一緒にいれば
*ただ見るだけって、牧野に連れてこられた表参道ヒルズ。
普段なら店の入り口をCLOSESさせて自分達だけでゆっくりお買いものが定番だ。
それも滅多にない。
ほとんどは家の方に店の方から出向いてくるからな。
「道明寺の名前とか絶対出さないでよ」
さっきから買うなと全否定されてる気がしてきた。
買うつもりなければなんでこんなとこに来る必要あるのか俺には解からない。
腕組んだままうれしそうに俺を見上げる牧野見てたら、こいつがいいんならまあいいかなんて思いが俺の心の奥をくすぐる。
「普段ここまであんまり来ないから」
俺と組んでた腕を離し牧野は楽しそうに服を見る。
「どうして来ない?」
何気なく聞いてみた。
「やっぱり高いし、買わないし、だから見て楽しむの」
相変わらずくるくる変わる表情しながら、「これとおんなじようなの3000円で見た」と独り言か、俺に聞かせたいのか、解かんない感じでブツブツつぶやく。
そう言って牧野は見ていた服をたたんで元のところに戻す。
俺だったらいろいろ服並べて広げて見てそのまんまだぞ。
お前、店員に間違われるかも知んねぇぞ。
あまりに牧野の行動が丁寧過ぎておかしくなってきた。
それでもやっぱり見るだけがなぜ楽しいのか俺には解からない。
買うために品物見るから楽しんじゃないのか?
欲しいもの手に入れらないなんてストレスためるだけじゃねえのかよ。
牧野は見てるだけで飽きねえけどな。
それも俺のもんだと解かっているからこうして呑気にお前を眺めていられるんだ。
牧野が見ていた服の値札チラッとみた。
ゼロが4つ並んでた。
これが高いのか?安いじゃん。
牧野の金銭感覚解かんねぇ。
金銭感覚ないのはあんたの方と突っ込みいれられるの解かってるから黙っとく。
「買ってやろうか?」
「なんで?」
拒否の言葉が返ってくるかと思ったら疑問符投げ返してきやがった。
「なんでってなんだ?」
思わず俺も疑問符投げ返す。
「だから、誕生日でもないし、記念日でもないし、クリスマスは程遠いし、買ってもらう理由ないもん」
「理由なんていらねえだろう、俺がお前に買ってやろうと言ってるんだ」
「買ってもらう必要なし」
即答で拒否権発動しやがった。
「彼氏が彼女にプレゼントするのに理由がいるのかよっ」
思わずムッとする。
大体こいつは素直じゃないんだ。
いつもいつも自分がされることに対して理由を付けたがる。
俺がやりたいようには滅多にさせてくれない。
ここで喧嘩はまずい。
夜の計画逃げていく。
夜のお楽しみの為にここは俺が踏ん張るしかない。
グッと一息、怒の気分を飲み込んだ。
最近の俺は我慢強くなってる気がしてきた。
「お前の喜ぶ顔が見たいだけだ」
牧野の緊張していた頬の筋肉がフワッと緩んできた。
「だったら今日1日一緒にいれればそれだけでうれしい。ちゃんと付き合ってよ」
くすぐったくなるような笑顔を牧野が俺に見せる。
きっと俺・・・
めちゃ幸せなデレッとしたしまりのない顔してる。
そんな顔を牧野に見られたくなくて・・・
あいつの頭を丸抱えに胸に引き寄せる。
「金かかんねぇ女」
照れ隠しにあいつの耳元でぼそっと呟いた。
やっと午前中のデートコース開始です。
さてさてこの後の計画は?
司は無事エスコートして最終コーナーまでもつれ込むことが出来るのでしょうか?