第1話 100万回のキスをしよう! 1
*-From 1-
「これからF4プロディースの結婚式!」西門さんと美作さんが満足げに口をそろえた。
「最高の二人には、最高の結婚式を挙げてもらわないとな」そう言って、ほほ笑んだ西門さん。
パパと腕を組んで歩いたバージンロード。
白いタキシードを着た道明寺の元へゆっくりと歩く。
紙吹雪が一面に舞って、みんなの「おめでとう」がこだましていた。
道明寺の腕をとって二人並んで神父の前に立つ。
不意に周りの電球が暗くなった。
ここでトラブルなんて私たちらしいかもなんて一瞬クスと笑いが私の口元に浮かぶ。
周りが明るくなると私達の目の前に神父姿の花沢類がにっこりほほ笑んで立っていた。
道明寺と二人あっけにとられた。
新郎新婦にはあるまじき表情をしていたはずだ。
「二人の誓いは、俺がきちんと聞くべきじゃないかなあと思ってさ」
穏やかな表情だけど花沢類にしては珍しく悪戯っぽく笑顔を作る。
花沢類の前で結婚の誓いなんて照れくさい感じがした。
でも・・・
幸せな思いがあふれ出て・・・
みんなのやさしさが全身にしみ込んで・・・
泣きそうになるのを必死に我慢した。
「誓いのキスを」
花沢類の言葉に道明寺と二人向き合った。
こぼれるような笑顔を道明寺が私に向ける。
微笑み返す私の腰に道明寺が手を回してグッと引き寄せる。
二人引きあう様に唇を重ね合う。
道明寺が私の右頬に手のひらを添えて、もっと深くやさしい感覚を探るように触れ合う唇の角度を変えた。
唇をふれ合わせながら道明寺が強く私を抱きしめる。
唇を離した後は二人照れたようにほほ笑み合ってコツンと額をくっつけ合った。
両腕で私を軽く抱きかえた道明寺が私にキスをせがむ仕草を見せる。
クルクルくせ毛に指をからませてこぼれる笑顔のままについばむような軽いキスを道明寺の口元に落としてた。
「いい結婚式だったよな」
「突然でびっくりしたけどね」
結婚式からずっと顔が緩みっぱなしの道明寺に相乗するようににっこりほほ笑む。
用意されたホテルのスィートルーム。
最後までぬかりなくしっかり準備されていた。
タキシードとウエディングドレスのままの状態で二人ソファーに並んで腰をおろしてる。
「なんかすごいよね、恵比寿ガーデンプレスで結婚式あげるなんて」
「昨日までの無人島生活嘘みたい」
サバイバル生活していたのが嘘みたいな展開。
さっきまでよれよれの格好をしていたのだから・・・
「どうせならお肌の手入れした後にウエディングドレス着たかったな」
つぶやくように本音が思わずフッと飛び出した。
たいして変わり映えしなくても最高の状態で花嫁姿になりたいと思うのは当然のことと思えたから・・・
どのくらいあの島にいたか解かんないけど、海風にさらされて日の光に照らされて結構ぼろぼろの状態になっていたはずだ。
これでもちょっとは人並みの肌の手入れはしてたのだ。
「たいして変わんないだろうが」
女ごころに全く無関心の鈍感男が軽い調子で言い放つ。
「あっーひどい」
頬を軽く膨らませるがすぐに「クスクス」笑いが二人こみ上げた。
「ねえ?私達着替えあるんだっけ?道明寺はまだましだけど明日もこのままだったら私どうしよう」
少し困惑気味な表情を道明寺に見せる。
「あいつらの事だ、しっかりと準備してあるんじゃねぇ」
道明寺がクローゼットを視線で示す。
道明寺の考え通りクローゼットには何着分かの洋服がしっかりそろえて置いてあった。
いったい何日この部屋いると思って準備してあるのだろう。
「ねえ、この部屋に私達どのくらい押し込めるつもりで準備したのかな?」
そう言って道明寺を振り返る。
「飽きるまでいていいんじゃねぇ」
ニヤリと道明寺が笑いを浮かべる。
「へぇ~私といて飽きるんだ」
いじわるっぽく言ってやる。
「飽きるはずねえじゃん」
焦る道明寺がおかしくて「クスクス」笑いがこみ上げた。
「考えてみたら服なんて関係ないんじゃねえか」
ソファから立ち上がった道明寺がゆっくり私に歩み寄る。
「脱いだら朝まで服なんて着てらんねぇだろうしな」
悪戯ぽくほほ笑んだ道明寺が仕返しだと言う態度で必要以上に力いっぱい私を抱きしめて唇にキスをした。
From 2-
「ねえ、私・・・今日から道明寺のうちに住むのかな?」
ベットの中で昨日の余韻に酔いしれる俺の腕の中で色気なし100%の声がした。
新婚ほやほや最初に迎えた朝の一言がこれって・・・
味気なくねえか?
