第6話 Troublemaker 2

第6話 Troublemaker 1からの続きです。

-From 1-

牧野の話しを総二郎は静かに無言で聞いていた。

なんか信じられないような展開。

花沢物産と肩を並べる大会社が出てくるとはさすがに思わなかった。

牧野って・・・

金持ち惹きつけるオーラでもあるんじゃないか?なんてふと頭に浮かぶ。

類までからんでたなんて・・・

牧野から類の名前が出てこなかった訳だと総二郎は納得する。

「それで牧野は今、その会長の屋敷から通学してると言うんだな」

「まあ・・・そんなとこ・・・かな」

牧野は俺に話した後もなんだかやけに歯切れが悪い感じがする。

桜井の会長の頼まれた事って、要するに親戚のおせっかいどもを黙らせるのが目的ってことだ。

どこの馬ともわからない小娘と思っていたら、バックに花沢物産の御曹司がついてきた。

財産目当てと鼻であしらうつもりの親戚どもにはインパクトあるだろうとすぐに理解できた。

これで本物の孫娘なら何の問題もなく万々歳てところだろう。

親戚が出てくる筋合もなくなる訳だ。

それで終わりじゃねえのかよ。

別に司に会わないなんて別れるようなセリフ言う必要がどこにある?

こいつ・・・

まだ何か隠してないか?

いまだにうつむいたまま俺の目を見て話さないなんて、やましい想いが牧野にあるからにほかならないはずだ。

「お前、まだ俺になんか隠していることあるだろう。全部話せ」

声のトーンを下げる感じで牧野に有無も言わせぬ覚悟を見せる。

牧野の体がピックとひきつるのがわかる。

「花沢類と・・・・」

「あっ!聞こえねぇ!」

言いにくいのか言いだせないのか牧野の口からなかなか言葉が出てこない。

「花沢類と婚約させられた!」

鼓膜が破れかるかと思うほどの声で牧野の奴は叫びやがった。

これで文句ある!みたいな表情の後、牧野はちょっと涙目になっている。

俺が悪者みたいな顔するなって言いたくなった。

これで牧野が誰にもしゃべりたくなかった理由にも納得がいく。

それじゃあ、司に会わせる顔ねえよな・・・・。

でも牧野・・・

司と別れる気はねえて言ってなかったか?

今の状況って、司と類の二股で婚約じゃねーか。

本気で類に乗り換えなんて・・・

牧野にそんな器用さあるはずねえ。

「もしかして・・・その婚約って・・・嘘の婚約か?」

「うん・・・」

「やっぱり嘘でも婚約装うなんて嫌だったんだけど、なぜか話の流れで・・・そうなった」

どんな流れでそうなるのか俺には全く理解できない。

「道明寺に何にもないようには会うことなんてできないし嘘をつきとおすなんて私には無理」

「それに相手が花沢類だよ。このこと道明寺に知らればうまくいっているこの計画どうなるか解かんないよね」

牧野のことになると野生の感がフルパワーの司のことだ、牧野の嘘なんてすぐ勘づく可能性はあると俺も思う。

さすがに類と婚約してるなんてそこまでは司の感も働かないだろうけど。

今までの不可思議な牧野の態度・・・。

類との婚約を知られない手立てに司と会わないと宣言したということなのだろうか。

それって・・・

牧野・・・

言い訳の言葉使い間違ってるぞ!

都合が悪くてしばらく会えないとか・・・

バイトが忙しいて理由で話せば済むことじゃないのか!

大学で自分を無視しろなんて言葉を付け加えるから話がややこしくなってるんだろうが。

こいつ・・・

自分で物事大きくして自分で首絞めてるだけじゃないか!

事態が収拾つかなくなったら絶対牧野のせいだ。

司をどうやってなだめる?

牧野の話しは内緒にすると言った手前もあるが、類との婚約の話なんて司に言えるはずはない!

嘘でもそんなこと言ったらどうなるか・・・

シャレにもならねーぞーーーー。

今のこの状況で司をなだめる自信なんて俺にはねえ!

