道明寺総帥の妻って役割は多忙を極めて、残りは子どものためにって思ったら車を運転することって滅多にできないんだからね。

「類とか、総二郎とか、あきら、西田に甲斐・・・」

私に付き合いのある男性すべて名指しするなッ

司しか乗せるなって事じゃないの!

あの人たちがこの車の助手席に乗ってくること自体が想像できない。

出来るとすれば甲斐さんだけかなぁ。

西田さんは何時も影のように司に付きそってるし、他はみんな、運転手つき高級車でしょうがぁ----。

ホントにモッ!

雰囲気がクルクル変わり過ぎでしょう。

私をドキンとさせて落ち着きなくさせる艶。

私を束縛する子供っぽい感情。

そのすべてが私を愛してるって教えてくれる。

沈みかける太陽を追いかけるように走る車。

二人っきりで過ごすって久し振り。

会話のない静かな時間も楽しんでる。

「この距離感っていいかもな」

司の腕が私の背中を回って肩に置かれた。

「運転中ッ」

「今、信号赤なんだよ」

呟やく声は見る間に目の前に迫って司の顔が前を覆う。

チュッと音を鳴らして離れた顔が眼の前で楽しそうに笑った。

「いきなり、誰かに見られたら!」

キョロキョロと慌てて辺りを見回す。

「この車に俺が乗ってると誰も思わないだろう。これなら何でも出来そうだな」

なんでもって?なに?

ニンマリと口角を上げる表情は何か良からぬ事を考え付いた表情。

なななっなによ!

肩に回した司の腕が私を引き寄せるように動く。

ちょっ!

やめッ!

近すぎた顔はそのまますべるように胸元に落ちていく。

ここで何するきだ!

完全にパニック。

サイドシートを倒されたような錯覚で焦ってる。

「ククッ・・・ッ」

胸元に響く笑い声。

「期待を裏切って悪いがここじゃさすがに無理だろう、信号も変わったみたいだしな」

後ろからププッと鳴らせれるクラクション。

普段なら「るせっぞ!」ムカついた顔で司が叫そうな場面。

早く進めと催促される音にも司が笑い声を上げる。

ゆっくりと進みだす車。

ハンドルを握ったままこらえきれない様に司がまた笑い声を上げる。

今度止まったら運転を代わるからね!!!

運転席から引きずり降ろしてやる!

これで終わり?

終わってないような・・・気が・・・(^_^;)

拍手コメント返礼

Gods&Death 様

初めて彼氏の運転する車の助手席に乗るって緊張したもんです。

なに話していいかわからなくてドキドキしてた経験。

おい!こら!

何年目の結婚生活だ!

という突っ込みはつかつくじゃなしで~

何年経ってもときめきがなくならない夫婦って理想ですよね。

運転する男の人の好感度は1.5倍UPだそうですよ♪

かよぴよ様

軽をかったばかり、惜しかったですね。

ときめきる男の人の運転する車の助手席♪

ドキドキ感は半端じゃないですよね。

あ~遠い昔だ~。

ツックー様

助手席で手でも握られて~♪

横顔を見つめ過ぎて、手を握られたことも気がつきない気がします。(^_^;)