最初から始めよう

*

牧野が俺にキスをした。

唇がそっと触れあうだけの軽いキス。

熱い口づけも捨てがたいが、照れくさそうなあいつの笑顔見せられたらこれもやっぱり捨てがたい。

いきなりのフェイント。

抱きしめる前にするりと俺の腕から牧野が逃げて行った。

いつもは俺から牧野に有無を言わせないために奪うみたいなキスすること何気に多い。

こんなやさしいキスはひさしぶり。

それも牧野から・・・

これだけで俺のテンション最高潮!

夜まで持たねぇ・・・

そんな気分になってきた。

「早く連れてって」

照れくさそうにほほ笑んだままの牧野が俺を振り返る数メートル先。

焦るように数歩足を進める俺。

「連れていって・・・」

ある訳ないのに牧野が俺にウインクして誘ってる雰囲気が頭の中にぽかりと浮かぶ。

どこに連れて行ってもいいのかぁぁぁぁぁ

まだ昼前のこの時間そんなおいしいわけねえよな。

にやつきそうになる顔をブルッと振るった。

どこに行くんだっけ?

頭の中真っ白で、昨日のシュミレーションぽっかり穴に落ち込んでしまっている。

「まて・・・思い出すから・・・」

昨日見た雑誌思い出せ!

動物園は俺が嫌いだから却下。

水族館なら品川のエプソンアクアスタジアム八景島パラダイス。

池袋のサンシャイン水族館ここはプラネタリウムもあるから牧野の肩抱いて星空が見られる。

別に造り物の星を見なくても外国行って砂漠の満天の星眺める方がグッとムードある。

ラクダに乗って砂漠のど真ん中。

星の降るような済んだ夜空。

俺と牧野二人だけのなにもない世界。

どう考えてもこっちの方が演出完璧じゃないか。

絶対これだよなと納得してプラネタリウムに赤ペンでばってんつけた。

台場、豊洲ベイエリア天王洲アイル恵比寿ガーデンプレイス・・・

ここは夜のコースだ昼間は関係ない。

ホテル予約してないけど大丈夫か?

後で牧野に隠れて西田に電話して部屋の一つでも押さえさせておこう。

俺の頭の中・・・

昨日見た雑誌の記事の夜のデートスポットだけが浮かんでは消えていく。

行きつく先は決まってる。

思わず鼻血が出るかと思った。

昼間の予定はやっぱりスポリ抜け落ちて俺の考え完全に夜に移行中。

いっそ夕方の待ち合わせにするべきだったと思わず頭を抱えてしまった。

そんな俺見てキョトンとした顔をしてた牧野が「プッー」と吹き出した。

「昨日のお勉強成果なし?」

俺の腕に牧野が自分の腕を回して腕を組み悪戯っぽく下から俺の顔を覗き込む。

「どこが一番お前が喜ぶか考えていたんだ」

頬を膨らませ、すねたよう言ってしまった俺はまた焦る。

それ見て牧野が「ククク」とまた笑う。

「まずはショッピングなんて連れて行って」

「あっ、見るだけだからね。買い占めるようなことしないでよ」

「それのどこが楽しいんだ」

「道明寺といるから楽しんじゃない」

少し眉を釣り上げて俺にすね返すような表情を見せ、俺の腕に牧野がギュっとしがみつく。

やべぇ…。

不意打ちだ。

心臓バクバク言い出した。

でも・・・

これじゃあ今日の待ち合わせから牧野のペースじゃねえかぁ。

俺のペースはどこ行った?

最初からそんなもん見当たらない。

昨日の夜に戻って、牧野に電話するとこから始めてぇーーーーーッ!

まだデート始まっていません。

待ち合わせの状態で3篇書きあげてしまいました。

この調子だとデートが終わるまでいくつお話出来るでしょうか(^_^;)

飽きずにお付き合いしてもらえるとうれしいです