俺は思わず自分の顔を覆いたくなった。

どうして俺・・・牧野を追いかけた?

こっちが絶対楽だと思ったからだ。

追いつかなきゃよかった。

今回だけは司の方が良かったかも・・・

なんて・・・

後悔の思いが俺の頭にぷかぷか浮かぶ。

牧野の話を聞き終わり、この後どう司に対応するか悩む頭を抱える総二郎を乗せて車は桜井の屋敷の門をくぐった。

-From 2-

西門さんの視線が痛い。

「お前何やってんの」みたいな呆れた顔で見られているような気がする。

この一週間

私は極力道明寺に会うことを回避した。

道明寺に会わなければ私の表情を見られずに済むから、なんとか誤魔化せるかもしれないと考えたからに他ならない。

大学では教室から離れるのはトイレに行くだけと校内での私の行動範囲は格段に狭められた。

大学内を人目を避けて歩く姿はコソ泥を連想させる。

せめて鼠小僧ぐらいには見られたいもんだなんて思える余裕はどこにもない。

大学休んで桜井会長の屋敷に居ることができれば問題はすぐに回避できる。

・・・はずなのに・・・

1時間の授業料を考えると貧乏性の私にそんな大それたこと決心できるはずなどなく・・・

今日も静かに1日が終わるよう息をひそめる。

最初の2、3日は「なかなか会えないな」「講義が難しくて」なんて携帯の会話で乗り切った。

その後「お前なんか変だぞ」と、突然道明寺が確信を突いてきた。

「別に変じゃない」と焦った私は大声で叫んでいた。

その後、どう取り繕って携帯をきったかなんて記憶はすっぽり頭から抜け落ちてしまった。

そして今日・・・

しびれを切らした道明寺が法学部の講堂から死角のない1直線に続く廊下で私を腕組みして待ち構えていた。

「俺達喧嘩してないよな。その前に1週間会ってもいないけどな!」

「お前に避けらる様なことした覚え俺にはないぞ!」

私の返答次第では今にも飛びかかってそうな道明寺の雰囲気だ。

珍しく今回の原因は私にある。

花沢類と家族ぐるみの付き合いの屋敷で寝泊まりして・・・

その上!花沢類と嘘でも婚約したなんて口が裂けても言えるわけがない!

ここをどう乗りきる?

この際、道明寺を怒らせて大喧嘩して冷戦状態に持ち込んで時間を稼ぐ!

