戯れの恋は愛に揺れる  21

いよいよ夏企画イベント愛人13日夜中にオープンいたします。

まずは気になる題名ですが一足先に公表させていただきます。

『愛彷徨人』

設定はもちろんいつものドラマの続きじゃありません。

よくあるつくしが司の秘書の設定。

そしてまたまた司君の記憶を少しだけ失わせていただきました。

さてどんな愛人物語になるのか!

公開までもうしばらくお待ちください。

愛彷徨人 2016年 8月13日0:00公開

話はこのお話に戻しまして。

ふにゃろば様のコメント使わないと話が進まなくなっちゃいましたよ~。

拝借してお話を進めさせていただきます。

長いッ

幾度も身体の向きを変えては歩く渡り廊下。

山奥のさびれた家がどれほど恋しいかわからない。

板一枚で仕切った部屋はつくしの息使いまで聞こえるような身近さ。

つくしのいるはずの部屋まではまだ少しかかりそうだ。

それでも婚礼を澄ませれば自分の寝所の隣に東宮妃としての部屋を賜る予定のはずだ。

その時まであといくばくかの眠れない夜を過ごすのか考えてはため息をこぼしていた皇子なのである。

あいつらのいうよ通り、今更我慢する必要はなかったんだ。

東宮妃となることを受け入れたのだから。

愛して、愛して、愛し抜いて幸せにする自信はある。

その思いは足を一歩進めるごとに自分の心を強く占めてくると司は感じていた。

「ねぇ、つくし姫様の湯上りのお召し物はこれでいいかしら」

ふすまの向こう側から聞こえてきた女官の声。

つくしの名前が聞こえただけで敏感に反応してしまう自分に司は苦笑する。

女官が名前をつぶやいただけだ。

あいつがそばにいるわけじゃない。

それでもあいつの居間に近づいてきてるの確か。

自然と司の足も速くなるった。

会いたい気持ちは抑えようとしても抑えきれるものではないということを自ら表現してしまってる。

「いいんじゃない」

「ん~、でもちょっと地味かも」

「だから、いいんでしょ」

地味がいい?

あいつなら何でも可愛く着こなす気がする。

自ら司が選んで用意させた着衣はどれも東宮妃としては恥ずかしくないものばかりのはずだ。

それが地味だと?

女官の言葉に司はつくしのもとに急ぎたい感情を押し殺しながら足を止めて聞きいる。

「何、それ」

「…私、聞いたのよ」

「何を?」

「あの姫の母親って、大した家柄じゃないって」

「ふ~ん、でもそれくらいよくあることでしょ」

「それだけじゃないのよ!  本当はあの人、地方の豪族に嫁ぐ筈だったんですって」

「どうして?」

「何でも正妻に疎まれててね。 厄介払いのつもりだったみたい」

地方の豪族はとっくにもっと田舎に飛ばした。

女官の情報網は侮ることができないほど正確だと司も驚きを隠せない。

「それで?」

「彼女、それを嫌がってね。家出したんですって」

「まぁ、それは当然でしょ」

「でも、その家出先って山の中だったのよ」

それが縁で俺たちは出会ったような。

あいつが野獣に襲われかけたところを俺が守った。

あいつに何かあったらと心が震えた。

これまでに感じたこともない恐怖。

抱きしめたあいつの温もりを感じてこれ以上の喜びはないと思えた。

「………? ねぇ、結局あなた何が言いたいの?」

「あぁもぅっ! あなた悔しくないの?

