第5話 嵐は突然やってくる!②

 第5話 嵐は突然やってくる!①からの続きです

-From 1-

* 珍しく道明寺が私に謝った。

「司の口からごめんなんて言わせるのは牧野しかありえねーぞ」なんて西門さんの言葉に頷く自分がいる。

あんなに怒って泣いていたのがちょっと恥ずかしい。

たった「ごめん」の3文字で機嫌が直るなんて、私もそうとう道明寺には甘いんだよねと認識してしまった。

道明寺が謝ってくれた後、無理やり私を抱きしめてキスしてくるから、いつもの防御癖で思わずパンチが出てしまう。

ひでーなぁみたいに顔をゆがめるあいつに「これで、許してやる」なんて啖呵を切って見せたけど、結局また抱きしめられて手足をバタつかせるしか出来なかった。

それでもなんとか仲直りできてパーティーを最後まで楽しむことができたのは花沢類や西門さん、美作さん3人の御蔭なんだろう。

それでもやっぱりパーティーは私にとって鬼門の気がする。

1回目は意地悪されて水掛けられ、2回目は道明寺の婚約発表でショックを受け、今回は浮気女呼ばわりで喧嘩だもんね。

4回目てどうなるんだろうなんて思わず考えてしまった。

もうしばらくは絶対なにがあってもパーティーなんて出ないから!と、決心したのは言うまでもない。        

                       

パーティーから数日が経った。

何事もなかったように大学に通い、いつも通り慌ただしく時間だけが過ぎていく・・・

はずだったのにーーーーー

嵐は突然やってきた!?

講義が終わり、家に帰るために校門に向かう。

同じく大学を出ようとする人波の中から「あの人結構イケてない?誰待ってんのかな?」なんて声が上がるのが聞こえてきた。

女性のキャーキャーした黄色い声は珍しくもなんともないが、F4以外で上がるのは珍しい。

私には関係ないと気にも留めずに校門を出る。

「やあ、つくしちゃん、待ってたよ」

黄色い声を上げていた女性の視線が一斉に私に注がれるのが嫌というほど分かる。

その横にちょっと目立つ感じでニコッとほほ笑む早川寛人がたたずんでいた。

「どうしたんですか、こんなところで?」

もう接点を持ちたくないと思っていた人物の登場に思わず警戒してしまう。

「君を待ってるに決まってるだろう。君に会う以外に用事はないしね」

「ハイコレ、君のでしょう?」

差し出されたのはここ数日探しても見つからなかった私の手帳だった。

「もしかして・・・この前の合コンで?」

「そっ、悪いけど中見たら、なんか予定がびっしり書かれてあったから困るかなと思って」

「早く返そうと思っていたんだけど、なかなか都合が悪くてね」

「君がパーティーに来るて判っていれば、その時渡せたんだろうけど」と、にっこりほほ笑む。

ちょっと嫌味っぽく聞こえるのは気のせいだろうか。

「わざわざ、すいません。助かりました」

バイトの予定なんかを書き込んでいたから結構困っていたのが事実で、手帳を渡された私は思わずほほ笑んでお礼を言ってしまった。

私達を遠くで眺める女子大生の中に知っている顔もちらほら見えて、なんか周りのヒソヒソ話が大きくなっているように感じる。

「道明寺さんがいるのにね」なんて、私を軽視するような声がわざとらしく聞こえてくる。

相変わらずの低俗的な嫉妬の嫌がらせなんて高校時代から全く進歩がない。

それにむきになる私も進歩がないんだけど。

やっぱり何の苦労も知らないお嬢様連中にはいまだにムカムカした対抗心が湧きあがってしまう。

今はこんなのにかまっている場合じゃないと頭を切り替える。

早川がここで私を待っていた事実は隠しようがなく・・・。

この状態、見ようによっては彼氏が迎えに来て笑顔で応える彼女的に見えなくもないし・・・。

『牧野を校門で男が待っていた』なんて噂が道明寺の耳に入るのも時間の問題で・・・。

問題は噂はどんなふうに大きくなって道明寺に伝えられるのかなんだけど・・・・。

私を校門で男が待っていた!くらいならまだ打つ手はあるんだけどなんて考えてしまった。

それより最悪なのは今ここで道明寺にみつかることだと気がついた。

なんか・・・

ヤバいような気がする・・・。

これ・・どう取り繕う?

