懐かしい着物と不思議な服 3
* この物語は『懐かしい着物と不思議な服1』の6話目から分岐してます。
1を読まれた方は7話目からお読みください。
第1話 懐かしい着物と不思議な服 作 みほりんさん
ユーリがこの国に来て、数年たった。
皇帝夫婦の第1の子は流産という結果になってしまったが、
ユーリは、第2の子を懐妊していることが最近わかった。
幸せな皇帝夫婦が、後宮でのんびりしていると
カッシュ、ルサファ、ミッタンナムワがやってきた。
「陛下!!今、街で妙な服と小物が、川から流れてきたと騒いでおります。
そして、これが問題の服と小物でございます。」
「・・・なんだこれは?」
確かに妙な服だった。
裾が長く、腕を通すところにも、同じく布が長く垂れ下がっている。
他には、じゅうたんの幅を短くしたような物や、
鮮やかな色の着いたひもなど、まったくわけが分からない物だらけだった。
すると、今まで口を挟まなかったユーリが、
「きゃ~~~~!!着物だ~~~~!!懐かしい~~~~~~~!!」
と、カイルの隣にひょっこり出てきた。
「ユーリ?これはキモノと言うのか?おまえが知っているということは、
おまえの国の物か?」
「うんそう!わあ~全部一式そろってるじゃない!!!
着物はね、お正月とか、成人式、結婚式に着る行事服なの!!
ねえ、着てみていい?」
と、目をキラキラさせて聞いてきたユーリに
カイルは断れないはずはない。
「ああ、いいよ。3姉妹、ユーリについていってくれ。」
「あっ!いいよ。この着付け結構難しいから1人でやるよ!」
と、最後はあやふやにいいながら、部屋に入っていってしまった。
______________
そして、数分後・・・
「おまたせ~~~!」
出てきたユーリに、カイルや側近たちは、その場で一時停止をしてしまった。
ユーリが、あまりにも美しいからだ。
さっきまでとは、ものすごくかわっていた。
「ど~したのみんな??」
第2話 思い出に身を包む 作 ひねもすさん
「いや・・・・、何て美しいんだ。」
カイルの目は早くも煩悩の炎がちらちらと・・・・。
「え、本当?」
カイルの邪まな目線に気が付かないユーリは素直に喜んだ。
「嬉しいな、着物が着れるなんて。
それにかんざしとか小物もみんな揃ってるし!これってどうしたんだろう?」
確かに、なぜ着物が流れてきたのか不思議であった。
カイルはカッシュ達にどこから流れてきたのか、つきとめるよう指示を出し部屋から追い出した。ついでに三姉妹も追い出した。
二人になればやること一つ・・・・・・。
・・・・しかし、美しい衣装に身を包んだユーリを見る機会は、素肌をさらしたユーリを見るより少ない。素肌をさらしたユーリは毎晩見てるし。
しばし、キモノ姿のユーリを楽しむことにした。
「ユーリ、おまえの国の衣装も美しいな。」
「うん、着物は何か行事がないと着れないから、着物が着れる時が楽しみだったの。日本にいた頃は、ママがお正月には必ず着せてくれたんだよ。
それに、七五三っていう子供の行事があって、その時にも着るの。
お腹の赤ちゃんが女の子だったら、着せてあげたいな。」
腹部に手を当てながら静かに昔の思い出を語るユーリは幸せそうだった。
その顔に哀しさはなかったが、カイルはふと不安になった。
このまま、ユーリがいなくなってしまうような、そんな気持ちがした。
不安な気持ちを振り払うようにユーリを抱きしめるカイル。
「ユーリ・・・」
ユーリを抱きしめつつ、結局は脱がせ始めようとしたカイルであったが、
どこから脱がしていいか分らなかった。
さすがのカイルも着物の脱がせ方は分らない・・・・。
ユーリは少し可笑しそうに微笑むと、自分で帯止めに手をかけ、帯を解こうとした。
解こうとしたのだが・・・解けない。
「え、どういうこと?」
「ユーリ、どうしたんだ?」
「脱げない?どういうこと?脱げないよ、カイル!」
「結び目が固いんじゃないか?」
ユーリが解こうとした帯止めを、カイルも解こうとするが、解けない。
「どうしよう・・・脱げないよ。これじゃお風呂も入れないし、疲れちゃう。」
「ああ・・・」
カイルの心配はもっと違うことだった。
第3話 怪異、脱げない着物!! 作 しぎりあさん
ユーリは必死に帯を解こうとする。だが、帯はぴたりと張りついたようで、すきまに指すら入らない。
「カイル~どうしよう!?」
「うむ・・」
がばり!