 山育ちの田舎娘に、司皇子をとられちゃったのよっ」

「とられたって…。でもそれが皇子の御意思なら仕方ないじゃない」

「判らないわよ。

山育ちの姫なんて 目新しかっただけかもしれないし。

飽きて捨てられる可能性だって有りでしょ」

「だからって…、私達には関係ないわ」

「関係大ありよっ! 下品な山猿でもお目にとまれるなら、私達にだって機会があるわよっ」

「ハァ~ッ…。バカなこと言ってないで手を動かしなさい」

「バカッて何よ!?」

バカじゃなきゃなんだ。

あいつのそばに仕えてあいつの良さがわからないのはバカじゃなく大が付くバカ。

「あなたはこの宮に入って日も浅いから そんなこと言ってられるのよ。

私は以前の皇子を知っていますからね」

「何、それ?」

「つくし姫と出会う以前の皇子は、それはひどかったのよ。我儘で乱暴者で。

 それが、つくし姫と出会ってからは見違えるようになられて。

 私達古参の女官はみんなつくし姫に感謝してるんだから」

その評価は俺に対する配慮がまったくない。

気分を害してもし方ない女官の言葉にも皇子の口元はかすかにほころびを見せる。

「何よ、それくらい。多少性格が悪くったって 身分と財力で十分お釣りがくるじゃない。

 それに皇子と彼女、この頃ずっと会ってないのよ。

 私にだって、きっとっ!」

総二郎たちが心配した通りつくしに対する司の態度があらぬ疑いを持たせてしまったのは間違いなかったと司も認めざるおえはなかった。

「『きっと』? 何だってんだ?」

力任せに開いた障子。

「ヒッ」

皇子の姿に顔色を変えた二人の女官が腰を抜かしたようよわよわと膝を崩して座りこむ。

「こ、これは、皇子様」

額を畳に擦るように頭を下げた女官。

「てめぇ…、さっきから言いたい放題

 言ってくれてたな。誰が『下品な山猿』だと?」

「そ、それはっ」

下がった頭は畳の中に埋没しそうなくらいに擦りこまれていく。

「てめぇはクビだっ! 今すぐこの宮から出て行け!!」

「お、皇子…」

「痛い目をみなきゃ、出て行けねぇってんならそうしてやろうか?」

「ヒィィッッ」

腰の抜けたまま這いつくばるように四歩行の哀れな姿で女官は必死でその場から逃げ去った。

「ケッ…」

その様子をつばを吐くような面持ちで一瞬眺めた司は足元に頭を下ろしたままの女官に顔を移す。

「……、皇子様」

「あ、何だ?」

「身分を弁えず、申し上げます。  つくし姫の入内は、決定でしょうか?」

頭をあまり上げずに上目目線で司を見る女官。

なんとなく顔に見覚えのある女官は司の姉付きの女官だと気が付いた。

椿がつくしのために送ってくれたのであろう。

その心遣いに司の気もわずかに緩んだ。

「あ? んなもん、決まってんだろっ!」

「では、もう少し姫様を気遣ってあげてください。

 慣れない宮暮らしで、お疲れの御様子。

 この上、頼りの皇子にまで無視されたままでは あまりに姫様がお気の毒です」

「無視なんか、してねぇぞ」

目の前にいる女官が姉に見えて来て司は椿に説教されてる気分になり拗ねたような声が出て慌ててしまった。

「では、何故お会いにならないので?」

「………」

「あって、お言葉をかけてさしあげて下さい。

 それが無理なら、せめて文の一通なりと。

 それだけでも、姫様の気鬱が晴れましょう」

気鬱? つくしが?」

女官の言葉に司は目を見開くほど驚く。

気鬱なつくしなど想像できない。

元気が取り柄といえる姫なのだ。

つくしの朗らかさと人を和ませる雰囲気が気に入ってる司なのだ。

「はい。私達の前では笑ってらっしゃいますが、 無理しておられるのは丸わかりです。

 『司皇子は、後悔してるのかな…』などと  独り言を仰っていたこともありましたし」

スクッと背筋を伸ばして顔を上げた女官はすっかり息を吹き返して司と対等だというように意思を表示しだした。

「……、おい」

「はい。出しゃばっているのは承知の上です。 どのようなお咎めでも」

「ありがとよ」

「っ!」

にこやかに礼を言う司に意表をつかれたように驚きを見せた女官は直ぐ様、頭を深々と下げた。

司皇子から礼を言われて驚きの余りに声も出ずに硬直している 女官をそのままにして、つくし姫のところに

司は直行する。

もう遠慮なんてしねぇ。

荒げる足音は司のはやる心をそのまま映しだす。

早く会って抱きしめたい。

つくしの部屋の前で皇子に気が付いた女官たちが次々と佇まいを正して膝を折り頭を下げた。

「あいつはいるのか?」

「ただいま湯殿でございます」

震える声が板間に反射して小さく響く。

「案内しろ」

「湯殿にでございますか?」

少し頭を上げた女官は皇子の言葉の意味を確認するように顔を見つめる。

「そうだ」

「それは・・・少し・・・」

「俺を拒むつもりか?」

冷ややかに押しの強い声にそれ以上の反論は女官の口からは出てこない。

女官の前を歩きだす司の背中を慌てて女官たちが追ったのだった。

拍手コメント返礼

スリーシスターズ 様

坊ちゃん皇子暴走開始!

今回は制御不能になる可能性があるかも~

榮倉奈々ちゃん結婚してしまいましたね。

最近は多いですね。

そろそろ真央ちゃんも聞けないかなぁ~