額に青筋浮かべた道明寺を想像したら背筋に冷たいものが走ってしまった。

ヘンな緊迫感が私を襲う。

「ねえ、届けたお礼にお茶でも付き合ってもらえるかな?」

それは無理!

と言いたいところだが・・・

この場をすぐにでも離れたい私と道明寺に早川を見つけられたらそれはそれで問題が起きるわけで・・・

結局私の選択肢は一つしかないことを確信する。

早川を連れてこの場を一刻も早く離れるという結論。

これは断じてデートじゃない!

一時的避難処置!

こんな言い訳道明寺に通じるかな?なんて思いながら「お茶だけですよ」と念を押し、早川の腕を引っ張り校門を後にした。

-From 2-

「早川さんここにしましょう」

「えっ、俺もっといいとこ知ってるよ」

「私はここでいいです」

下手にデートコースのようなところにでも連れていかれたら後で道明寺に言い訳ができないと、つくしは目についたコーヒーの全国チェーン店を見つけて足早に自動ドアを開いた。

渋々な感じでつくしの後ろから早川もついてくる。

「早川さんなんにします?」

「コーヒーでいいよ」

「コーヒーのショート一つとーキャラメル マキアートのショート1つください」

飲み物のサイズも早く飲み終われる一番小さいサイズを頼む。

コーヒー代ぐらい払うよと言う早川を無視して自分の分の飲み物代をつくしはレジに置く。

出来上がった飲み物を受け取ると一番奥の目立たない席を選び座った。

「なんか、えらく機嫌悪いね。折角の初デートだというのに」

「は・・・っ・・・て」

「早川さん言っときますけど、これデートじゃないですからね」

思わず両手で拳を作りテーブルを思いっきり叩いてしまう。

「じゃぁ、何なの?」

「仕方なく付き合ってるだけのお茶会・・・かな?」

「プハハハハハ」

「君がどう言い繕っても、男女で同じ時間過ごせば周りからはデートに見られるんじゃないかな?」

つくしの機嫌の悪さなんて早川にはまったく問題ないみたいだ。

つくしとは対照的に早川は機嫌よく笑っている。

「私・・・こういうの困るんです」

「彼氏いるから?」

「そうですよ。早川さんなら私にアプローチかけなくても女性には事欠かないんじゃないんですか?」

「確かに言い寄ってくる女の子には事欠かないけど、俺・・・自分からアプローチした女の子なんて君が初めてなんだけどな」

笑顔から突然真顔になった早川の黒い瞳がじっとつくしを凝視している。

思わず顔が赤くなるのが自分でも解かる。

告白されて悪い気分がしないのは事実だ。

だからといって早川に想いが一ミリとも動く可能性はないとつくしは断言できる。

早川さんて・・・

やっぱり『たらし』だよね・・・

女の子が言葉に詰まるような言葉と仕草で攻めてくるもんな。

西門さんと同じ匂いがすると思うつくし。

「今日は手帳のお礼に付き合っただけですから、それにあなたと付き合うつもりはありませんから」

「失礼します」と勢いよく椅子から立ち上がった。

「ねえ、今店の外出ない方がいいと思うよ」

立ち去ろうとするつくしに外を見るよう早川が合図を送る。

後ろを振り返る感じに店の窓から通りに視線を注いだ。

キョロキョロと誰か探すように歩く道明寺の姿が見えた。

立ち止り電話をかける仕草と同時につくしのバックから携帯の着信音が流れ出していた。

テーブルの陰に隠れこむように慌ててバックの中から携帯をとりだす。

別に慌ててテーブルの下に隠れなくても、道明寺からつくしの姿が見えるはずはないのだが、身体を必要以上に小さくする感じで携帯の画面を見つめる。

やっぱりどう考えても道明寺からの電話だよな・・・

「ごくり」と唾を飲み込む音が外に聞こえてそうな感覚だ。

覚悟を決めて携帯のボタンを押す。

「もし・・・」

「おい!牧野お前どこにいる!?」

鼓膜が破れそうな勢いで道明寺の声が聞こえてきた。

「どこって・・・・どこにもいないよ」

どこにもいないって、私は透明人間か。

自分でつ込みいれても仕方がないが本当に透明人間になりたい気分だ。

「お前!今、誰といる?」

「誰って・・・だれだったかな? あははは・・・」

司の沈黙が冷たい空気をつくしの体に注ぎこむ。

「おせっかい野郎が牧野が男と腕組んで校門出て行ったて教えてくれたんだけどな」

司のすごみを利かせた声がつくしの動揺を大きくさせる。

「腕なんか組んでない!」

思わず叫んでしまった口を右の手のひらでおさえる。

自分で男といますとばらしたようなものだ。

どう・・・ごまかす。

ごまかせないよな・・・

じゃあ・・・どうする?

うつてなし。

この現場踏み込まれたら収集がつかなくなるのは誰でも解かる。

やっぱり・・・

なんとかごまかすしかない!

そっと、頭を上げ通りを見ると、携帯相手に怒り沸騰中の道明寺が見えた。

通りを歩く人も司に関わりたくないという感じに距離を置いてすれ違って行くのが分かる。

携帯から相変わらず道明寺のどなり声が切れることなく聞こえてくる。

「ごめん、後で話すから」

それだけ言うと道明寺の返事も聞かず電話の電源をプッチと切った。

テーブルの下、私は頭を上げることができず固まって動けなくなってしまった。

-From 3-

「ねえ、大丈夫?彼氏そうとう怒ってるみたいだったけど」

「電話からのどなり声、僕にも聞こえたよ」

「早川さん!全然心配してるようには見えないんですけど」

つくしはあんたのせいだとばかりに早川を睨みつけた。

「そりゃ、そうだよ。君たちが喧嘩別れしてくれれば僕が入り込むチャンスは生まれるわけだしね」

からかっているような早川の口調につくしはムッとする。

「そんなチャンス絶対ありません!」

勢いよく立ちあがると大声で叫んでしまった。

店にいた数人の客が何事かとつくしに視線を向ける。

その視線を避けるようにつくしは慌てて椅子に座った。

「おい、ここでなにしてる?」

いきなりテーブルの上にドンと2本の腕が落ちてくる。

つくしの頭の上から聞きなれた声が聞こえてきた。

幻覚?幻聴?夢?

