いくつもの嘘を重ねても 19

「おい、牧野に何をした」

ぼんやりとした頭の中に聞こえる声。

道明寺・・・

待っていてっていたのに・・・

来ちゃったんだ。

道明寺の性格じゃ無理だよね。

どうするのよ。

でも、助けに来てくれたんだ。

昔、ぼこぼこに殴られた道明寺に抱き締められたことあったよね。

桜子に騙された、あの時。

まさか道明寺が助けに来てくれるなんて思わなくて・・・

乱暴な道明寺が殴られるまま殴られて・・・

私を守ってくれたことを思い出す。

私・・・記憶が戻ってきてる?

あともう少し・・・だ。

「道明寺・・・」

テーブルに顔をうつぶせの牧野を通り越して錦織が俺を睨む。

「どうするつもりだって聞いてるんだ」

俺の方がムカついてんだよ。

なかなか戻らない牧野を探して階段を下りた。

わずかに開いたドアから漏れる部屋の明かり。

呑気に錦織と対面してティーカップに口をつける牧野が見えた。

こんな時になにやってんだか。

さっさと2階に戻るもんじゃねェのか?

ヘリから降ろした梯子を上ればすぐにこんなところからは連れ出せたはずだ。

ヘリに乗った後でプロぺラの騒音に気が付いても間に合わないだろうしな。

牧野の言葉にうなずいた俺のミス。

クスリでも飲まされたように牧野の身体が力を無くす。

「どうやってここに?」

「牧野が部屋に入れてくれたんだから不法侵入じゃねぇからな」

大体不法侵入より誘拐の方が罪が重いぞ。

「牧野は連れて帰る。文句はねェよな」

凄みを利かせた声。

もう、一秒もここに牧野を置いておけるわけがない。

力づくでも連れて帰る。

牧野が俺の前から消えた日々。

不安と苦悩に押しつぶされた心。

今そのすべてが怒りとなって錦織、ただ一人に向けられてる。

こいつに情をかける必要なんてどこにもない。

昼間止めに入った牧野の意識がないのは俺には有利。

今度は錦織を庇うものはいない。

身動きもせず声も発せずただ俺を見つめてる錦織。

「牧野、帰るぞ」

牧野の身体を両手で抱き上げて椅子から離した。

だらりと下がる頭を持ち上げるように身体を揺らす。

どれだけ強力な薬で眠らされているのか。

タラリと下がった腕がゆっくりと俺の首に巻きつくように動く。

「牧野・・・」

頬に唇が触れる。

腕にかかる牧野の重みと身体の温もり。

ようやく、取り戻せたと感情がはしゃぐ。

まだここは敵地だ。

気を抜くな。

「妻が、生き返った気がしたんだ」

力が抜けるように椅子に腰を落とした錦織。

牧野がいなくなって感じた脱力感と喪失感。

それを見た目が似てるだけで埋められるとは思わない。

もし・・・

おれが、牧野にそっくりな奴を見つけても心は動かないって思う。

真直ぐ俺を見つめる意志の強い輝きを秘める瞳。

最初から媚びることなく俺に遠慮なく突っかかって来た初めてのやつ。

純で、スレれてなくて、頑固でどうしようもなくかわいげない愛しいやつ。

怒った声で、拗ねた声で、はにかんだ声で、「道明寺」と俺を呼ぶ声。

牧野以外に俺を独占できる者は二人といない。

牧野は牧野だけで、唯一無二の存在なのだから。

「牧野をさらった理由にはなんねェだろう」

バタバタと部屋に駆けつけるいくつもの足音。

異変に気が付いた警備がやっと登場。

「どけ!」

壁が怒号を反射して震える。

強張った警備の顔は俺が誰だか知ってるように躊躇して錦織を見つめる。

「何でもない・・・」

錦織のため息の混じった声が小さく口もとから漏れた。

拍手コメント返礼

ことり様

楓さんに西田さんサイドのお話かぁ~。

確かに書きたい気は有りますね。

何処かでお届けできればいいなぁ。

Gods&Death 様

本当に暑いですよね。

田植えは無事に終わったでしょうか?

旦那の実家も無事に田植えは終わってました。

嫁いでから一度もお米の生産には関わっていないずぼらな嫁をしてます。(^_^;)

司はこのままかっこよくいけるかなぁ~。

まい2 様

「妻が生き返った気が」なんて言ってもねぇ~。

司は同情するどころかキレちゃいそうですけどね。

同情しそうなつくしちゃんは夢の中だしなぁ。(笑)

F3登場!

司君の活躍の前?後?にするかで迷ってます。

あずきまめ様

少しづつ記憶戻ってきてますね。

どこで全部記憶がつながるのか!

そこを考えてドキドキしてます(笑)

そこが山場と勝手に考えてます。

うんうん♪

無事帰らせたい。

そうしたらすぐにお話をENDに持って行けちゃう♪

やなぎ様

惚れなおさせたいつくしちゃんは寝ちゃってますけどね。(^_^;)

憶えてないと言われたら、記憶がないと言われた時より司君ショックだったりしてね。

まめすけ様

せつなかった場面も終わりいよいよラブラブ突入?

いえいえもうちょっと司君に頑張ってもらいましょうよ♪

あっ~

悪魔の囁きが聞こえるんです。(笑)

いの様

助けてくれるのはいつも花沢類じゃ・・・

ピンチの時の花沢類♪

類君はなにげに助けてるけど司は身体を張って助けてるかな。

記憶を取り戻してもつくしちゃん省吾さんを許しちゃうでしょうね。

それにキレる司。

そこからまた言い合いのケンカになったら・・・

このお話は甘くは終わらないかもしれませんね。