朝まで何回愛し合ったか思いださせてやろうか?
そんな気分で上半身を起こして牧野に覆いかぶさった。
「ちょっ・・・ちょっと道明寺!私の話聞いてるの?」
「聞いてねぇ」
まだしゃべりたそうな口をふさぐ。
牧野の息苦しそうな表情に仕方ないから唇を離した。
「もう10時過ぎてるよ」
「部屋にこのまま籠っていても誰も邪魔しには来ねえよ」
俺の体重半分乗せる感じで抱き締める。
相変わらず関係ない言葉しかこいつの口からは出てこない。
もっと・・・こう・・・俺が照れるような、喜ぶ言葉は聞けないのだろうか。
これからずーと一緒だね・・・とか。
道明寺と結婚できて幸せ・・・とか
愛してる・・・とか。
今日はベットから出たくない・・・とか。
これまで全然聞いてねぇ。
考えてる俺の方が真っ赤になってきそうになった。
「真面目に返事してよね」
牧野からはふくれっ面が返ってきた。
「俺の家はこれからずーとお前の家になるんだろうが、一緒に住まなくてどうする」
「そんな意味じゃなくて、ほら、私の荷物なんて何にも運んでないし・・・・」
「たいしてもってくるもんねえだろう。必要なのは買えばいい訳だし」
「まあその辺ぬかりなくみんなやってくれてるんじゃないか。まずはここ引き払って帰ってから考えればいい」
前髪の合間から見える額に「チュッ」とキスを落とす。
「ところでお前、いつまで俺の事道明寺て呼ぶつもりなんだ?お前も道明寺だろうが」
考えてみたら俺たち出会ってから今でなんで名字で呼びあっていたんだろう。
馬鹿みたいにおかしく、くすぐったい笑いがこみ上げる。
「あっ・・・そうか・・・そうだね・・・そうだよね」
恥ずかしそうにシーツを引っ張って顔半分隠し出す。
その表情にギュッと俺の心臓半分掴まれた。
「俺の名前呼んでみて」
「今?」
「いま」
「つ・か・さ・・・?」
「聞こえねえ」
「つかさ」
耳元で小さく囁いて牧野はシーツの中に顔全部すっぽり押し込んだ。
「顔見えねぇ」
無理やり剥いだシーツの下、照れくさそうに笑ってる牧野の顔が俺の目に飛び込んだ。
俺の心臓全部わしづかみに持って行かれた。
「もう限界。離せねえ。つくし愛してる」
初めて俺も牧野の事を名前で呼んだ。
その照れくささは牧野に負けるはずはなく・・・
「ちょっと・・・ヤダ・・・」
自分の照れくささを誤魔化すように消え入りそうな声で答える牧野の唇をそっと俺の唇で包み込む。
「もう・・・無理だって・・・」
かすれるように漏れるつくしの少し開いた唇から舌先を滑り込ませた。
甘くしびれるような求めあう感覚に酔いしれる。
今まで幾度も繰り返した行為のはずなのに未だに牧野が欲しくて、欲しくておかしくなりそうだ。
胸の蕾に唇を這わせて、それをそっと含んだ。
牧野の口元から時折漏れる音色が欲求の原始的音色に変ってきて、合わせるように俺の動きが増長されていく。
心臓の鼓動が動くたびに切ないくらい苦しそうにつくしの名前を繰り返す。
二人の体温が混ざりあいベットの中に暖かい空気が充満する頃、俺は自分自身の高まりを一気に深くつくしの中に沈みこませた。
本能のまま二人抱き合い溶け合って、シーツの波にのまれる様に堕ちていった。
‐From 3-
夕方近く道明寺の屋敷にたどり着く。
二人並んで足を踏み入れたエントランス。
みんなの「お帰りなさいませ、おめでとうございます」の声に迎えられる。
ここで今日から暮すなんて、いきなり180度の方向転換。
心の準備がまだ不十分。
一度我が家に帰って思い切り寝ころびたいと思ってもしょうがない。
今日からはこっちが我が家だと思いこむにはジェットコースターで月まで行くより難しいかも。
昨日から頬を緩みぱなしでご機嫌の気分上々の道明寺にそんな私の気持ちなんか推し量れるはずはない。