じゃあ・・・ないよね・・・

恐る恐る目線を上げると、これ以上にないという不機嫌な顔で早川を睨みつける司がそこにいた。

「よく・・・ここが分かったね」

うつむきながら小声で絞り出すようにつくしは口を開く。

「あっ」

自分に向けられてる司の視線がやけに痛く胸に突き刺さる。

「なんとなく店の中を覗いたら、こいつの顔に見覚えがあったからな」

「合コンにパーティーと、やたらお前のこと気にいってる様子だったしな!」

「お前こそ、なんでこんな奴にノコノコついて来てるんだ!」

「普通断るだろうが!」

唇の端を少し上にあげ、ひきつるような笑いで司がつくしを見下ろしている。

この状態・・・

やばいってもんじゃないよね。

私・・・

どうなっちゃうんだろう・・・

そんな思いがつくしの胸をかすめる。

「最初は・・・断るつもりだったんだけど・・・」

「このまま、大学の前に居たらヤバいかな・・・なんて思っちゃって・・・」

「ちょっとしたお礼で・・・お茶してただけで・・・・」

「そんなに・・・怒らないでもらえると助かるんですけど・・・」

思わずつくしは本音が漏れた。

「ドンッ!」

「キャッー」

手のひらを再度テーブルに司が思い切りたたきつけた。

思わずつくしは目をつぶる。

「自分の彼女にちょっかい出されて、怒らない男がいたらお目にかかりたいもんだよな!」

司は早川を脅すように睨みつける。

その視線をそのままつくしに向け司は言い放った。

「お前も少しは自分が女だって自覚しろ!」

「もしなんかされたらどうするんだ」

なにかされるって・・・

お茶するだけでなにされる?????

よっぽど道明寺の方が危ない気がするんですけど・・・と思うが、今のつくしに言えるはずがない。

「牧野・・・お前が俺の守れる範囲にいねえと心配になっちまうんだ」

怒りに満ちていた司の瞳の奥で、熱くやさしい光が自分に注がれているのがつくしにもわかる。

「ごめん」とつくしがつぶやく。

そして、つくしが止める間もなく、一瞬でその光を消し去った司の拳が狙い定めて早川の頬にぶち当っていた。

「二度と牧野を口説こうなんて思うなよ」

「行くぞ!牧野」

司はつくしの腕をつかむと必要以上の力を込めて、抱きかかえるように店の入り口を目指した。

椅子から転げ落ちた早川は、唇の端を流れる血を拳でぬぐい去りながらその姿をじっと見つめていた。

-From 4-

「怒ってる?」

手首を痛いほど握りしめ大股で歩く司に小走りでついて行くのがつくしはやっとだ。

その司に背中越しに恐る恐るつくしが問いかける。

「怒っちゃいねえ!」

否定をする言葉は返ってきたが、怒りが司の体から抜けきってないのはヒシヒシとつくしに伝わってくる。

人込みが多い歩道を抜け、左右の街路樹が開ける公園へ差し掛かった時、いきなり司が立ち止るとつくしを振り返った。

「なんで、電源切った?」

「電源?」

「携帯のだよ!」

「あっ・・・携帯ね・・・」

今さら道明寺からの電話を一方的に切ったことを追及されるとはつくしは思ってもいなかった。

「まさかあのやろうとあのまま・・・」

「それはない!絶対に!」

あの時は道明寺の電話に思わずうろたえていて、道明寺のどなり声の追及に逃れるため無意識に電源を切った気がする。

でもこの答では道明寺が納得するとは思えない。

「あとでちゃんと説明するつもりだったから・・・」

道明寺にこんなに早くばれるなんて予想外だったけど・・・

あの場合はこれが最善の策のように思えたのが今は罪悪の失敗だったと認めざるおえない雰囲気だ。

道明寺の怒りが収まるまで静かに待つしかないのかな、なんて考えが頭に浮かぶ。

「お前なーー」

道明寺の雷が落ちると思った瞬間思わず目をつぶる。

???????

途中で道明寺の声が途切れたんですけど・・・

ここで普通なら「バカとかアホ」とかの罵声が飛んで・・・

今回に限っては私が反論するなんてできないわけで・・・

落ち着いたころいきなり道明寺が私を抱きしめて終わりて感じじゃないでしょうか?

・・・て、自分なりに勝手にシナリオ書いていたんですけど・・・

やっぱりなんかおかしい?

なんか静かじゃない?

ゆっくり目を開けるつくし。

目の前にいたはずの司がいないことに気がつく。

左右上下に視線を移すとつくしの数メートル先で地べたに腰ついて呆然としている司と、つくしの横で拳を振りぬいた格好で息を切らしながら立っている早川がいた。

もしかして・・・

早川さんが道明寺殴ったの?

