第11話 花に嵐のたとえもあるが・・・ 2

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-From 1-

照り返す日差しも暑い夏本番。

大学も夏休みに入る。

毎日会えなくなると道明寺はやや不満気味だ。

毎日会うと言っても学校の構内で会える時間は少ないのだけどそれでもやっぱり、

二人顔を合わせることができるのは幸せなことだと思っている。

会えないと会いたい思いが募るのに会うと大半が口げんかになるのはどうしてなのだろう。

「お前達が言い合ってないと余計心配だ」とは美作さんの談。

「レクレーション、ジャレアイだろう」と西門さんは冷めた目だ。

「それが牧野だろう」って花沢類はクスッとほほ笑む。

言い合いになる要因はほとんどが道明寺なのに笑われるのは心外だ。

「牧野は夏休みの予定は?」

たいして気にも止めない感じで何気に西門さんがつぶやく。

お宅らみたいに夏の日差しを避けて涼みに行くようなバカンス、別荘があるわけない。

「バイトを入れている」

大体の予想はついてるだろうに・・・

嫌な予感がした。

「司がイラつくような危ないバイトじゃないだろうな?」

危ないバイトってどんなバイトだ?

バイトで問題なのは道明寺の嫉妬がらみ。

同僚の男の子を睨みつけたのは一度や2度じゃない。

危ないのは道明寺の方でバイトじゃないはず。

無防備の警戒心なさすぎはトラブルのもとだとこの人たちに言われたことを思い出す。

「司がいないからって羽目外すなよ」

外す羽目など持っていない。

「そうそう、夏は誘惑も多いしなッ」

やけに楽しそうに呼吸の合った二人が顔を見合わせる。

誘惑して危ないのは西門さんと美作さん二人の方じゃないかと言う気がする。

下手な心配されてちょっかい出されたらそれこそ大変だ。

「大丈夫だよ、今度は道明寺も知っているし、優紀も一緒だから」

夏休みに入ってすぐ道明寺は仕事だと日本を飛び出した。

2週間は帰ってこない予定だ。

その間優紀に誘われて短期間の集中アルバイトをすることに決めていた。

「どんなバイト?」

「言わなきゃいけない?」

「当り前、司に頼まれているしなッ」

強引気味に西門さんに詰め寄られる。

「・・・海辺のペンションに住み込みのバイト」

海辺に建つペンションは優紀の親戚の夫婦で経営している。

バイトの話しは優紀から持ち込まれたものだった。

優紀と一緒ならと珍しく道明寺も納得してくれている。

「暇なときは海で泳げる」その条件も魅力があった。

海なんて久しぶりだよねなんて優紀と盛り上がって新作の水着まで買ってしまった。

バイトが終わったら近くのホテルにでも1泊しても楽しもうと二人で計画も立ている。

これは道明寺には内緒だけど・・・。

「・・・そのペンション・・泊まれるの?」

「えっ?泊まるって・・・花沢類が泊まるつもり?」

ちっぽけなペンション泊まらなくても別荘があるじゃん。

それも自家用機で海外と言うのが当たり前のお坊ちゃん。

そんな私の気持ちなんてとっくにお見通しみたいにクスッと小さく口元をほころばす。

「近くにたくさんリゾートホテルもあるよ」

「えっ~牧野は俺達が来たらいやな訳?」

「いやじゃないけど・・・」

イヤじゃないけどいやな予感がする。

道明寺がいれば「来るなッ」と大声で叫んでいたに違いない。

「ペンションは予約がいっぱいって聞いてるけど・・・」

「そんなの俺達に関係あると思う?」

「最悪はペンションごと買ってしまえばいい」

普通じゃ考えられない様な事を難なくやってしまう人たちだから笑い飛ばすことなんて出来やしない。

困惑!

迷惑!

意気消沈!

