楽しいはずが・・・

*

「もう・・・派手なアトラクションは勘弁」

泡を吹き出す1歩手前で牧野がつぶやいた。

ディナーの予約時間が午後7時。

帰えろうかと言いかけた牧野の手をギュっと握りしめる。

ここで牧野を帰すつもりが断然ない!

「ディナーの予約とってある。これまでキャンセルさせる気はないよな」

まだまだホテルの一泊お泊まりコースは伏せておく。

下心隠したまんまの状態に高鳴る心臓必死で隠す。

「さっきの挽回させてくれるよな」

ここは責めより頼み込む感じに囁いた。

言い返すことなく牧野が「解かった」とつぶやいた。

強気で押しすぎてもダメなこと結構学習してきているんだと心の中でガッツポーズを作ってしまう。

それじゃあ、のんびり時間つぶしと行きますか。

「観覧車なら大丈夫だろう」と牧野の腕をとる。

「それならOK」と牧野がほほ笑んだ。

観覧車・・・

数分間の個室状態、一っ気に気分も盛りあがてくる!

そんな期待に胸も膨らむ。

向かった先の観覧車乗り場。

多くの人が並んで搭乗する順番を待つ。

「なんなんなら貸し切る・・・」

慌てたように牧野が両手で俺の口ふさいで言葉を遮った。

「なにすんだ!」

「ダメ!普通に乗るの!」

眉を吊り上げた牧野に睨まれる。

悪戯見つけて叱られた子供みたいになってしまった。

並んで待ってなんとか順番回ってきた。

「すいません、相席でお願いします」

軽い感じに係員に促される。

相席てなんだ?

思わず牧野の顔を見つめる。

牧野は気にする様子もなくさっさと乗り込んだ。

並んで座った目の前にどう見ても俺達より年下、高校生のカップルが座ってた。

これって・・・個室じゃねぇじゃねえかぁぁぁぁぁ。

こんなの全然面白くねえ!

「降りるぞ」

「無理!動いてる」

牧野に止められ仕方なくドカッと腰を下ろす。

俺・・・完全にふくれ面になっていた。

動き出した途端目の前のガキのカップルがいちゃつきだす。

チュッチュッとキスをはじめて指をからめて二人の世界。

俺らの事は全然目に入ってねッーーー。

牧野はさっきからうつ向いてウンともスンともびくともしねえ。

俺らガキに負けてるぞ!

妙な対抗心がわき上がる。

「牧野・・牧野!」

牧野の肩を抱くように耳元で名前を呼んでみた。

相変わらず下向いたまま「なな・・・なに」焦る様に蚊の泣くような牧野の声が返ってくる。

「俺らガキに負けてるぞ」

「競争なんかしてない!」

牧野がまん丸眼玉シカっと開いてようやくなんとか顔を上げた。

右手であごを持ち上げ逃げないように左手でガバッと頭を掴んで貪るようにキスしてやった。

牧野が両手でバンバン肩を叩いて抵抗を見せる。

どう見ても襲って無理やりキスしてる体勢にしか見えなくもない。

この際もがく牧野なんて関係ない!

俺のプライドの問題だ。

ガシッと両手を捕まえてシカっと牧野の動きを阻む。

唇を離した途端に非難めいた涙目で牧野に睨みつけられた。

観覧車がついてドアが開いた瞬間に俺をバックでポカッと殴って牧野が飛び出した。

俺・・・

ここからどう挽回する?

クスクス笑うガキのカップル睨みつけて黙らせると走り出して牧野を追いかけた。

今回もmebaru様のコメントをヒントに書いてみました。

この後挽回できるかな(^_^;)