門前の虎 後門の狼 3

いよいよこのお話もいちゃこらから動き出すはず。

司も一緒で優紀ちゃん悩み事相談できるのかしら?

それが心配な気がします。

腰に回された腕から必死に抜け出そうと抗う。

ツネるとか噛みつくとかすればいいと思うのにそれができない。

密着する身体から伝わる鼓動。

ドクンと早く大きく胸を打つのは私だけじゃなく道明寺もだってわかるから無下にできない甘酸っぱい気持ち。

あんなところでキスするんじゃなければ素直に応えられるのにッ。

どう考えてもあそこでのキスは理解不能

したかったからした。

俺様がなにをしようと勝手だろ。

キスの意味を聞いて返ってくる答えはこんな俺様的な横柄な声のような気がする。

「キスの意味はあとで教えてやるよ」

悪戯な微笑みと甘い輝きを秘めた瞳が私を見下ろす。

「別に、いいッ!」

道明寺の声と甘く誘い込む仕草に動揺を隠せない。

どこでも色気を巻きつらすのはやめてほしいって本気で思う。

キスだけで動揺してしまうのは二人で過ごす甘い時間がこれ以上にないくらいに深く、密に、過ごして待ったから。

知らない時より知ってしまったあとのほうが濃くて甘い艶。

優紀に会う前に普段の自分に戻れるか心配になってきた。

「キスする羽目になったのはお前の責任」

優紀と会う約束の場所が近づいてきたところで道明寺がいきなりそうつぶやく。

落ち着いたと思ったところでぶり返す道明寺になんかムカつく。

勝手にキスしておいて、何でもなかったような顔して「いくぞ」と無理やりついてきた道明寺。

何も言い返せないままにあたふたしてる私の感情はさっきまでいたテーブルの上に一気に引き戻された。

「キスしなきゃいけないようなことを何かやったかな?」

道明寺の言いがかりにしか思えない。

大体思いこみの激しいタイプ。

そのうえで自分に都合のいいように解釈するところあるから困る。

「自分が言った言葉を思いだしてみろよ」

「キスしてなんて言った覚えないけど」

「私の都合でサヨナラとかなんとか言ったよな」

それは優紀と会うために道明寺との時間より優紀を優先することの謝罪を組み入れた言葉で、キスにつながる意味はない。

「あの場ではサヨナラの言葉だけが独り歩きして、あの場所にいた連中は俺とお前が別れるって誤解してたんだぞ。

一瞬でもそう思われるのは俺のプライドが許さねぇんだよ。

噂を払しょくするのはキスが一番だろうがぁ」

あっ・・・

だからキス・・・。

でも抱きしめるとかでも十分だって思うんだけど。

ようやく納得できた私と、きりっとした濃い眉の片方ををわずかに吊り上げて、どうだとふてぶてしさをそのままに私を見下ろしてるあいつ。

それならキスされても仕方ない。

なんて素直に納得できるわけないじゃない!

「今度勝手にキスしたら、許さないから」

「どう許さないって?」

今にも唇が触れそうな距離で道明寺の顔が目の前に迫る。

思わず視線は唇に釘づけ。

言ったその場から見る角度によったらキスしてるように見える。

もう!

わざとでしょう!

私だけ動揺して道明寺は涼しく笑う。

「俺が許しを請う必要はねえから。

特にお前に関してはやりたいようにやらせてもらう」

そのまま私の前を素通りして道明寺が店の中に入っていた。

ちょっ!

置いてくな!

道明寺を追いかけて店の中に入ってすぐに優紀を見つけた。

テーブルの前で固まってる。

私より先に道明寺を見つけてるはずの優紀。

店の中の空気は一瞬で道明寺に飲み込まれてる。

固まってるのは雪だけじゃないし・・・。

この注目度の中じゃ相談事は無理。

「ごめん!変なのが付いてきちゃって」

道明寺を押しのけて優紀の前の椅子に座った。

誰が変なのだ!

ムッとした道明寺はこの際無視。

二人掛けの席に道明寺の入り込むスペースはない。

それでも隣の席に背を向けたまま道明寺が場所を確保した。

腕組みをしたまま目をつぶる横顔。

伏せた睫毛が縁取る目元さへ、くっきりと艶やか。

座ってるだけでも目立つオーラは半端なく人目を惹きつける。

優紀ごめん!

相談なんてできないよね。

心の中で必死で手を合わせて謝ってた。

拍手コメント返礼

りり 様

優紀ちゃん、司を見た時点で相談事忘れたりして・・・(;^ω^)