満面の笑みでみんなの祝福にこたえていた。
「お待ちしていました」
西田さんの出迎えに道明寺の顔が引き締まる。
「もう仕事の話しじゃねえだろうな?」
不機嫌そうに西田さんを道明寺が見る。
「それもありますが、まずはこれを」
道明寺の視線をスルーして西田さんがA4サイズの茶封筒を私に差し出した。
はてなマークのままその封筒を受け取り確認する。
「えっ!卒業証書?私の?なんで?」
「後期の試験受けてないんですけど・・・」
試験受けてないから留年確定で・・・
卒業は出来ないはずで・・・
疑問符いっぱい貼りつけた顔で西田さんを見つめた。
「坊ちゃんの時よりすんなり進みました」
「在学中に司法試験に合格したことも考慮されて、教授達もすんなり単位を認めてくれましたから」
「久しぶりに真面目に勉学に励む学生に会ったと感激していた教授もいましたからね」
「坊ちゃんとは大違いで・・・」
皮肉たっぷりに道明寺をチラッと見て西田さんが片唇を少し上げて笑みを作る。
「卒業おめでとうございます」
西田さんに抱きつきたくなる衝動をグッと押さえる。
「ありがとうございます。真面目にしていたご褒美を神様がくれたんだ」
思わずはしゃぐように言ってしまってた。
「ご褒美って!俺と結婚出来た事じゃねえのかよ」
道明寺のご機嫌だった顔にムッとした表情が浮かんだ。
「結婚がご褒美かどうか解かんないし・・・試練かもしれいしね」
いたづらっぽく言って道明寺の顔を覗き込む。
「てめぇ」
道明寺の腕が私の首を挟んでた。
「キャッ」
人目にはじゃれあいにしか見えない雰囲気に、「コホン」と一つ西田さんの咳払い。
道明寺の腕が私の首から外されて、白けた雰囲気に変わってた。
周りではクスクス笑い声が漏れていて・・・
その場から立ち去りたい恥ずかしい気持ちが頭をもたげ出す。
「ご実家の方から荷物も運びこんでいますので後でご確認をお願いします」
「それとこちらが留守中に届いた郵便物です」
私の恥ずかしさなど全く関知してない雰囲気で西田さんが事務的な仕草をとる。
私に届く郵便物などたいして重要なものはないはずだ。
西田さんから受け取って何気なく確認してみた。
ほとんどがダイレクトメール。
道明寺が私との婚約を発表した後どれだけ不必要な郵便物が届いたことかと思いだした。
その中にいかにも重要書類、役所から?みたいな封筒が目についた。
後の郵便物を道明寺に押し付け中身を確認する。
それは司法修習生としての研修を知らせるものだった。
「あのね・・・」
ゴクンと唾を飲み込む
「私・・・ここで一緒に住めないかも・・・」
「司法研修所に行かないといけなくなったみたい」
なに言ってるのか解かんねーぞみたいな顔した道明寺が硬直したまま私を見下ろしていた。
100万回のキスをしよう! 2 へ続きます
注)今回の設定はファイナル前夜祭のスペシャルで放映されたお話を元にしてます。
つくしが司法試験現役合格(旧司法試験)を設定に書いています。
新司法試験だと大学院まで行かないといけないみたいですし、話がややこしくなりそうなので(^_^;)
司法試験については詳しくは知りませんので大まかな設定です。
間違いがあっても見逃してくださいませ~
結婚してすぐ別居なんてかわいそうだけど面白そうな予感がして・・・
幸せの絶頂からズドンと落としたらどうなるんでしょうね司坊ちゃん
*キリ番リクエストでかーぴ様にファイナルのその後の続きのお話の希望をいただきまして書き始めた作品第1弾です。
拍手コメント返礼
まちゃこ 様
某お笑いコンビの「あま~い」
懐かしいなぁ~。
私の頭の中では元気に転換した真央潤が動き回っています。
数年後の花男本当にやって欲しいですよね。