これしかない!なんて浅はかな考えで私の頭の中はまとまった。

「しばらく会えない」

「理由は聞かないで、大学でも無視して」

思いつくままに私の口から出た言葉は、喧嘩にもならない一方的な決裂のセリフ。

西門さんが「それ・・・別れのセリフだぞ」なんていった意味はこの時は理解できていなかった。

「お前・・・なんていった?」みたいな表情の道明寺の思いにも全く気が付いていない浅はかさ。

花沢類との婚約なんてますます言えない状態に陥ってることを思い知らされる。

落ち込む気持ちで西門さんを伴って会長の部屋をノックする。

「どうぞ」の返事にドアノブを回しそっと扉を開いた。

柔らかい日差しが差し込む部屋の窓際、丸いテーブルを挟んで会長と花沢類がのんきにチェスのコマを動かしてた。

昨日までなら、楽しそうですねで見つめられる1コマ。

道明寺に決別のセリフ投げかけて・・・

ついでに西門さんには事の次第をしゃべらされたこの状態・・・

私がこんなに落ち込んでいると言うのに、この二人・・・

なに仲良く呑気に遊んでるーーーーーーーー

なんだか一人バカみたいだ。

チェックメイトーーーーーーッ!」

会長のキングの動きを止めるナイトのコマを全部のコマが倒れる勢いで置いてやった。

「類の味方しなくても・・・」

私の鼻息の荒さと比例する不機嫌な態度に会長も言葉を途中で飲み込んだ。

「牧野チェス知ってるんだ。以外だね」

私の態度など気にしてないように花沢類はにっこりと天使の頬笑みを私に向けた。

『能ある鷹は爪を隠すよ』なんて・・・

普段なら照れ隠しに言ってるところだけど今日はそんな気分には全くなれない。

花沢類の笑顔も今は私の罪悪感を増長させるバーツにしかならないように感じてしまう。

その場を空気を感じとったのか私を素通りして

「失礼、西門総二郎です」と西門さんが会長に挨拶する。

そして花沢類に視線を向けると

「牧野と婚約したんだって?おめでとうて、一応言っとく」

なんて、皮肉たっぷりな態度を見せた。

-From 3-

「それじゃあ、俺もありがとうて、一応言っといたいほうがいい?」

涼しい顔して疑問符で返してきやがった。

類は牧野とは対照的に完全に冷静だ。

司なら絶対飛びかかってるぞ!

牧野との婚約のことで司のことが思い浮かばなかったなんて事は類にも絶対ないはずだ。

いつもポーカーフェース的無表情で感情をなかなか表に出さないから類は厄介なんだ。

牧野のことがからむとこいつも突然変異起こすことはあるからなおさらだ。

お前・・・何考えてる?みたいな視線を類に投げる。

「牧野、これ」

類が牧野に数枚の写真を手渡した。

おい!類!俺のことは無視かよ。

眼中にもはいってないのかのような類の態度に珍しく俺のこめかみにも青筋がうきだしそうだ。

ここで俺が切れるわけにはいかない・・・

お茶の精神を思い出せ!

ここで茶道の精神に立ち戻ろうなんて俺も進歩したもんだ。

チラッと俺も横からその写真を盗み見る。

なんだこの前までギャーギャー騒いでた週刊誌に載っていた写真じゃねーか。

「ヌッ・・・?」

俺と牧野・・・?

あきらと牧野のツーショット写真までもある!?

確かこの時期・・・

司は仕事の関係で「牧野のこと頼む」て言い残してNYに2週間ほど行ってた時期だ。

結構俺ら3人、真面目に司の言いつけ守って牧野を気にかけていたんだと思いだした。

「牧野の事調べている時に偶然撮った写真なんだって、川崎さんが渡してくれた」

俺に説明するかのように類が意味深な笑いを俺に送った。

牧野から写真をとりあげてまじまじと数枚の写真を眺める。

3枚ともどこから見ても彼女と彼氏が仲良くデート帰りみたいな感じにシャッターが押されている。

牧野は男だったら誰でも絶対に勘違いするぞ!みたいな笑顔を俺達に向けて写真に収まっている。

あきらなんて牧野と肩組んで歩いてやがる。

俺の場合は立ち止って牧野の顔を覗き込んでいるような感じだ。

見ようによったら今にもキスしそうな雰囲気だ。

確か・・・

この時・・・・て・・・・

「ギューーーーー」て、突然牧野の腹の虫がなりだして・・・

「相変わらず色気ねえ~」なんてからかっていた時じゃねえかーーーー。

全く甘い雰囲気には程遠い瞬間を、よくぞここまで綺麗に撮れるもんだと妙に感心する。

写真を見て気がついた。

牧野・・・

完全に無防備だ。

このままホテル連れ込まれても絶対こいつ土壇場まで気がつかずノホホンと付いて来そうだ。

牧野って自分が女だった認識あるのか?なんて思わず疑いたくなった。

警戒心というものが全く感じられない。

それとも・・・

俺らだからなのか?

司が牧野に嫉妬する気持ちがわかったような気がした。

写真に見入って考えている場合じゃなかった。

俺に写真をとられたままの状態で固まったままの牧野に写真を渡す。

写真を見つめたまま牧野の顔が紅葉から蒼白に変わった。

牧野の頭の中はこんな写真どうする!?みたいな感じで慌てふためいてるに違いない。

まあ司の目に触れないように処分するのが妥当だろう。

偶然とはいえ、なんでこんな写真を今頃なぜ渡す?

