Unfair 9
週一の更新の予定を大幅に遅れてしまいました。
はぴまりファンの方には申し訳ないです。(;^ω^)
焦る北斗が見たいんですが千和の前じゃなかなか見せてくれません。
でも、ドSな北斗も好きなんですよね。
そんな北斗にドキドキしてる千和も捨てがたいんですよね。
このお話、どう進む?
「仕事以外のこと考えないでください」
手の止まっていた俺の横で嬉しそうにつぶやく相馬。
気を抜くとあいつのことを考えてしまってる。
結婚してもうすぐ二年。
俺は有能な経営者日本有数の間宮グループの一つ、間宮商事の社長。
俺が社長になってから会社の業績も抜群に上がった。
会社の社員だった千和とは現代のシンデレラストーリー、玉の輿の恋愛ストーリーで結婚したわけじゃない。
親の借金を返すために昼は間宮商事のOL、夜はキャバクラで働いてた千和。
会長があんなことを言いださなきゃ俺と千和の接点はなかったはずだ。
何でも千和の祖母が俺の祖父つまりは間宮の会長の恩人だとかでそこから降って沸いたような結婚話。
その話を飲まないと社長の座が危ない俺と借金で家を手放さなきゃならないあいつを救うという利害が一致した契約結婚。
そんな始まりからでも恋愛はできるんだなって実感。
一年かけてやっとあいつを抱いた。
実質2年の結婚生活でも俺たちはまだ本当の夫婦になって1年たってない。
今朝、俺を起こしに来た千和。
あのままベッドの中に引きずりこんで抱きたいって思った本音。
抱いても抱いても収まらな欲望は自分の年齢をティーンエイジャーに戻ったんじゃないかと勘違いしそうだ。
今まで女性じゃなかったこと。
仕事を放りだして帰りたいと思ってることをあいつに知られたくないし思いたくもない。
俺はたぶんおかしくなってる。
あいつをすぐに抱きたくなるから帰りたくないって感情は自分でも矛盾してるって思う。
こんな相談先輩にもできるはずもなく酒を飲んで過ごした昨日。
昨日と同様今日もバーで時間をつぶしてる。
帰ればは「お帰り」のはしゃぐ声のあいつが俺に飛びついてくる勢いで出迎えてまとわりつくのを想像して楽しんでる。
早く帰りたい気持ちをごまかすようにグラスを傾けた。
俺の帰りを待つあいつを早くお前に会いたいって思う俺よりそわそわさせたい。
適度な残業を望む俺に残業最小限で抑えて残業を減らしてくれる相馬の優秀さ。
千和が会社を辞めて別な会社に勤めるようになったからって気を使う必要はない。
「早く帰りたいですよね」
俺のガキの頃から知ってる相馬に言われるとなんも言えなくなる。
空になったグラス。
二杯目を注文して飲んで帰る頃がちょうどいいタイミング。
注文したバーボンの琥珀色の液体がグラスになみなみと注がれるのを何気なく見つめながらそんなことを思っていた。
バーボンが俺の目の前に差し出されたとき後ろでカランとドアベルが鳴った。
早めの時間のバーの客はまばら。
何気なく振り向いた俺は入ってきた人物を見て固まった。
それは相手も同じでアイラインに縁取られて瞳が大きく見開かれ俺を見つめる。
すらりとした長身、気の強さを感じる派手な美貌。
できる女。
設楽美咲は俺と付き合っていたころも別れた後も美しいと思う。
俺のやりたいことを理解してなんの説明もいらなくて付き合うのが楽だった大人の女性。
千和みたいにいちいち感情をあらわにして俺につかかってくる面倒くさいタイプとは全く違う。
俺の理想は美咲みたいなタイプだったはずなのに今はなんの未練も感じない。
楽な恋愛よりめんどくさい恋愛を楽しめるようになったのは間違いなく千和の影響。
あいつ以外の女で感情を乱されるのはごめんだ。
昔の恋人に会っても千和を思う自分に苦笑するしかない。
コツコツとヒールの音を響かせて俺の隣に美咲は腰を下ろす。
「お待ち合わせでしたか?」
常連客に営業スマイルを浮かべたバーテンダー。
この店は美咲と付き合っていたころによく待ち合わせに使っていた店。
偶然に会うことがあってもおかしくない。
そんな店で酒を飲んでる俺の油断。
今更知らないふりをするのは大人げないと思ったのは俺も美咲も同じはずだ。
「久しぶり」
彼女は俺に視線を向けることなく低い声でそうつぶやいた。
「いつもの」
慣れた調子で飲み物を注文する美咲。
「この店で会えるとは思わなかったわ」
落ち着いた声の響きの中に俺をなじる感情が見える。
結婚して遠のいていた俺とは違って美咲はこの店に通っていたらしい。
「悪かった、もう帰るから」
珍しく素直に俺から謝ったのは昨日スーツにつけた香水の香りに敏感に反応した千和を思いだしたからに他ならない。
昨日は知らない女だったが今日、俺の隣にいるのは設楽美咲。
彼女が昔の俺の恋人だってことは千和も知ってるから始末が悪い。
「こんなところで一人で飲んでるなんて、可愛い奥様とうまくいってないのかしら?
もう、私には関係ないけど」
皮肉めいた口調にカチンと来てる。
「これ以上にないくらいうまくってるよ」
俺があいつにのめり込んでるのが気に食わないだけ。
「偶然じゃなく、約束してあなたとここで会った」
グラスの中身を一口喉の奥に流し込んだ後、美咲は身体ごと俺に向けて長い脚を大胆に組んだ。
スカートの裾が膝の少し上で止まる。
あの白い肌に触れた記憶がかすかに脳裏によみがえった。
「そう、奥さんに言ったらどうなるのかしら?」
彼女らしくない絡む言い方。
美咲が本気で千和に言うつもりじゃないことは薄々わかってる。
「そんな、こと言う女じゃないだろう」
「あら、わからないわよ。
私はあなたが嫌いになって別れたんじゃないんだから」
そう、別れを継げたのは結婚することになったと俺から。
決してきれいな別れ方じゃなかったがもめることなく俺たちは別れたはずだ。
「別れて、会わずにいたらそれで終わり・・・
そんな簡単なものじゃないみたい」
美咲はまだ俺のことを思ってるのか・・・
言葉は悪いが俺は自分の地位のために結婚を選んで美咲と別れた。
美咲は恋愛に夢中になるよりは楽しむことができる女じゃないのか。
驚きを隠せない俺にフッと美咲は笑みを零した。
拍手コメント返礼
akko様
設楽さんも確かに面倒かも。
プライド高そうな彼女の表情が緩むところも見たいかもなぁ。
ひーまー 様
北斗の昔の彼女の設楽さんは登場させるにはもってこいのキャラなんですよね。
千和も知ってるから爆弾も落としやすい。
北斗がこれをどう乗り切るのか楽しみなんですけどね。