いまだに恐ろしいもの

ユーリ編

「うう・・・・・う~ん・・・・・・・うううう・・・・・・」
ある日の夜のこと。
いつもの通りに事が済んで、心地よい眠りについていたときのことだった。
ユーリは夢を見ていた。
久しぶりに見る。
「・・・リ、ユーリ!おきろ!!」
「・・・・・・っ!カイル!!・・・そっかぁ、よかったぁ・・・・・」
ユーリのうなされている声に目を覚ましたカイルは、ユーリを素早く起こした。
何が起こっているかは、カイルには分かっていない。
「どうしたんだ、ユーリ。いったい何が・・・・・」
「夢、を見たの。怖かったよぉ・・・・・!!」
「そうか・・・・どんな夢だった・・・・って、ユーリ!?」
ユーリはカイルの腕の中で、再び眠りについていた。

そんなわけで、カイルがユーリの夢の話を聞くのは明日の朝になるわけだが・・・。
カイルとしては、いつまたユーリがうなされるかわかったもんじゃない。
そんなわけで、カイルは徹夜するはめになってしまったのだ・・・・・。

「・・・・ふぁあ・・・。あっ、カイル。どうしたの?早いね」
いつもは自分の方がおきるのが早いので、不思議に思う。
カイルは、「徹夜していた」なんて、言えるわけがない。
そういったらユーリは「なんで!?」と、聞き返してくるだろう。
つまり!その話で、ユーリとの話の時間がなくなってしまう。
「いや、ちょっと。・・・・で、ユーリ。昨日のお前の夢はなんだったのだ?」
ユーリの顔が、はっとする。
思い出しただけでぞっとするものなのか??
「思い出しただけでも、ぞっとするよ・・・・・。」
図星か!?
「無理に言わなくてもいいんだぞ・・・・・。」
「恐ろしいものを見たの・・・・・。この時代に来て、そんなものとは久しくおさらばしてたのに。
 今になって、夢を見るなんて・・・・・」
「なんだ・・・・それは・・・・?」
滅多なことでは動じないユーリが、こんなにおびえているなんて・・・・・。
ユーリの時代には、いったいなにがあったというのだ!?
「・・・・・テストの夢!!あ~、今考えただけでもぞっとするよぉ!!!!!!
 頭の中に、数学の計算問題や、理科の問題や、英語の単語や・・・・・・・・・。
 この世界に来てからは、そんなものとは無関係だったのに!!!!!!!!!あ~~・・・・・」
「スウガク?リカ?エイゴ・・・・・??なんだ?しかも、テスト・・・・・??」
「あぁ、カイルは知らないのね!?いいなぁ、本当に!!あたし、受験終わってからこっち来たけど、
 受験終わるまでは毎日毎日繰り返し見たんだ!!恐ろしい・・・・・・。お母さんに、勉強しろって
 怒鳴られる夢、塾の先生に怒鳴られて、学校の先生に怒鳴られて、テストは赤点で・・・・・・!!  
 今思えば、こっちの世界に来てテストと別れられてうれしいよ!!」
そうか、ユーリはテストとやらが怖いのか・・・・。
しかしいったい、それは何処に生息しているものなのか・・・・・。
カイルは、おもいっきり勘違いしていた。生き物だと思っていたのだ。    「で、ユーリ。そのテストというものは、どこに生息しているんだ?」
カイルはそのままに言った。
ユーリは、はぁ・・・??という疑問でいっぱいの顔だ。
「だから、この世界にはない・・・っていうか、生息なんて元々してないよ」
「??では、そのテストというのはなんだ?」
ユーリの知っているものは、とりあえず知っておきたい。
全部はとうてい無理だろうから(ユーリに聞いても無駄だろうし)とりあえずは、ユーリの口からでた言葉の意味はすべて把握したい。
それがカイルの考えだったわけで・・・・・。
「つまりテストっていうのはね・・・・。その人の、知識をはかる・・・試験・・・・・」
「シケン?その人の知識をはかるものをテストというのか?」
「うん。・・・・カイルは、テストしたことないの?」
うう~ん・・・・・どうだったか・・・・?
自分の能力を測ることなら、したことはあるのだが・・・・・。
「なんとなく、わかった。まぁ、それはいいだろう。・・・で、ユーリ。それがなぜ恐ろしい?
 自分の能力を測るものならば生きているわけではないのだろう?」
「うん。でもね、そのテストで悪い点数をとってしまうとお母さんに怒られるの。
 カイルはなかった?勉強してて失敗して、怒られること」
「私は、失敗したことがない。(きっぱり)」
やけに自信ありげに言うカイル。
ユーリは、がっくりしてしまった。そして、しみじみ思った。
『そぉだよねぇ。あたしが受験で困っているとき、この人は遊んでたんだもん。
 しかもその前に、難しい勉強おわらせてるんだろうなぁ・・・・・。』
カイルはカイルで、しみじみ思っていた。
『・・・そういえば、ユーリはここで暮らすことになったからここの言葉を教えたが、私は
 ユーリの国の言葉を知らないな・・・・・』
よし!!!!!!!!
「ユーリ、お前の国の勉強を教えてくれないか!?」
「カイル、ここの国の勉強を教えてくれない!?」
二人が言ったのは、ほぼ同時だった。   「ここの国の勉強といってもな・・・・。」
しばらくの沈黙の後、さきに口を開いたのはカイルだった。
「ねぇ、ダメ?言葉は覚えたし、政治関係も覚えたけど他はさっぱりだもん!!」
「じゃぁ、お前の国の勉強も教えてくれるか?」
交換条件。
こうして次の日から、ユーリはカイルにカイルはユーリに勉強を教え始めた。
                                  (ユーリ編・完)     