この写真がここにあるてことは・・・

あの週刊誌の写真をリークしたのって川崎て秘書が一枚かんでると言うことになる。

秘書が勝手に指示なしで動くとは考えられない。

桜井の会長の指示と言うのが一番濃厚だよな・・・。

先々のことを見とおしての策をうっていたというのが大筋じゃないかと気がついた。

この計画の根本は牧野が絶対引き受けることが前提だ。

牧野の人間性考えたら情で訴えたら何の問題もないだろう。

偶然、牧野が俺達と結構な間柄というのは思いもよらぬいい条件になったに違いない。

だからこんな計画進める気になったのか?

俺達3人の中じゃ派手に女性遊びしているあきらと俺よりも類との写真使った方がいいに決まってる。

牧野が類の彼女で婚約もまじかと書きたてた週刊誌の記事が思いのほか生きてくるじゃねえか。

この爺さん・・・

とんだ策士だと気がついた。

運が悪かったのは司だよな・・・。

もし司がNYなんか行っていなければ、週刊誌に掲載されたのはあいつの御希望通り牧野のとの二人の写真だったに違いない。

何の問題も起こらなかったはずだ。

あいつの事だ、この計画にも率先して参加しただろう。

なんでこんなことになったのか・・・

わざとトラブル背負い込んできてるんじゃねえか?なんて気分になって牧野の顔をまじまじと俺は見つめていた。

-From 4-

「クッソーーーーー!なんなんだ」

ひと暴れした司がクルッと俺を振り返った。

「あきら・・・俺、なんもやってねえぞ」

「俺があいつに睨まれる筋合いはねえ!」

司はこめかみに数本の青い血管浮立たせ頭から湯気が見えそうだ。

俺も司に睨まれる筋合いはない!

「あいつ・・・とっ捕まえて謝らせなきゃ気がすまね」

司・・・

目が血走ってやがる・・・

その形相で走り出したら牧野に行きつくまでにお前の方が捕獲されるぞ!

「司!落ち着け!」

俺の言葉なんか全く耳に入ってねえ。

こんな速い司見た事ねえって勢いで走っていきやがった。

慌てて俺も走り出す。

牧野を追いかけ総二郎が駆け出し、数分遅れで司がジェットで発射、慌てて俺は司を目指す。

どっかのテレビ企画のマラソン競争みたいじゃねえか。

走る順番も体力的にはあってるような気がするのはなぜだろう。

テレビカメラなんて設置されてないだろうな?

実は・・・

牧野に類、総二郎まで仕掛け人なんて・・・

あり得ねえよな・・・

びっくり!ドッキリカメラならその方がありがたいかもしれないが・・・

黒塗りの高級車に乗り込む総二郎と牧野が見えた。

無情にも司をおいてきぼりに車は静かに走りだす。

さすがの司も車と競争するのは諦めたようだ。

仁王立ちの状態で街中に消えていく車を睨んでいる。

あれだけ全力で走っても司の息は規則正しい調律を繰り返している。

それに比べ俺は「ゼェゼェ」言葉もまともに出てこない。

「そのうち・・・総二郎から・・・連絡来るだ・ろう・・からそれ・ま・で待て」

司の肩を支えにしないと倒れ込みそうだ。

化け物とは比べられねえよな、比べる相手間違えてたなんて思ってしまった。

「そんな待ってられるか!」

「あっ?」

こんな時のこいつの行動力は半端じゃないことを思いだした。

警視総監を動かして警察総動員てこともあり得る!

「司!騒ぎ過ぎて事をおおごとにするのだけは避けろ!」

「後で取り返しつかなくなるぞ!」

「まだ、そこまではしねえよ」

「そうか・・・まだ?」

一抹の不安を感じながらもホッと俺は胸をなでおろす。

「見たか?」

「ああ、覚えた」

「ちょっと待ってろ」

こんな時、司がなにを望んでいるかすぐにわかるなんて俺ぐらいのもんだ。

たまには感謝しろ!と心の中で叫びながら俺は携帯を取り出すと息を整えながらちょっと震える指で番号を押した。

「今言う車のナンバーの持ち主調べてすぐに連絡しろ。ナンバーは*****」

それだけ言って携帯を切る。

時間が経てば総二郎からも連絡がくるはずだ。

数分もしないうちに俺の携帯の着信音が鳴った。

携帯を俺から奪う様に司が取り上げる。

「車の持ち主は桜井物産の会長だとよ」

使い終わった携帯を司は俺にポンと投げて返した。

牧野に桜井・・・

ありえねえ繋がり。

司に会わないと宣言した牧野と、どうつながる?

