幸福のかたち

*

幸福感て・・・

人それぞれで・・・

牧野が笑って、怒って、泣いて、楽しそうに俺にほほ笑んで・・・

それが全部愛しくて・・・

見つめる俺は幸せで・・・

すべて言葉でうまく伝えることが出来たならきっと恋なんて簡単なんだろと思わずにいられない。

牧野と出会う前の・・・

数年前には考えられなかったことだ。

何もかも自分だけが正しくて・・・

自分に出来ないものはない。

手に入れられないものはない。

そう思い上がってた。

今・・・

ただ一つ手に入れたいものがそこにある。

それを手に入れるために、俺・・・

こんなに夢中になって、焦って、戸惑って、自分を見失っていた。

ディナーの後、窓辺に並んで一緒に夜景を眺める。

「あの観覧車、道明寺最低だった」

口をとがらせながらすねたように言って、その後、照れたように牧野がほほ笑んだ。

「仕方ねえじゃん、年下に負けるわけにはいかねえだろう」

牧野の照れ笑いに感化される様にこっちにも照れが伝わってくる。

牧野のほっそりした肩に腕を回し、「もう少し一緒にいたい」と本音を言った。

肩に回した俺の手をあいつの手のひらがやさしく包んで「ウン」と小さく頷いた。

それだけで・・・

ただそれだけの事なのに・・・

俺の体中に熱い思いがあふれ出す。

恋しくて・・・

愛しくて・・・

抱きしめたくてしょうがなくなる。

牧野の潤んだような瞳を見た瞬間に歯止めがなくなり抱きしめた。

「誰か・・・きたら・・困る」

俺の腕の中で牧野が小さくつぶやく。

「二人っきりになれるとこ知ってる。違う角度からの夜景も見れるぞ」

思いきって言ってみた。

心臓が悲鳴上げそうなくらいに高鳴って、血液が全身を逆流する。

「もしかして・・・これ?」

いつの間にか俺のジャケットのポケットから名刺サイズの封筒が牧野の手に握られていた。

「知ってた・・・のか」

思わぬ牧野の反撃に、言葉がうまく浮かんで出てこない。

過ちにも似た戸惑いが俺を押しつぶす様に押し寄せてくる。

「何となく・・・そんな気がしてたから・・・」

「道明寺・・・すごく挙動不審だったし」

ケラケラ牧野が笑い声を上げた。

「クソッ、もっとムードよく誘うつもりだったのに」

牧野の笑いに助けられ強気な自分を取り戻す。

「ダメか?」

もう一度牧野を抱きしめる。

俺の耳元でクスクスと牧野が笑って「いいよ」と甘く囁いた。

先走る気持ちをグッと押さえてレストランを後にする。

廊下に響く靴音が俺の心臓の音に重なってホテル中に響き渡ってるんじゃないかと思えてきた。

カードキーを差し込んで部屋の中に一歩踏み入れる。

「わー広い!スイートルームて初めて。夜景もきれいだよ」

牧野が俺を突き飛ばす様な勢いで部屋中を歩き回る。

あいつは必要以上にはしゃいでころころ笑ってた。

「牧野、はしゃぎすぎ」

後ろから牧野を抱きしめてうなじにキスを落とす。

俺の胸の中に牧野の華奢な身体がスッポリとはまり込む。

「あっ・・・これでも緊張してるから・・・気づけ!鈍感男」

さっき飲んだワインの酔いのせいか、牧野の眼の縁がちょっと赤くなって艶っぽく俺の心を乱してくる。

お前の言葉・・・

すごく甘く俺を誘ってるようにしか聞こえないんだけど・・・

こいつにはそんな気さらさらないだろうけど。

どっちが鈍感なんだ。

気づけ!こいつ!

返事の代わりに牧野の顎を持ち上げて唇をふさぐ。

キスの密度はすぐに濃くなりさらに強く牧野を抱きしめた。

どんなに抱きしめても、どんなにキスしても足りないくらい愛しくて・・・

最初から抑制を欠いたキスはすべてを包み込むほどに甘くなる。

そして・・・

全てを奪うほどに激しくて深く絡んでいく。

気の遠くなるような狂おしいキスを続けながら牧野のブラウスのボタンをそっと外し、薄いタンクトップの布の上から

柔らかいふくらみを俺の手のひらがそっと包み込んだ。

俺にされるがままの牧野に、なにかの呪縛から解放されたように俺の動きが大胆になる。

牧野の胸元に唇を移動させ、片方の手を腰の先に移動させる。

そのまま牧野を抱きあげて外の光が照らしこむキングサイズのベットに運んで重なるように二人倒れ込んだ。

暗がりの中、観念したように愛しい彼女は俺の下で声を小さくたてた。

この夜・・・

俺はこの世で一番大事なものを手に入れた。

これにてこの短編シリーズ完結です。

なんとか一安心。

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今度の短編はどんなのでいきましょか?

まだ未定です。

拍手コメント返礼

nanakiti様

拍手ありがとうございます。

ドキドキ、おもしろかったと感想いただけて私もうれしいで~す。