西門さんが来るなんて聞いたら優紀は有頂天に違いない。

「おもしろそうじゃん」

「牧野が世話してくれたって司が聞いたら悔しがりそうだしなぁ」

海外も飽きてきたって勝手な理由を付けたしてにっこりほほ笑む美男子3人組。

「来ても他人のふりするからね」

迷惑気味に眺めてフーッとため息ついていた。

 

-From 2-

泊まり込みのバイトも一週間を経過。

10組みも泊まれば満室のペンションだがそれなりに仕事は忙しい。

朝の食事に部屋の清掃にベットメーキング。

こまごまと結構仕事に追われて遊ぶ暇なんてなかったが優紀と二人楽しんではいる。

いつやってくるのかイケメン3人組。

教えたらおもしろくないとは西門さんの言い分。

どうも気になって仕方がない。

ほとんどの宿泊者が到着した後に3人同時に現れた。

「キャー」と歓声を上げたのは優紀。

しょうがない。

悪いことにこの人たち以外は女性のグールプの泊まり客のみ。

1Fのフロアーでたむろしていた女性数人を一斉にくぎ付けにしたのはさすがとしか言いようがない。

女性にもてる運命はこんなところでも発揮されるらしい。

一応仕事だと「いらっしゃいませ」と声をかける。

それだけで刺す様な視線が身にしみる。

これで知り合いだと分かったらバイトもできなくなりそうな雰囲気だ。

オーナーからカギを受け取り3人を部屋に案内する。

「せめぇなぁ」

ツインの部屋に一人づつ。

私に言わせればぜいたくだ。

「今からでもホテルの方がいいかもよ」

できればそうしてもらいたい。

が・・・

そんな気は全くないらしい。

「俺達お客だぞ」

「無理やり予約したんでしょう?」

先日まで予約名に美作も西門も花沢もなかったはずだ。

どうやって予約をとったかは聞かずにいよう。

「何事も経験だろう」

「牧野がいなきゃこんなとこに泊まるなんてありえないし」

「司みたいに朝まで付き合えなんてことは言わないから、よろしくな」

誰がつき合うかーーーッ

「騒ぎを起こさないようによろしくお願いいたします」

「司じゃねえぞ」

ところどころに道明寺の影をにおわせるのはどういう量見だ。

頬がヒクヒク痙攣しそうになった。

「と・・・とにかく・・・後はご自由に」

「つれねぇなぁ」

残念そうに言って西門さんは高笑い。

しっかり遊ばれていた。

一日の仕事は夕方6時で終了。

それからは自由時間だ。

夕食時が過ぎても食堂がにぎやかなのは珍しい。

原因は確認しなくても分かっている。

女性陣にとり囲まれている男性陣。

3人と視線があった瞬間に「あの子たちと約束あるから」と魅力的なほほ笑みを向けられた。

沈黙の後「キャー」「ヤダー」「ウソー」って、三つ揃えで声があがる。

騒ぎ作ってるじゃん。

それに巻き込まれている。

「そんな約束してま・・・」

いい終わらないうちに美作さんに口を片手で塞がれた。

「優紀ちゃん行こう」

西門さんに誘われてうっとり気味の優紀はてんで役に立たない。

「牧野、この辺案内してよ」

マイペースに花沢類はにっこりとほほ笑む。

3人に取り囲まれて連行される様にペンションの外に連れ出されていた。

「司、抜きだと静かでいい」

どこが静かなんだ?

本気で言っているのが花沢類らしい。

「あのままじゃ騒ぎが収まらないだろう?」

あれで収まったとは思えない。

美作さん、本気で収めようとする気はないんじゃないかと勘繰りたくもなる。

しばらく帰れそうもないから責任とって付きあえって、ほほ笑む西門さん。

何の責任だーーーッ。

やっぱり道明寺の仲間だ。

そう思って、諦めた。

 

