愛 彷徨 人 (前編)

テーマは愛人

我が家を含め9人の魅惑の関係がここに!?

場所‥各HPの公開となります

日時‥7/30〜8/20までの毎週土曜日0:00公開 

私のブログでは書かない設定。

今回はテレビドラマとは一線を引く設定ですが、つかつくの設定は微動だしませんでした。

参加者リンク *アルファベット順

アカシアさま(andante)

asuhanaさま(明日咲く花)

Gipskräuterさま(gypsophila room)

向日葵さま(je t´aime a la folie)

こ茶子さま(君を愛するために)

蜜柑一房さま(天使の羽根)

miumiuさま(おとなのおとぎばなし)

オダワラアキさま(dólcevitaオダワラアキの二次小説置き場)

♬7/30〜8/20までの毎週土曜日0:00公開

青い空がどこまでも広がっていた。

どこまでも広がる草原に立つつくしの足もとを吹き抜けるそよ風。

若草を揺らすその風はつくしに進めと急かせるように思えた。

夢・・・・っ。

しっとりと身体に寝汗を感じながらつくしはベッドの上で身体を起こした。

ベッド一つと小さなテーブルを置いただけの一部屋。

それでもそこはつくしにとっては十分すぎる自分の城だ。

あいつの部屋とは違いすぎる。

記憶がよみがえるたびに心の奥がチクリと痛む。

あの腕の中でくすぐったい感情と甘く酔いしれるような感覚に身をゆだねた記憶。

貫かれた痛みも繋がった喜びのほうが強くて耐えることができた。

そこから始まるはずの道明寺との時間は・・・

大切な記憶は・・・

一瞬のうちにあいつの中から掻き消えていた。

「すげー幸せ」

そう言ってシャワーを浴びるとベッドから抜けだしたあいつ。

一緒に浴びようとの誘いに乗れるほどつくしは慣れてなくて気恥ずかしさにベッドの中にもぐりこんだ。

司は無理強いすることなく機嫌の良さがわかる足取りでベッドルームを出ていった。

それが・・・失敗だったと幾度となくつくしの記憶はあの時間に戻ってしまう。

戻るはずのないあの時を何度となく想像しては泣きたくなる。

なかなか帰ってこない司を心配してベッドルームを抜けだしたつくしは見つけたのは階段下の床に倒れこんだ司の姿。

駆け寄ったつくしの声に直ぐに意識を取り戻したものの階段から落ちたんだということだけはつくしにも察しが付いた。

「俺・・・」

うつろに焦点の定まらない視線。

動いた司の右手は痛みでもあるのか、こめかみを押さえて苦痛に顔をゆがめる。

「しゃべらないで、頭を打ってるかもしれないから」

ぷるッ~

床に転がったままの司の携帯から聞こえた呼びだし音。

表示されたあきらの文字につくしは直ぐ様飛びついた。

「道明寺が階段から落ちて頭を打ったみたいなの」

「牧野か?」

病院までの手配をしてくれたのは美作あきら。

そのまま司が目覚めるまでつくしのもとに一緒にいてくれた。

「お前らが一緒って珍しいな」

目覚めた司はすこぶる機嫌のいい笑顔を見せる。

「もう、心配したんだから」

「心配?なんの?」

「覚えてないの?」

「お前が昨晩書類を届けに来たのは覚えてる。

まだ見てねぇぞ」

病院で目覚めた司は昨夜つくしと一緒に過ごしたことなど記憶の中からすっかり抜け落ちてしまっていた。

もう!

覚えてないってあり!

