寝苦しい夜だった。

この日何回目の寝返りなのか、ミッターマイヤーには考える気力も無かった。

夜の闇の中で彼はうっすらと感じた。

<今夜は夢見が悪そうだ・・・>

気が付くと彼はラインハルトの旗艦、ブリュンヒルトの一室にいた。

どうやら軍事会議の最中らしい。

「今回の戦いは圧勝で終わるはずです

なぜなら相手がたわいもない口先だけの貴族連中なのですから」

「ですが油断は禁物」

オーベルシュタインが静かに横から口をはさむ

「形だけの軍事会議にもお堅い事だわが作戦参謀長は・・・」

どこからかそんな言葉が漏れてくる

「そうそう今日の会議は形だけまあ一杯やりながらゆっくりやりましょう!」

そういいながらおちょこを持ち一人一人酌をしてまわる一人の男がいた

「あの男は?」

ミッタ―マイヤーは横に座ってるロイエンタールに小声で聞いた

「まだ会った事がなかったのか?

最近いつのまにか会議室に住み着いたウンナンの片割れナンチャンとはあいつの事だ」

そうロイエンタール言って意味ありげな笑いを浮かべた

そこへ。

 ちょん、ちょん、ちょんちょんちょんちょんちょんちょんちょん・・・・

「皇帝陛下のおなぁーりぃー」

派手なお囃子とともに、顔半分以上をデカいマスクで覆ったラインハルトが入室してきた。

「(コホン)本日はご苦労である。軍事会議のために卿らに集まってもらったのは

実は表向き。我々には今まさに直面している重大問題が・・うっ・・」

ここまで言って、ラインハルトは急に口をおさえた。

「皇帝陛下?」

先を促すように非難がましくオーベルシュタインが言ったその時。

「ふぁ、ふぁ、ぶわぁーーーーーっくしょぉぉぉぉぉぉぉっいっとちっくしょぉ」

ラインハルトのくしゃみは国宝級、いや宇宙宝級?だった。

「陛下がくしゃみにお悩みとはウワサで聞いてはおったが・・・」

あっけにとられてロイエンタールがミッターマイヤーに話しかけていると。

コトコトコト・・・。

薔薇の花が華やかに生けてある壷が急に動き出し、

「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃ、じゃぁぁぁぁーんっと。」

な、なんと、アラビア風の衣装をつけた(ターバン、ヘソ出し)、

ウンナンのもう一方うの片割れ、ウッチャンが飛びだしてきたのだ!

「最近くしゃみをするとこんなのがついてまわり私を悩ます」

「そんな殺生な言い方あまりに御無体な  オイオイ・・・」

ラインハルトの横でしなを作り泣きまねをするウッチャン

「私はラインハルト様のためにこんなに尽くしていますのに   オイオイ」

「その泣き方はやめろーーー

おまえの使う魔法とやらはことごとく失敗ではないか

ヤンをつれて来いと言ったらトム・ヤン・クンを持ってくるは

宇宙を手に入れたいと言ったら地球儀もってくるは

  作る料理は味音痴、歌は騒音 邪魔にしかならんではないか」

「だってヤンて知らなかったし・・・」

「言い訳は無用、頼むからもう出てこないでくれ」

「そんなこと言われましてもくしゃみをされた方がご主人様で」

「皆のもの今日の話題はこいつをどうするかと言うことだ」

会議室がざわつき始め会議が始まった

その間もラインハルトとウッチャンのじゃれあい、もとい、どつき合いは 続いていた。

ご、ご主人様ぁ、肩をお揉みしますー」「いらぬ。」

ごご、ご主人様ぁ、コーヒーはいかがでごじゃるか?」「いらぬ!!」

「ごごご、ご主人様ぁ、お靴を温めておきました。」「臭いっ!」

「だいたい、そなたは何者なのだ?降って沸いたように出没しおって」

あちきでおじゃるか?コンビニ・ウッチャンとは、あちきのこと。

いつでもどこでもご主人様がお呼びになれば、24時間オフ抜きで

サービス致しまちゅ。  オイオイオイ」

「意味もなく泣くな!」

「あ、ついクセで。はい。」

すると、ウッチャンの真っ赤なでべそがさらに真っ赤になって点滅しだした。

ピコピコピコピッコン

あーれー、ご主人様、しばしお別れでごじゃる。

あちきは3分しか働けないので おじゃるぅーーー・・」

ウッチャンの姿は、もとの壺の中へと消えていった。

「どうやら、私がくしゃみをしなければ良いらしいが・・・それも保障できぬ。

ミッターマイヤー、何か案はないのか?」

名指しされたミッターマイヤー、「私めにおまかせを」

そう言って爽やかに立ち上がり、

「うるるんうるるんうるるんるん♪」

とナゾの呪文をとなえると・・・・

「おーっほっほっほっほ。私をお呼びになったのはどなた?」

そう言って、ウンナンの前に立ちはだかったのは

知る人ぞ知るゴンチャンマンだった。

人に頼むのは私の本心には背くがこの場合仕方あるまい

あのわけが解らん物体は私の手ではどうにも出来ぬといろいろ考えをめぐらすラインハルト

「いけーゴンチャンマン宇宙の平和のためあのウンナンを蹴散らすのだ」

ミッタ―マイヤーはそう叫びながら右手でウンナンを指差した

「シュワッチーーーー」

ゴンチャンマン一声発すると壷めがけて飛び込んだ

すると壷はこなごなに崩れ破片だけがあたりに散らばった

「オー―――壷の中には何も無いぞ」

「ウー――ンこの手があったか」小声でつぶやくミッタ―マイヤ

しかし、けしてゴンチャンマンは壷を壊すつもりではなかった

壷の中の世界へちゃんと飛び込めるつもりであったのだ

内心汗タラタラのゴンチャンマンであった

しかし、ゴンチャンマンもさるもの。

心臓バッコバコの動揺など表面にはおくびにも出さず、

箒で壺の破片を拾い集めておもむろに懐につめこんで。

「このワタシに不可能があって?おーほほほほほのほ」

高笑いついでに

ビシーッ っとミッターマイヤーを指さし、こう叫んだ。

「早くしないと遅刻するわよ!」

そして目点のミッターマイヤーを尻目に疾風のごとく

はるか銀河系へと去っていったのだった。

ミッターマイヤーは飛び起きた。

天気のいい朝だった。

すべては夢だった・・・。