おもむろにカイルは、ユーリの身体を押し倒した。そのまま着物の裾をめくり上げる。
「な・な・なにすんのよっ」
ユーリの上に覆い被さりながら、カイルは安心したようにため息をついた。
「良かった、ユーリ」
「は?」
「とりあえず、こっちはできるようだ」
ばっし~んっっ!!
「真面目に考えてよね!」
私は充分真面目なのだが。頬に手のひら形の痣をつけながらカイルは考える。
「ああ、本当に脱げない、どうして?」
「わかった、なんとかしよう」
カイルは腕組みをしてうなずいた。
「なんとかできるの?」
「ああ、こう見えても私は脱がしのエキスパートだ」
訳の分からないことを自慢げに言うカイルだった。
第4話 呪いの着物?! 作 ポン子さん
脱がしのエキスパート(自称)のカイルはあの手この手で着物と格闘した。
しかし、着物を脱がすことができない。
「あぁ、今まで私の手にかかって脱がすことのできない衣などなかったのに・・・。」
うなだれるカイル。
「カイル・・・。なんだか苦しくなってきちゃった・・・。」
ユーリが呟いた。顔色もなんだか悪くなってきている。
「大丈夫か?ユーリ!とりあえず、そのままでもいいから横になるんだ。」
ユーリを抱き上げ寝台に寝かせる。
「何で脱げなくなっちゃったんだろう・・・?」
ため息と共にユーリがいう。
「う~む、こんな話しは聞いた事がない・・・。まして、着物を見たのも今日が初めてだからな。ユーリ、おまえの国でごくまれに、脱げなくなる着物があるということはなかったのか?」
「そんな話聞いた事がないよぉ。一度脱いだら着れなくなっちゃった、っていうのは聞くけど、脱げないなんて・・・。」
「きっとこの着物に何かあるんだよ。なんかの呪いとか・・・。」
「呪い・・・か。」
事態の深刻さを理解してきた二人は黙り込んでしまった。
ーユーリー
このまま脱げなかったらお風呂にも入れないし、だいたい苦しすぎる・・・。
それに呪いだとしたら、そんな着物を一日中着ていないといけないなんて気持
が悪い・・・。何とかしないと!
ーカイルー
ユーリがこの着物を脱げないとすると、あのきれいな肌に触れられない・・・。
しかし、下からは大丈夫だったから、下半身は自由だな。
はっ、上半身には、かわいらしいユーリの胸がある!
ユーリの胸に触れられず、口に含むこともできない・・・。何とかしなくては!
それぞれ、想いは異なるが、何とかして着物を脱がなくては、と言う点では一致した。
と、そこへ3隊長がやってきた。
「失礼します。外れの村のこの老人が何者かが着物を川に流しているのを見た、と言うので連れてまいりました。」
3隊長の後ろには、ひどくおびえた様子の老婆がいた。
第5話 ヒッタイト版悪代官ごっこ??? 作 みほりんさん
その老婆が、言うには流している所は見たがその本人は、見えなかったという。
「やはり、呪いなのだろうか・・・。」
「あ~ん、いつになったら脱げるのかなあ・・。」
と、ユーリはふとあることを思い出した。
「(心の声)そういえば、日本にいたとき
よく時代劇で、悪代官が町娘の着物の帯を引っ張って、
「よいではないか~」って行っていた覚えがあるなあ・・・。
それで、この着物脱げる・・・わけないか・・・。」
はあ、とユーリがため息をつくと、
「どうしたユーリ?何か思いついたことでもあるのか?」
と、カイルが言った。
「えっ!!え~と・・・。
(心の声)どうしよう・・・。カイルに言うべき何だろうか・・・。
でもな~。まあ、物は試しで言ってみるか!!」
と、ユーリは開きなをりカイルに言ってみた。
第7話 脱げる!? 作 ちいこさん
ユーリは恥ずかしかったが、だがそうやってもらうほかはこの着物を脱げないと思った。
カイルにやり方を説明すると、カイルは目を輝かせて、
「そんなやり方があるんならどうして早く言わないのだ?」
とやる気満々。
「・・・だって」
「だってもなにもない!いいか、ユーリ、私が帯の端を持つから勢いよく回れよ!!」
ユーリが頷くよりも早く、カイルは帯の端を持って勢いよく引っ張った。
「きゃああああ」
「脱げたか!?」
たしかに、帯は解けた。帯は解けたが、着物はしつこくユーリの体に巻きついている。
「結局駄目じゃん!!」
ユーリは泣きたい気分だった。
だが、それ以上になきたいのは、カイルのほうだった。
帯が解けたおかげでユーリの姿は、着物を着ていたときよりも色っぽい。
「もう!どうやったら脱げるの!!」
(・・・もうしばらくこのままでもいいんじゃないか?)