あり得ない展開だよーーーーー

先の見えなくなったシナリオにつくしは思わず顔を覆ってしまった。

「何しやがる!」

頬をさすりながらゆっくり立ち上がった司が早川を睨みつける。

「さっきのお返しだ」

「突然暴力振るうなんて最低だよな、話し合いもできないのか!」

「なにをのんきにお前と話すことがある」

「もしかして力ずくじゃないと彼女を自分のもとに置いとけないタイプか」

「てめえもう一度言ってみろ」

二人火花を散らし今にも一発触発の感じでにらみ合っている。

「あの・・・喧嘩は良くないよ」

「「あっ」」

同時に司と早川から睨まれるつくし。

「つくしちゃん、君には関係ないことだから、気にしないで」

司を睨みつけながら早川がつくしを気遣う様子を見せる。

関係ないっ・・・関係あるでしょう!

なんで二人が言い争って私が関係ないなんて言える!?

「男のプライドの問題だからね」

「殴られたままじゃ引くに引けないしね」と早川は司に敵意のこもった視線を投げる。

「上等じゃねえか」

司が対抗するように早川を睨み返す。

この二人・・・

私のこと抜きで喧嘩してるてこと?

なんかおかしくない?

男のプライドて、なに?

一人は彼女にちょっかい出されて気にくわない。

もう一人は彼氏のいる彼女にモーションかけたら、それを知った彼氏に殴られた。

これのどこに男のプライドがあると言うんだろう。

プライドのプの字も感じられないのは私が女だから?