俺の頭を疑問符が埋め尽くす。

司の方も同じ感じだろう。

司も腕を組んで顔をしかめて考えてやがる。

と、司は突然自分の携帯を取りだして電話をかけ始めた。

「おい!西田!すぐに桜井物産の会長のこと調べてくれ、速攻調べろ」

携帯を握りつぶしそうな勢いで会話をきった。

まあそんな流れだろうなと、俺もようやく落ち着ける。

「じゃあ行こうか」

「あっ?」

「どうせ、おまえんちで西田の連絡待ちだろう」

司は、わかってるじゃねえかみたいな感じで「フッ」と笑う。

「行くぞ!」

短めの命令形で俺を促しながら、司は風切る感じに歩きだした。

-From 5-

いったいこの写真なんなのよ!

花沢類との写真だけと思ったら、西門さんと美作さんまで!

この3人には偶然会ってただ送ってもらっただけなのに、これじゃあ、どう見ても二股通り越して三股じゃん。

3枚並べた写真が掲載されていたら・・・

『御曹司3人手玉に取る!』なんて私には全く無縁のようなタイトルが頭に浮かんだ。

ついでに道明寺の青筋ピクピクさせた不機嫌な顔も私の目の前に浮かんでくる。

「やばい!ヤバイ!殺されるーーーー」

思わず身体がブルッと震えた。

絶対こんなの道明寺に見せられない!

力いっぱいクシャクシャに丸めてスカートのポケットにねじ込んだ。

「その写真・・・データー残ってると思うよ」

ポケットにねじ込む私の手元を見て花沢類がクスと笑う。

「えっ」

振り返った私の顔があまりに間抜けすぎたのか西門さんまで「クスクス」笑いだした。

会長なんて高笑いだ。

今の状況・・・・

花沢類との婚約を考えれば、こんな写真たいしたことないと気がついた。

「プルルルル」

携帯の着信音が鳴り響く。

西門さんが携帯の着信名を見て「チェッ」と軽く舌打ちしたのが見えた。

だれ? ダレ? 誰?

私の不安が大きくなる。

西門さんの携帯取り上げて確認したい気分になった。

一瞬チラッと私に視線を送った西門さんはがボタンを押して携帯を耳に近づけた。

そして私から離れるように背中を向け部屋の隅に歩いて行く。

時々相槌を打つ仕草や話しこんでいる様子は分かるが、小声でぼそぼそ話す内容はほとんど私たちには聞こえない。

しばらくして西門さんが携帯を胸のポケットに入れながら私の側に戻ってきた。

美作さんからの電話だと西門さんが告げる。

ホッとしたのもつかの間、私はすぐに地獄に突き落とされた。

「牧野・・・ばれてる」

西門さんが気まずそうな感じで言ったのだ。

ばれ?

ばれて?

