ウエディングベルは二度鳴らす 21
おはようございます。
やっとこの時間に更新ができます。
長かったな・・・[emoji:v-406]
「便利なのも迷惑だよな」
ぽつりとつぶやく公平の視線がゆっくりと私に向けて動いて微笑む。
私に移る前の公平が見ていたものは会場に設置されてた大画面。
主役の二人からいつの間にか参加者のそれぞれの写真が映し出されてた切り替わっていく。
「あっ・・・」
声にならない声が自然と私の口から洩れた。
公平の手に握られたホテルの部屋のカードキー。
それをはにかんだ表情の私がほんのりと頬を染めて受け取ってる。
実際、私が受け取ってるのが、カードキーだと他人が気が付くには、手の部分を拡大しなきゃわからないんだろうけど、カードキーを公平に拾われた時点で私の身体中の血液が逆流する感覚に襲われてしまっていた。
道明寺にカードキーを見せるより、恥ずかしい。
恥かしさのあまり染まった頬。
写真はそんな説明まで映ってないからある意味困る。
「さっき撮られたやつ、もう見られる。それもみんなに見られて困るよな」
道明寺に見られたら大変だぞ。
公平が言葉を発しなくてもそんな表情が読み取れた。
「あはは、わたしより公平が迷惑だよね」
頬だけじゃなく声までひきつってる気がした。
「そうでもないけど、
つくしと二人で映った写真なんてなかったからなぁ。記念にはなるよ」
気さくな微笑みは迷惑だとは感じてないすがすがしい表情を私に見せる。
「何の記念?」
不安のとれた私も軽く冗談ぽく言葉を返した。
「つくしと友達だって証になるだろう?」
私の気持ちを解きほぐすのは本当に公平はうまいって思う。
公平といまだに気さくに付き合えるのは波長がなんとなく公平と合うからだって思う。
「それとも・・・失恋記念とか?」
ゆっくりと動く公平の唇がそのまま私の目の前まで降りてきて止まった。
え?
ドキッとした私の前で、「冗談」と公平は軽く笑った。
「籍を入れてやっと道明寺になったんだよな?
つくしって呼び捨てにもこれからはできないかもな。
そろそろ旦那のこと道明寺って呼ぶのやめたほうがいいんじゃないか。道明寺つくしさん?」
念を押すように公平がクイッと顎を突き出してきた。
それは・・・わたしもわかってる。
道明寺に苗字が変わった私がいつまでも道明寺ってあいつのことを呼んでるのはおかしいって・・・
なかなか切り替えるって難しいんだよね。
道明寺から司って名前で呼べるようになる瞬間っていつなんだろう。
こんなことで悩んでるって公平が知ったら大笑いされそうだよ。
そんな時背中に感じる視線。
公平の視線も私を通り過ぎて後ろに向いてるのがわかる。
公平も今までとは明らかに違う引き締まった表情を作り出してる。
一瞬ざわついた声が会場の中で響く。
にぎやかなお祝いの声とは違う雰囲気。
熱を帯びた視線に何かに魅了されて恍惚としたいくつもの表情が一点だけに集中している。
今日主役の二人は私の目の前。
すべての人々の視線は明らかに会場の入り口に向けられてる。
みんなの視線の動きで私に何かが近づいてくることがわかる。
芝生を踏む皮靴と草との摩擦音。
ばさっっと刀に切り開くように摩擦音が大きく聞こえるのはたぶんわたしだけに聞こえる幻聴。
鋭さを増す視線は背中に突き刺さる。
相手との距離が縮まる感覚に心臓がドクンと飛び跳ねた。
道明寺・・・かな・・・?
背中に感じる気配は不愉快さそのままを遠慮なく押し当てる。
やっぱり・・・
道明寺だよね・・・・。
この不機嫌な怒のオーラーを発することのできるのは道明寺だけだと私は思っている。
「てめっ、何やってんだ」
ビクン。
一気に背筋が震えて、つま先から頭のてっぺんまで身体の中をピンと一直線に緊張が走り抜けた。
振り向けないかも・・・。