あの日から変わるはずだった二人の関係は全くさきの見えない状態に落ちいってしまってる。

「政略結婚なんてしない。

俺はお前と一緒にいたい」

そう言った司の胸に覚悟を決めて飛び込んだはずのつくし。

昨日のニュースに流れたのは道明寺の次期総帥と大手企業の令嬢との婚約のニュース。

写真の中の司が不愛想な表情でちっとも嬉しそうじゃないことが唯一の救いのように自分を慰めて眠りについた。

訪問のチャイムが鳴ったのはつくしがベッドから抜けだして1時間後の午前10時過ぎ。

「牧野、大丈夫か?」

昨日のニュースを心配して駆けつけたのは美作あきら。

道明寺との関係を相談したというよりはつくしの変化に気が付いてなにかと今日まで相談に乗ってくれている。

「すぐに、思いだすよ」

そんな言葉が慰めにしかならなかったことをあきらは実感して、つくしを心配して駆けつけてきたのだ。

「大丈夫って言ったら強がりに聞こえるよね」

前に座るあきらに必死で笑顔をつくしは見せる。

「あのバカ!何を考えてるんだ。

こうなったら俺が牧野とのことを思いだすまでぶん殴ってやる」

ガシッとあきらの右の拳が左の手のひらを打って音を響かせた。

「美作さんが道明寺を殴るの?」

想像できないと驚くつくしの表情は沈んでる心を隠せていない。

「司のそばにいるの辛くないか?」

大学を卒業して直ぐにつくしは司の秘書として働きだしてる。

司に堂々と意見を言えるつくしの存在は社内でも一目置かれていた。

確かに・・・

結婚した司をそばで見てるなんて今の自分できるとは思えないとわかる。

「なぁ、俺のとこ来るか?

牧野が自分のそばを離れたら司も目が覚めるんじゃねぇの?」

あきらの申し出につくしの心も揺らぐ。

「考えてみる」

そうつぶやくだけでも身を刻むような痛みをつくしは感じていた。

辞表・・・

あいつから?

なんで?

考えなくてもその理由は司にもわかる。

苛立ちを隠せないままに握りしめた辞表はクシャッと司の手の中で音を立てる。

こんなの俺が受け取るわけねぇだろう。

あんな噂を信じるのか?

ばばぁが勝手に流した噂。

道明寺司大企業令嬢と婚約の文字が躍る週刊誌を司はデスクの上に広げられたままだ。

それでもその記事のおかげで会社の株価は最近にない高値をつけている。

今この時点ででっち上げだと発言できる状態じゃないことがまた司の気をいら立たせる。

ばばぁの策略にノせられんなよ。

分かれよ。

こんなの今までも何度もあったはずだよな。

そのたびに「お前しかいない」そう告げてたつもりだ。

だから今回も何も言わなくてもあいつならわかるって余裕が司にもあった。

それなのにッ

今回はどうしたわけかつくしは辞表を置いて司の前から姿を消した。

アパートも引きはらった念の入れよう。

つくしを責めながらも何も言い訳しなかった自分にいらだつように司は壁を強く拳で叩いた。

辞表を押しつけられた西田も西田だ。

簡単に受け取りやがって!

おまえなら牧野を説得するものたやすいんじゃねぇのか。

そんな矛盾な思いを今朝から西田には必要以上に当たり散らしてる司だ。

「牧野を見つけ出せ!