ばれたーーーー

いったい何がばれたーーーーーーーーーーーー

スローモーションで頭の中で同じ言葉が繰り返される。

「えっーーーーー」

「なんで?どうして?どこから?どこまで?」

思わず西門さんに噛みつく勢いで詰め寄ってしまった。

「俺がお前と会長の車に乗り込むとこあきらと司が二人で目撃したらしい」

「そこから簡単に足がついたってさ」

「まだ牧野と桜井の会長さんのつながりまでは行きついてないみたいだけど」

どうする?みたいな、西門さんの視線が私に突き刺さる。

「俺はなんも言ってねえからな」

西門さんがそう付け足したが、今さらそんなこと問題じゃなくなった。

「時間の問題だね」

他人事のような花沢類の言葉に、私はそばにあった椅子に吸い込まれるように座り込んでしまった。

「牧野、大丈夫か?」

大丈夫なはずないでしょう!て、眼で西門さんを思わず睨んで、「フッー」と大きなため息をついて、私は「ごめん」とつぶやき視線を床に落とした。

「なんか・・・対策ないかな?」かすかな期待で聞いてみた。

「「ない!」」速攻で二人から返事が返ってきた。

-From 6-

「道明寺様が牧野様にお会いしたいと御訪問されているのですが」

会長の部屋のドアがノックされ使用人が告げた。

あきらからの連絡からまだ30分も経っていない早さだ。

その間牧野は部屋中をグルグルと百面相で歩きまわっていた。

冬眠から覚めたクマみたいな状態の牧野の動きがピタッと止まった。

「ここに連れてこい」

今まで存在を忘れていた会長が口を開いた。

「会長ーーーーーーー私を殺す気ですかーーーー」

ギョッとして眼をこれ以上に開かないというくらい見開いたまま、ドアを閉めて出て行こうとする使用人に飛びつくような勢いで牧野は待ったをかけた。

「殺されはせんだろう」と会長はニヤリと笑う。

この人・・・

こんなの好きだもんな・・・。

自分のシナリオ通り事が進んでいくのを楽しんでいるのが分かる。

牧野や司それに俺達にしても会長の手の中で遊ばれてるようなものだ。

牧野がこの計画にOKする前から準備して運ばれたシナリオ・・・

俺達が太刀打ちでいるはずはない。

牧野をうるさい外野から守るため後見人になってくれと頼まれた時はすんなり俺も納得した。

「婚約してくれ」と会長に言われた時はさすがの俺も固まってしまった。

どうしてそこまでする必要があるのか聞いた俺に「結婚式まですれば完璧なんだが・・・」と澄ました顔の会長に、

思わず牧野がOKするならと返事を返していた。

まさか牧野がOKするとは思ってもいなかったけど・・・・

「全容は話したぞ」なんて言われて俺は強制的圧力で協力を余儀なくされる。

ここに司が来ることも予定通りと知ったら牧野はどんなリアクションするのだろう。

俺も怨まれるだろうな、なんて思ったら自然とため息が漏れた。

俺達の前に姿を現した司は牧野しか眼中にないという感じで一点集中で睨んでいる。

そばにあきらがいることだけが救いのように感じる。

「訳を聞こうか」

司らしい直球をいきなり牧野に投げてきた。

「桜井会長のお世話を頼まれて・・・住み込みしてる・・・・」

牧野は無駄なあがきを見せてもがいてる感じだ。

牧野・・・・

目が泳いでる・・・・

それじゃあ、司の猜疑心あおってるようなものだ。

「ほかにもいろいろあるんだけど・・・・」

「忘れた!」

忘れたい気持ちもわかるがそんな言い訳通じる相手じゃないだろう。

牧野・・・・

自分でどんどん墓穴掘っている。

「俺の聞いた話だと、桜井会長に孫が見つかって、それがなぜかお前にそっくりだてことだ!」

「ついでに誰かと婚約したてことも聞いたんだがな!」

耳を押さえて小さくなっていた牧野がますます小さくなった。

膝を抱え込むような座り込んでいる牧野から「すごいね」と震えてるような声が聞こえた。

だんだん牧野がかわいそうに思えてくる。

いっそ全部しゃべってしまおうか・・・

そんな気にさえなってきた。

「類!話してもらおうか」

牧野を見おろしたまま司が俺に振ってきた。

やっぱり・・・・そうくるか・・・。

「司の怒りを俺に向ければそれで済む」なんて、会長が言っていたがその通りの展開になってきた。

しゃくにさわるがどこまで会長のシナリオ通りなんだとフッと笑いが漏れる。

「話しは長くなるけど、大体のところは正解かな」

俺の言葉に憤慨して飛びかかってくる司が見えた。

第6話 Troublemaker 3 にお進みください

この作品終わりそうでなかなか終わらせてくれません。

会長の登場と類との婚約が話を長引かせています。

でもやっぱり発端は週刊誌に撮られた写真をみてすねる司なんですよね。

最初の書き出しから自分で首絞めていたみたいです(^_^;)