頬にキスして・・・そして抱きしめて

*

「おい待て!」

観覧車を一人飛び降りてかけ出すあいつの背中を追う。

いったい俺にどんだけ追いかけられれば牧野は気が済むのだろう。

最初は高校の時だろう・・・

あん時は途中で姉ちゃんが現れてぶんなぐられた。

こいつが俺に別れを告げて漁村に姿かくした時は、類のヘリで追いかけた。

それに雪山遭難ではスノーモービルだったよな。

最近は・・・

喧嘩して!喧嘩して!牧野怒らせて・・・

そして俺が追いかける。

このパターン・・・・

今日までやる羽目になるとは思ってもいなかった。

人込みをすり抜けるように牧野を見失わないように必死で追いかけた。

こんな人ごみでもあいつだけ光って見えていて・・・見失わない自信がある!

俺・・・

どれだけあいつに惚れてるんだと苦笑した。

肩が上がっり出したころ牧野に追いつき右腕をつかみ取った。

「もう!なに考えてんのよ!年下に煽られて、争うみたいなことをして!」

振り向く気配を見せずに俺に背中を見せたままの牧野は怒りの本気モード全開だと言わんばかりだ。

さっき乗っていた観覧車の全貌が美しいイルミネーションに彩られて見える。

歩く人並みはカップルが多く二人の影を映し出しては消えていく。

誰もかれも自分たち以外は存在しないと言うような無関心の空間を楽しんでいるようだ。

「だから貸し切りにしとけばよかったんだ」

強引に力いっぱい引っ張って牧野の向きをクルッと俺の方へ変えてやった。

「私、本気で怒ってるんだからねッ、無理やりあんなことして・・・」

さっきバックで俺が殴られて帳消しじゃねえのかよ。

そうでなければただの殴られ損になるじゃないか。

いつも人前では俺に触れられるのいやがってるの知ってるのに、無性に牧野に触れたくなるのはどうにも止めようがない。

「あんな事てこれか?」

牧野の唇をめがけてチュッと軽めのキスを落とす。

しっかり牧野が逃げ出さないように腰に腕を絡めて対処の姿勢をとるのは怠らない。

「そんなもんじゃんかったでしょう!息も出来なかったんだから」

頬を膨らませたこいつの怒った顔も今日はやけにかわいく見えてしょうがない。

「最低!」

「バカ!」

「自己中!わがまま!」

「横暴!強引!女ったらし!」

俺につく代名詞を全部いい並べるつもりじゃねえだろうな。

どうせならかっこいい!美男子!っていうのも入れといてくれ。

「なんで俺が女ったらしだ!総二郎と一緒にするな」

今度は耳まで真っ赤な顔に牧野がゆで上がっていた。

でも・・・俺は女はたらした覚えはない!

お前以外の女に視線移した記憶も一切ない!

こんな事お前にしか自慢にならないのが情けねえ。

俺のたらしはお前にしか通じねえてところだろうけど・・・

「・・・・」

「ん?」

そう言うことかと気がついた。

牧野が俺にたらしこまれてる!そんな意味だよな?

思わずニンマリ顔がゆるんでしまう。

牧野の頬にそっと両手を添えて好き勝手にいい終えたあいつの瞳に視線を合わせる。

「あんまり見ないで・・・」

「なんで?」

「見られると困る・・・」

「なにが?」

「照れる・・・」

道明寺の愛しさ満載盛り込んだやさしいまなざしが私だけに向けられるって知ってるから・・・

どうしようもなくなって・・・

心臓バクバク飛び出しそうになっている。

そんな言葉を道明寺に素直に言えるほど私は大人じゃなくて・・・

ごくっと全部飲み込んだ。

赤くなったと思ったらなにか言いたそうな表情になって、ドギマギしたと思ったらせつなそうな色を瞳に浮かべて、牧野の喉元がゴクンとゆっくり上下した。

「お前・・・・俺を煽ってねぇか」

「ククク」と喉の奥から笑いが漏れる。

牧野の髪に指をからませ抱き寄せるとそっと唇を頬に触れてみた。

冷たい頬の感触もなまめかしく一つ上に鼓動の高鳴りを押し上げる。

俺にされるがままの牧野に気を良くして唇を耳の後ろの柔らかな肌に移動させた。

「ディナー・・・予約してあるから、付き合え」

耳元で囁いてそしてまたやさしくそっと牧野の身体を抱きしめた。

なんとかディナーまでこぎつけました。

で・・・この後は・・・

思い通りに事は進むのでしょうか?

どうしようかな♪