そして俺のもとに連れて来い」

なんども鳴らし続けたつくしの携帯はいつの間にか呼びだし音もならなくなった。

「婚約の話を白紙にしなければ意味がないのではないですか?」

「もともと、嘘だろうが!」

「会長は噂で終わらせるつもりはないようですよ」

「お前も一枚噛んでるんじゃねぇよな?」

「まさか、私は代表の秘書です」

司の罵声をさらりと返す西田。

まっすぐに司を見つめる西田の目には迷いはない。

ここ数日の動揺が司をいらつかせ落ち着きをなくしてることに一番心を痛めてるのは西田なのかもしれない。

「時期が来たらうまく修正できるように取りはからいます。

今は辛抱です」

あと数か月もしたら婚約が噂でお割っても会社に影響がないと西田は読んでいる。

司もそれは理解できてるはずだ。

「俺が、我慢できない性格を知ってるよな?」

「時には我慢できなければ手にいれられるものも手に入れられなくなるものがあります」

司が苦手とする辛抱という問題を押しつける西田は、わざと自分に仕返しをしているようにも思える。

忌々しい表情で西田を眺める司に会釈を残し西田は執務室をあとにした。

「美作さん、ごめん、やっぱり頼れるのは美作さんしか思いつかなかった」

「類じゃなくて?」

スーツケース一つでつくしはあきらのもとに身を寄せた。

洋風の寓話の中から出てきたお城のようなつくりは今も変わっていない。

あきらの双子の妹たちも大学生となり今は都内のマンションに居住を移している。

冗談めかしに類の名前をあげたあきらがつくしの心を軽くする。

「花沢類だとすぐに道明寺がわかっちゃうもの」

「俺だと、意外に気が付かれないと思ってる?

牧野がいなくなったら、なりふり構わずあいつは見つけ出すと思うけど?」

突然来訪したつくしを嫌な顔一つせずやさしい微笑みで迎え入れたあきらは屋敷の二階の一室につくしを通してくれた。

「そうかな?きっともう忘れてるよ」

今頃自分の辞表を見て道明寺は傷ついてるのだろうか?

それはないだろう?

そんな対峙する気持ちがつくしの胸の中で渦巻いて、そしてまた自分を苦しめてることに気が付いていない。

「牧野は好きなだけここにいていいから。

司には牧野が言っていいッていうまで内緒にしておく」

あきらはつくしの前にコーヒーを差し出しながらやさしくつくしの肩をポンと叩いた。

「ありがと・・・っ」

立ち上るコーヒの香りに刺激されたようにつくしが口元を手のひらで覆う。

吐き気をこらえるような表情をつくしがみせる。

「牧野・・・

まさか・・・」

吐き気をこらえてうつむくつくしも自分があきらにじっと見られてる視線を感じてる。

「妊娠してるのか?」

顔を上げたつくしが見たのは心配そうなあきらの表情。

司の子供だよな?

そんな確信をつく瞳であきらがつくしを覗き込む。

つくしもこの場を取り繕ってあやふやにするつもりは初めから考えていなかった。

違うといってもあきらが信じるはずはないのだから。

「産むつもりか?」

コクリとつくしが首を振る。

「一人で?」

そしてまたつくしはコクリと首を振る。

「司に内緒でか?」

大きく首を振ったつくしが思いつめた表情であきらを見つめた。

それは無理だろう。

司が知ったらほっておくはずがない。

すぐにでも結婚すしようとあいつなら動くはずだ。

そのほうが司にとってもつくしにとっても最善だとあきらは思う。

もし・・・

司の母親が知ったら・・・

最悪な状況につくしを追いこむ可能性も否定できない。

黙って子供が生まれるまでここで面倒を見る選択もあるのかもしれない。

「美作さん・・・

お願い」

いつもなら強気なつくしが見せる哀願。

そこにはあきらの好きだという隠してきた感情を無邪気に刺激するつくしがいる。

「俺、牧野の頼みには弱いこと知ってる?」

抱きしめたい衝動を押さえながらあきらはそうつぶやいた。

「随分目立ってきたな」

「あと2か月もすれば生まれてくるんだもんね」

出産の準備の品もそろえられた子供部屋が一つ出来上がった美作邸

何も噂が漏れることもなく穏やかに過ぎる日々。

屋敷につかえる使用人つくしとあきらの関係を憶測するような言葉は何もつくしには入ってこない。

かいがいしくつくしによりそうあきらの株はめっぽう上がっている気もする。

「牧野が司の子供を産んだッてばれたらそれこそ大変なことになるだろうな」

「大丈夫じゃないかな。

道明寺は私とそんな関係になったことは覚えてないから」

あの夜の出来事は階段を転げ落ちた時に一緒に司の記憶から抜け落ちてる。

病院で気が付いた司にはあの夜に見せた甘くて熱い想いを秘めて見つめた瞳の輝きを見つけ出すことはできなかった。

その時のショックはつくしに取って言葉をなくすほどの大きなものだった。

「記憶が戻る可能性は0じゃないだろう。

そうじゃなくてもあいつが牧野を愛してるはずだから」

「記憶が戻らなったらこの結果を受け入れられるって思う?」

せりだしたお腹を撫でながらつくしがつぶやく。

これまでも何度となく二人で話した会話。

「牧野・・・

生まれた子供を俺の子供として認知しないか?