ハディ編

「ふわぁぁ・・・・。」
大きなあくびを一つ、ユーリ様がなされた。
この頃ずっとこの調子だ。
原因が分かっているので、対処の仕方もあるはずなのだが・・・・・ない。
全く、ない!!
「ユーリ様、お部屋でお休みになられますか?」
・・・・・。
しばらくの沈黙の時間。そしてユーリ様は、大きく首を横に振った。
「外へ行くわ。眠気覚ましに。ハディ、一緒に行こう!」
陛下から、『誰か連れて行くのなら、少しは、外出してもいい』と、許可を得ていたユーリ様。
これも、毎晩の成果ですね!!(ほろり)

「う~~~!!きもちい!ね、ハディ!」
丘の上までアスランを走らせて、今はのんびりおくつろぎのユーリ様。
心地よい風も吹いていて、とても気持ちがいい。
「あっ、ねぇ、ハディ!今日はお祭り?」
城下町を指さして、不思議そうに問う。
「あぁ、あれは、動物鑑賞会ですわ。年に一度、自分のペットを見せあうんです。
 模擬店なども出ていますよ。」
「よし、いこう!」
ユーリ様は、言うが早いかアスランに乗り込んでいた。
・・・・・今、なんとおっしゃいましたか?あそこへ、いく!?
動物がたくさんいる・・・・。
「ハディ、早く行こう!」
あそこにはきっと、ペットとしては結構有名な・・・・あの動物もいるはず・・・・。
しかし、ユーリ様のご命令だ!
命を捨てる覚悟で、街へ行こう!!!!!!
「・・・ハディ、そんなに緊張しなくても、私、あぶないことしないから・・・・。」
いえ・・・
ユーリ様をご心配申し上げてるわけではなく(ちょっとは不安はあるが・・・)
私どうしてもあの毛がふさふさでニャーと泣く生き物が苦手なのでございます。
見ただけで卒倒しそうなほどに・・・
そうとは知らないユーリー様。
両手に高く抱いた白い小さな生き物を「かわいいよ」と私の鼻の先に・・・
やっぱり、私卒倒して倒れてしまいました。
お願いですユーリ様、その恐れしいものを私の目の見えないところへ・・・
「ネコ嫌いなの?こんなに可愛いのに・・・」
私の苦手なものを発見したユーリー様。
私から逃れるときはこの手が使えるなんて思ってませんよね?
そのほうがよっぽど私にとっては恐ろしいのですから・・・
                                           END