第10話 Must be you will love me 7

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-From 1-

「てっ・・・」

「病人なんだからちょっとはやさしくしろ」

「これ以上やさしくなんて出来ない」

牧野はベットの端で枕を抱えて完全な警戒態勢に身構えている。

「別に嫌がることしてねえだろうが」

「昨日からいろいろやってるじゃない」

唇をツンと尖らせて上目づかいの中に非難めいた色が浮かび上がる。

タチの悪い瞳で見つめるな。

負けそうになっちまう。

「なにやったっけ?」

「覚えてねぇ」

とぼけて見せるのは俺の見栄、虚栄心。

覚えがないのは嘘だけど。

熱の下がった牧野に触りまくりで、強引にキスもした。

風邪がうつって熱出して、口移しに水をねだったこともしっかり覚えている。

それだけでは足りねぇーーーッ!っていうのが俺の本音。

ゆっくり・・・

そっと・・・

ベットの端の牧野に身体を寄せる。

「キャー」

ベットから転がり落ちそうになるすんでのところで牧野の身体を腕でつかんで支え上げた。

ドカッとベット中央に牧野を組みしく体制。

いいんじゃねぇ。

順調だ。

「・・・手が・・・」

「あっ?」

「手が・・・胸にあたってるんだけど・・・」

「触ってるんだから当り前だろう」

スッポリと手の中に収まった胸に指の動きも大胆になる。

「今は、ヤ・・・ダ・・・」

うるさそうな唇を塞ぐ。

キスだけじゃ物足りない

会えない時間はさびしくて離れた分だけ牧野を思う気持ちは膨張する。

抱きしめた瞬間からお前を離したくないって一人占めしたい気持ちは止めようもなくあふれ出す。

自分のものだと確かめたい思いは理屈じゃなく本能だ。

好きだとか・・・

愛してるとか・・・

離さないとか・・・

ありふれた言葉の中に紡ぐべき言葉は見つからない。

どれだけ一緒にいても・・・

抱き合っても・・・

満足できずにまた欲したくなる思いが泉のように湧き上がる。

止めようがない。

どんなにお前が大切で愛しいと思ってるとか・・・

自分だけのものにしたいと思ってるのか・・・

自分の心の内を全て込めて、牧野の唇を覆い尽くす。

離した唇の先から苦しげに吐息が漏れた。

「本当に、嫌か?」

時折見せる牧野の拒む動きに俺の心が躊躇する。

「・・・まだ・・・風邪・・・治ってない・・・」

強情な言葉とは裏腹に身体を熱を帯びだして、いいとしか聞こえない牧野の反応。

強気な自分を取り戻すには十分すぎる。

「我慢は身体に良くない」

自分に言ったのか・・・

牧野に言い聞かせているのか・・・・

はだけた胸元に顔をうずめる。

「風邪・・・ひどくなっちゃうよ」

「汗かけば治ると言うぞ」

「意味が違う」

「熱が出れば一緒に寝てればいいだけだ」

「何の問題もないだろう」

「それじゃ、いつまでたっても治らない」

照れたようにクスっと、ほほ笑む牧野の唇に強く吸いついた。

舌を絡め取る感覚に鼓動の動きは激しさを増す。

熱を帯びて見つめ合う瞳に愛しさがあふれ出す。

欲望は俺の身体をゆっくりと否応なく支配し始めていた。

「お前の身体で中で温まりたい」

耳元でそう囁いた。

 

 

-From 2-

結局・・・

抵抗なんかできなくて・・・

されるがまま、流されるままに受け入れていた。

「俺の全部をお前にやる」って、耳元で響く甘い声が狂おしい。

触れ合ってる肌のぬくもりも媚薬となって躰の自由を奪っていく。

耐えようがなかった。

熱・・・

大丈夫か?

「スースー」と寝息をたてている道明寺の顔を覗き込む。

手のひらをそっと額にあてた。

「熱なんてねぇよ」

私の手首を邪魔だとばかりにつかまれる。

「お前はどうだ?」

つかまれた手首ごと身体を反回転させてベットの上に抑え込まれていた。

私のおでこに道明寺の柔らかい髪の感触が触れる。

「下がったな」

「汗かけば治る。俺の言った通りだ」

「・・・だから・・・意味が違うって」

「若いから無理が利くんだってば」

「俺は無理してねぇし」

「お前も無理じゃなかったろう」

顔を近づけたままの唇が触れ合いそうな距離。

重なる吐息に昨夜の余熱がまだ体内に残っていることを思い知らされる。

「・・・それは・・・そうだけど・・・」

こんな時の道明寺はやたらとねちっこい。

私が照れて赤くなって答えられなくなるのを楽しんでいる。

「なに赤くなってる」

意地悪だ。

遊ばれている感じにムッとする。

「私で遊ばないでよね」

「遊んでねッ、楽しんでるんだろう」

道明寺が悪戯っぽく目を細める。

「キライ」

「あっ」

「意地悪な道明寺は嫌いだから」

嫌いになんてなれるはずないのに口に出る言葉は心とは裏腹ばかり。

「好きと言ってるようにしか聞こえないけど」

「素直じゃねぇな」

「そこも惚れている」

背中に腕をまわされて胸の中に押し込められた。

「前にも言ったよな、何度お前が俺を嫌いになっても惚れさせる自信あるから」

「自信満々だね」

道明寺の胸元でクッスと笑顔がこぼれおちた。

「お前は俺以外の男を好きにはならない」

その自信はどこからくるのか。

道明寺が道明寺だからで・・・

俺様で・・・

高慢ちきで・・・

わがままで・・・

強引で・・・

そのすべてを許して愛しいと思える私も結構道明寺にいかれてる。

「道明寺も私以外の女を好きにならないでしょう」

言って・・・

大いに照れて・・・

どうしようもなく火照った体を持て余す。

身体も、心も置き所がなくなって、道明寺の胸元にギュっと顔をうずめこんでいた。

                                  END   

 

このお話もなんとか終わりました。

次はどんな話にしようかな~

まだ浮かんでいません。

しかし今回は寸止め多かったな(^_^;)

次回もそんな感じで~

それは司がかわいそう♪