司はそんな小さな男じゃないはずだ。

そう言いたいのにあきらから自分でも驚くような言葉が先に出た。

いっそ結婚って手もある。

そうすれば最悪、司のお袋さんに子供を取られる心配はなくなる。

あきらの本音はつくしとお腹の子供を見守るうちに

このままこの生活が続けばいいと思う感情が生まれていることに否定できなくなってしまっている。

司のそばに本気でつくしを帰すつもりなのかと問われたらイエスと言える自信がないのも事実だ。

あきらめていたつもりの感情はいつしか表に出かかってる。

出すな。

感情のせめぎ合いは否応なくあきらを悩ませている。

「本気で言ってるの?」

さっきまで笑っていたつくしの表情が一気に真剣さを漂わせた。

「それはダメだよ。

道明寺の子供だってことは私が知ってるもの」

「考える余地はあるんじゃないの?」

「そうかもしれないけど・・・これ以上の嘘はつきたくないから」

普通の女んなら喜んで飛びつくとあきらはおもう。

道明寺には負けるが美作家も日本有数の資産家だ。

申し訳なさそうな感情を見せるつくしがこのままだと自分のそばから離れていくようなそんな感情がこれ以上あきらを強引にさせずにいた。

「見つかったのか?」

「はい、美作様のところで秘書として働き始めてるようです」

西田の反応は相変わらず事務的で司の気持ちを逆なでするように響く。

「なんで、あいつが牧野を!」

「そこまでの経緯は私もわかりませんが、元気そうでよかったじゃないですか」

「よくねぇだろう」

憤慨して、椅子にのけぞる様に座った司の前に西田が報告書を開く。

写真に撮られたつくしは一年前よりほっそりと色白くなった印象を受ける。

穏やかな微笑みを浮かべたつくしは輝くような美しさを身につけてる気がした。

自分の知らないつくしを見せられた気がして落ち着かない感情が司を支配する。

「出かける」

いたたまれないくなったように司は会社を出てあきらの会社へと向かった。

司の突然の来訪に美作の社長室は一気にあわただしさを増す。

取りつぐのも待たずに現れた司を前にあきらが驚きを見せたのはほんの数秒だった。

「そろそろだとは思ったが、意外と時間かかったな」

これくらいの嫌みを言っても自分は許されると今のあきらは思っている。

「お前、まだ婚約したままだよな?

どうする気だ?」

司が自分を訪ねてきた理由は一つしかない。

つくしのことを聞きたいはずの司に対して、あきらは自分からつくしの名前も出すつもりはなかった。

「あいつは?」

「ここにはいない」

勝手に探せ。

そんな司を突き放すようなあきらの態度に司は憤慨する態度を表情に出している。

相変わらずだな・・・

そんな思いのままにあきらはため息をこぼす。

バタンと大きく立てて閉まるドア。

出ていった司の足音が大きく冷たく響いて消えていった。

あきらは止めることもなく司を見送ったままそのドアを見つめる。

あいつどうするかな・・・

そんな意地悪な感情も胸の奥に燻っていた。

拍手コメント返礼

スリーシスターズ様

公開直ぐ様コメントありがうございます。

00:18でしたよ。

UP後直ぐ読んでのコメだったと推測。

ありがたいです。

後半もどろどろはしてませんので安心してお読みいただきたいと思います。

15日公開予定としてます。

みかん 様

いや~私より参加者皆様すごいですよ~

私はいたって変わりない設定でいかせていただきました。

今回の司はつくしに対してどんな言い訳も通じないですよね。

最後はやりこめておわらせたいのですがそこまでは書けなかったの~

それが心残りです。