カイルはそんなことを考えるようになっていた。
第8話 生きてた着物 作 ひらめさん
「…カイル?ほんっとに真剣に考えてる?」
ユーリは鼻の下を長くしているカイルをにらみつける。
「か!考えているさ!!もちろん!」
カイルのあせりはユーリの目に見て取れた。
「ま、いいけど。それよりなんとならないの?この着物は!!!」
「ユーリ様。短剣で切ってしまえばどうでしょう?」
そばにいたハディが短剣片手にそう言う。
「う~ん…もったいない気もするけど…このままじゃ困るしね。
悪いけどハディ切ってくれる?」
そういってユーリが着物のすそをハディの前に差し出した時だった。
「!!!やめてくれぃ!!着物を切るのはやめてくれい!!」
「……着物がしゃべった!?」
そこにいた人間全員が、そう叫ぶしかなかった。
現実に着物がしゃべったのだから。
第9話 ユーリいきなり全裸に 作 りよんさん
「お…お前はだれだ!!」
一番最初に声を出したのはカイルだった。
ユーリの体に張り付いたようになっている着物に向かって叫んだのだ。
「おまえは誰なんだ!!」
カイルはもう一度叫んだ。
しかし、着物は何も言わなかった。
カイルのなかに嫉妬の炎が燃え上がる。
自分以外にユーリの肌に触れるものは許さない!
今、確かにこの着物から声がしたではないか、ユーリは得体の知れない何者かに抱かれているということか…。
「よし、それなら私が着物を切り裂いてユーリの体から引き離してやろう。」
カイルはスラリと剣を抜き、ユーリの方へ大股に一歩踏み出した。
剣を構えて自分に向かってくる、カイルの殺気を帯びた様子に、ユーリの足はすくんだ。
「さあ!斬られるがいやなら、ユーリの体から今すぐ離れろ!!」
すると次の瞬間、着物はユーリの肩口をするりと滑り落ち、その足元にパサリと落ちた。
「きゃっ!」
カイルは、素裸の体を慌てて隠そうとするユーリの腕をつかみ、着物から遠ざけるように、すばやくユーリを抱き寄せた。
「……。」
カイル、ユーリ、ハディの3人は、床の上に無造作に広がった色鮮やかな着物を見つめ、しばし呆然と立ちすくんだ。
「…よかった、ユーリ。やっぱりお前は裸が一番だ。これからは、部屋に居るときはいつでも裸でいることにしないか?…なぁユーリ?」
少し上気したような顔で、カイルはユーリを抱きしめた。
「……えっ!?」
カイルの言葉によってユーリとハディの呪縛が解かれた。
「まあ!ユーリ様!」
素っ裸でカイルに抱きすくめられているユーリの姿を見るや否や、すばやく手近にあった布をつかみユーリにわたそうとしたハディは、しかし、すっかりその気の様子の皇帝を見て、踏み出そうとした足を止めた。
と、その時…。
「カ、カイル!あれ見て!」
ユーリが何かを指差して叫んだ。
なんと、さっきユーリの体から落ち、床に広がっていた着物が、じりじりと動き出したではないか。
第10話 まさかのまさか 作 乃衣 さん
「う、動いてるよ、着物がっ!!何で?何で?!」
ユーリは、もう何が何だか分からずに、カイルに答えを求めるばかりだった。
「…主の元へ向かっている…?」
「あっ、主?」
そう言われれば、何だか、行き先を分かっているような動きをしている。
ということは、この着物がここに来たのは何者かにしくまれた…ということか。
「じ、じゃあ、あたしが着るのも計算済みって事なの…?」
一体、誰がそんな事を?