「いい加減にしてよね」

気がついたら男二人を睨みつけドスの利いた声を腹から絞り出している私がいた。

-From 5-

「どこにプライドがあるって言うの!」

自分がもてると思っている男は扱いにくい。

女性はみんな自分になびくと思ってしまているように思える節がある。

早川もこの手の男に分類されるとつくしは思っている。

「大体彼氏のいる女性に思いっきり彼氏に見つかる可能性が高いところでモーションかけるなんて、うぬぼれ以外の何物でもない印象受けるんですけど」

「ちょっと顔がいいからってみんながみんな自分の方を振り向くなんて思わない方がいいですよ」

「私、早川さんみたいなタイプ一番嫌いですから」

一気にしゃべりつくす感じでつくしは言葉を吐く。

「振られたな」

私の肩を抱いて機嫌よく道明寺がイヤみったらしく早川を笑いつけている。

「あんたもなれなれしくするな!」

咄嗟に背負い投げもどきで道明寺を早川の目の前の地面に叩きつけた。

「今度の騒ぎの根本は元をただせばあんただからね!」

「ちょっとのことで嫉妬して騒ぎだすの予想できるから、大学から離れてこんなのとお茶する羽目になるのよ」

早川を指さしながら呆けた顔で座り込んでいる司をつくしは睨みつける。

道明寺が大人の対応できるようなら、こんなに苦痛な思いすることはなかったはずだ。

それに声をかけられた場所ですんなり早川を振って立ち去ることができたとつくしは思う。

それができなくて騒ぎになると思ったからこそ早川の誘いにのったのだ。

「もしかして・・・彼女て結構気の強いタイプなのか?」

「お前って・・・尻に敷かれてるの?」

座り込んでいる司の耳元でぼそぼそと早川が耳打ちする。

「気が強いのは認めるが、尻になんか惹かれてねえぞ!」

司がすぐさま反応する。

「気が強くて悪かったわね」

つくしは司にきつく視線を向ける。

「気が強くなければ道明寺となんて付き合えるはずないでしょう!」

「お前!道明寺なんてとはなんだ!それ言いすぎじゃねえのか」

「俺をなんだと思っている!一応俺はお前の彼氏だろうが!」

「言い過ぎだと思ってるんだったらそれでいいわよ!」

「てめえ、さっきからなんか開き直っていねえか」

「開き直りたくもなるってもんでしょう!」

今まで悩んでたのが馬鹿らしくなってしまった。

今日の結果がこれなら、慌てて画策するよりも、道明寺が叫ぼうが暴れようが受け流していればそっちの方が楽だったような気がするのは間違いだろうか。

「なんだと!」

「なによ!」

道明寺を思いっきり睨みつける。

「お前ら何やってんの?」

後方の方から西門さん、美作さん、花沢類の3人が私たち二人を呆れた顔で見つめていた。

-From 6-

「司が血相変えて大学飛び出すから、俺達も慌てたんだが・・・」

「この様子じゃあ、心配いらなかったか」

意味深に総二郎とあきらが顔を見合わせる。

とても心配してる感じにはやっぱり見えないとつくしは思ってしまう。

「しかし、司。やっぱりお前、こいつが言う通り牧野の尻に敷かれてるぞ」

「尻に惹かれれば変態だけどな」