-From 3-

夜の浜辺。

ホテルから漏れるライトに照らされて歩くには困らない程度の明かりをもたらしている。

夕涼みにはもってこいの海風が頬にあたって気持ちいい。

「花火やってるよ」

海辺で数人の男女が楽しそうに声を上げている。

「打ち上げじゃないんだ」

打ち上げなんて花火大会じゃないんだから、手ごろにできる花火に決まっているだろう。

これだから金持ちは・・・

花火と言えば打ち上げだろうって、もしかしてこじんまりとしたのはやったことがないって言いだしそうだ。

「あれのなにが面白い?」

思った通り経験はないって反応が返ってきた。

ものはためしと3人を誘って近くのコンビニで花火を買って浜辺へと戻る。

袋を開けて1本つづみんなに花火を渡す。

美作さんがライターで火をつけようとするが海風に吹かれて付く気配なし。

「アッチ」

熱さにたまらずライターを投げ出していた。

「ライターだけじゃ無理、ろうそく付いてるよ」

「知ってるなら早く教えろ」

クスクス笑い声を上げる私に珍しく美作さんがムッとした表情を作った。

「暇つぶしにはなりそうだ」

ぱちぱちと色とりどりに火花を散らす花火。

つまんなそうに言いながら次々と切れ間なく花火に火をつけてる西門さん。

「司も、いればよかったのにねっ」

私の横で花火をしながら花沢類がポッリと言った。

「道明寺が花火をやってるの想像できないよ。思いっきり打ち上げ手配しそうだし」

道明寺が隣に入ればいい。

想像しながら花火を見つめていた。

思っていた気持ちを花沢類に見透かされてしまって焦った気持ちを慌ててごまかす。

「素直じゃないね」

微かに緩む花沢類には誤魔化しはきかないようだった。

「ねぇ、競争しよう」

「競争って?」

「何の競争するんだ?」

「線香花火で誰が一番最後まで残るか」

「やろう、やろう」

真っ先に優紀が賛同して線香花火をもつ。

「一斉に火をつけて競争だよ」

楽しさが一気に倍増する。

「勝ったらなにかあるのか?」

美作さんが線香花火をじっと見つめている。

「なにもないよ」

「それじゃつまんねェ」

相変わらず息のあった反応を西門さんがみせる。

「俺達が勝ったら明日1日はバイト休んで俺達に付き会うと言うのはどうだ?」

ゲーッ

それは勘弁。

バイトの方が体力も気力も温存できそうだ。

「それは無理だよ」

すぐに休める訳がない。

「大丈夫、俺達が休めるようにしてやるから」

本当にやってしまいそうだから困ってしまう。

「牧野達が勝てば問題ないだろう?」

「3対2じゃん」

「それじゃ、俺は牧野のチーム」

花沢類の参入で負けない気分になってきた。

「私たちが勝ったら?」

「なんでも言うこと聞いてやるよ」

「分かった」

一斉に線香花火に火をつける。

線香花火中心の火の塊を必死で見つめて落ちないように願う。

「クソッ」

一番最初に花火が消えて美作さんが悔しそうな表情になった。

「やだー」

優紀が次に声を上げた。

残りは私と西門さんと花沢類。

頑張るぞ~と気を引き締める。

西門さんと私は同時にぽつりと落ちた。

「類の勝ちか」

「お前の言う事何でも聞いてやるよ」

やけに余裕のある表情を美作さんが見せる。

花沢類がじっと私を見つめてほほ笑んだ。

「それじゃ、牧野、明日俺達に付きあって」

あっ?

思わず口をあんぐり開けて呆けた顔になってしまってた。

美作さんと西門さんに指示出すんじゃないのか?

なんで私だ?

話が違うーーーーッ。

花沢類にはめられた?

最初からグル?

優紀はうれしそうな表情で今にも飛びあがりそうな雰囲気だ。

狼狽気味なのはどう見ても私だけ。

「牧野は俺達に帰れと言いいそうだしね」

こぼれる様な笑顔の下に初めて悪魔のほほ笑みを見た気がした。

続きは 花に嵐のたとえもあるが・・・3 で

155555キリ番ゲットのanko様の庶民の海水浴にみんなで行ってくださいのリクエス

にお応えして今回のお話を考えてみました。

リクエストありがとうございました。

マリエ様

拍手コメントありがとうございます。

夏休みを満喫できるようなお話書いて行きたい思っています。

せっかくの夏休みですしね。

このまま司抜きと言うことはありませんのでお楽しみに♪