「追ってみれば分かる事さ…。行くぞ、ユーリ」
カイルは、ユーリの肩を抱き着物の後を追おうとした。
「へっ?!ちょっ、ちょっとストップ!!ストップ、カイル!!」
「?どうした、ユーリ」
「ユーリ様は、まだ裸でございます!!少々、お待ちを!!」
ハディが叫んだ。
「あ、あぁ、そういえば」
あまりにも触り心地がよかったので、すっかり忘れていた。
「は、恥をさらす所だった…」
ユーリは頬を紅潮させながら、ハディたちによって着替えさせられた。
「こ、今度こそ大丈夫!行こう、カイル!まだ、見失ってないよね?!」
「あぁ、宮の者に追わせておいた。大丈夫だ」
そうして、ユーリたちは、あの動く着物に追いついた。
「ど、どこに向かってるのかな…」
「さあ、まだ見当も付かないが…」
その時、ユーリは、着物を追って見た目の先に、あるものを見た。
「カイル…あの着物が向かってる先って主の住む屋敷とは、限らないのよね…」
「?あぁ。限らないだろうな」
それじゃあ、あの着物が向かっている先って、まさか…。
ううん!!そんなはずない!そんな、あるはずもない…。
けど、まさか…?
「!!!」
ユーリのそのまさかの予感は的中してしまうのだった。
第11話 日本へ 作 ナイルの姫 さん
着物は庭の小さな泉の中に飛び込んだ。
カイルとユーリも後に続く。
そして二人がおりたったのは・・・21世紀の現代だった。
「ここは・・・どこなんだ?」
ユーリは、走り去る着物を見つめた。
「カイル、多分ここは、あたしの世界よ。とりあえず、後を追おう!!」
「なっ・・・なんだって!?」
しばらく走った末に、着物はある建物の中へ入っていった。
「えっ・・・和服店?」
ユーリはそっと扉を明けた。
二人はしずかに・・・
店の中へ・・・
足をふみいれた。
第12話 店の中は 作 mokoさん
ドアを開け、足を踏み入れると、そこには、着物お着たマネキンがほんの2,3体あり、他には着物一式を幾度も揃えている、何のヘンテツも無い、ごく普通のありふれた店だった。
「いらっしょいませ。」
と言う定員さんの顔のは、疑惑の表情が見て取れた。
それもそのはず。
なぜなら、ユーリとカイルの服装は、見るからに、布1,2枚の薄いものを着てジャラジャラと飾っているのだ。こんな服は、現代には、無いだろう。
たとえあったとしても、博物館くらいであろう。
カイルは当然こちらの言葉は分からないとして、やはり代表として聞くのは、ユーリである。
切れた息と整えて、ユーリは定員さんに聞いた。
「あ...あの、こちらに、着物が来ませんでしたか?」
「はぁ?」
定員さんが混乱するのも、無理は無いだろう。
いきなり変な格好をした人が二人も押し寄せて、『着物が来なかったか?』と聞かれても、『来なかった。』と言う他無いだろう。
ユーリは、こんな聞き方だと分るはずもない。
と考え直し、質問を変えた。
「えーと、じゃあ、こんな着物は、こちらで販売してませんか?」
と、さっきまで自分が着ていた着物を説明し、そこら辺にあった紙と鉛筆を取り、絵に描いて渡した。
すると、定員さんは、一瞬ビクッとなり、
「し、知りません!当店ではそのような物はお売りしておりません!!どうぞお引取りを!」
と慌てたように言い、ユーリとカイルを外に追い出した。
明らかに不自然な様子にユーリとカイルは、店の外から中の様子をさりげなく伺う事にしたのだった。