司に視線を送りながらにやりとする総二郎。

「司の言い間違え気がつかねえて、よっぽど牧野切れてたんだな」とあきらがつくしに視線を向けた。

道明寺・・・

尻に惹かれるて思ったってこと?

なんであんたを尻に惹かれさっせなきゃならない!

司とあきらを交互に眺めながら熱くなってくる顔を両腕で隠すようにつくしは座り込んでしまった。

「お前らいったいどこから見てたんだ」

ふてくされたように総二郎からの視線を司が外す。

「司が牧野に携帯かけて、切られて携帯に喧嘩うってる所からかな」

類がにっこりとほほ笑んだ。

「よくつながってない携帯相手にあれだけしゃべるなんて感心したぞ」

感心した気持ちのかけらも感じさせない、からかう様な口調の総二郎だ。

「その後、突然コーヒーショップに入って行ったときはびっくりしたけどな」

「まさかあんな近場で牧野見つけるとは俺達も思わなかったぞ」

「牧野の行動も安易だけどさすがは司だって俺達感心したもんな」

にやりとする総二郎とあきら。

「それならなんでもっと早く助けてくれなかったの」

つくしは恨みごとの一つも言いたくなった。

「いや・・・すごい形相で司が牧野引っ張ってたし・・・」

「猛獣扱えるの牧野だけだし・・・」

「お前ら二人の後を早川もまた決死の形相でつけ出してたから・・・・」

「面白い展開期待できるの確認してえじゃん」

「てめえら俺らで遊ぶな!」

殴りかかる司の拳をあきらがさらりとかわし右の掌でしっかりと受け止める。

「そんな怒るなって」

「ちゃんと役目は心得てるよ」

「その証拠に二人の喧嘩の歯止めが利かなくなりそうだったから止めてやっただろう」

「感謝しろ」

「牧野の機嫌も収まってるようだしね」

3人は悪びれる様子もなくにっこりほほ笑んだ。

道明寺を扱うツボ・・・

やっぱり心得てるよね。

この三人伊達に道明寺と子供のころから一緒にいたわけじゃないのねと思わず、つくしは感心してしまった。

「この早川てやつ俺達がよ~く説教しといてやるから後はお二人でご自由に」

総二郎とあきらは左右から早川の肩を抱え身動きを束縛している。

早川は抵抗をすることも出来ず二人のいいなりに連れ去られる格好になってしまった。

「司、やきもちもたいがいにしとかないとね」

「あんまり牧野困らせると、そのうち愛想尽かされるよ」

類が司の耳もとでぼそぼそつぶやいた。

「牧野、司に愛想尽かしたら俺のとこ来ていいからね」

司に聞こえるようにな声でそう言いながら類はつくしの肩をポンとたたき背中を見せて歩いて行った。

「あいつ、なに言いやがる。牧野が俺を嫌いになるはずねえじゃん」

「なあっ」

つくしに相槌を求めるように司はつくしの隣に歩み寄りそっと肩を抱く。

その腕を軽く払いのける仕草で「それは解かんないわよ」とつくしは悪戯っぽく笑った。

                                             END

この後少しラブラブな感じ書こうかなと思いましたが後は御想像でということで終わりといたしました。

最後までお付き合いありがとうございました。