そして僕らは途方にくれる

*

親に半強制的に命令されて、久しぶりにパーティーに顔を出す。
珍しくF4がそろい踏みだ。
その情報が漏れていたのか、今日の会場はやけに若い着飾った女性が目立つ。
まあ綺麗なものを見るのは嫌いじゃないからほどほどに相手はする。
F4の中では俺とあきらが、うまく対応していくしかないのだけれど・・・

司は今のとこ牧野しか目に入ってないみたいだし・・・

類も牧野以外の女性には笑顔を向けることのなく、興味なさそうにスルーしている。

司は今日はやけにテンションが高い。
こんな機嫌のいい司をパーティーでは見たことがない。
いつもは『俺は仕方なく来てやってるんだ。来てもらってるだけでも感謝しろ!』みたいな態度で勝手に壁を作っている奴だから。

ご機嫌の原因は・・・
牧野がらみだなと見当はすぐつく。
牧野で左右されるこいつの感情はいつもの事だから・・・

司に娘を連れて近づくおっさんが見えた。

普通なら一瞥して無視するのが司流だ。
しかし今回だけは違った。
おっさんの娘には全く目もくれたないが、なにやら機嫌よくオーバーアクション気味に話しだしている。
あきらも何か気がついたのか俺に視線で合図を送る。
興味のなさそうな類を二人で引っ張りながら、司のそばに歩み寄った。

「「「・・・・・」」」

まさに開いた口がふさがらないといった光景を目にすることになるとは思ってもいなかった。

「最近好きな女にプロポーズして・・・もちろん俺が断られる訳はないのだけど・・・」
「単なる庶民でたいして美人でもなく・・・でも!けしてブスじゃない!俺は惚れていて、かわいくて、かわいくて・・・」

こいつ・・・
娘を司に近づけたい親に対して牧野自慢をしてやがる。
それも見たくもない、にやけた顔で・・・

おっさんも引きつった顔をしながらも司の機嫌を損ねることができるはずもなく、聞きたくもない話を延々と聞かされている。

普通するか!?
その場所に居もしない彼女の自慢話。
それも聞かれてもいないのに・・・

牧野がいたら顔を真っ赤にしてケツに蹴りでも入れられそうな場面だぞ!

こんな道明寺財閥の跡取り息子を見せたら、明日の株価絶対下がる・・・
と・・・変な心配しちまった。

「おれ・・・こいつの友達・・・今日は、やめるわ」とあきらがつぶやく。

この状態・・・
修正できるのは・・・
やっぱり牧野以外には考えられない。
「今日は牧野来てないよな・・・」と、さすがの類も考えは俺たちと同じだ。

俺たちは司から徐々に遠くにはなれたが、司の周りだけは異様な雰囲気に包まれたままだ。

「俺達・・・
同類に思われていないよな・・・」

思わず俺の本音が口から漏れた。

俺たちに娘を紹介することにためらうパーティーの参加者を横目に見ながら・・・


*この短編 「第2話つくし誘拐さる」の中で書いたパーティーの司のデレデレぶりをF3三人が呆れるシーンを総二朗の視点から書いてみました。