第11話 花に嵐のたとえもあるが・・・ 8
*-From 1-
なにか・・・変・・・。
ベットの上で胡坐をかいて座ってる道明寺の背中を眺めてた。
時々小刻みに震える肩。
どうも笑いを我慢してる様な雰囲気。
思わず半径1メートルで横顔を覗き込む。
ボーっと宙を眺めて・・・ニンマリ。
指先を見つめて固まった。
なに想像してんのよーーーーッ!
さっき西門さんと美作さんが「お代官様~」と時代劇風で遊んでたうつろな記憶。
そのつながりの絵空事?
「息苦しいの・・・帯で胸を締め付けられて・・・」
私の言葉に「ほどいてやろうか?」 と完全に頬が緩んでた数分前。
少し乱れかけた襟元をギュっとつかんで思わずとる警戒態勢。
道明寺がなにを考えているかは一目瞭然。
ホテルの部屋に入るまでは私もその気になっていた。
あの流れでは仕方がないと思う。
いい雰囲気だったし・・・
久しぶりに会って高まる鼓動。
あふれ出た愛しい想いに嘘はない。
けど・・・
今は、そんな雰囲気じゃないでしょうーーーーーッ!
部屋の中にみんなが勢ぞろい。
そんな気持ちは色あせてしまってる。
そんな私の気持ちはお構いなしに、いきなり人を抱きかかえてベットに押したおしてキス。
一気にアルコールはすっ飛んで酔いがさめる。
ドアを一枚隔ては向こう側にはまだみんながいるんだぞ!
この状況ではありえないよーーーッ。
このままじゃヤバイ気がした。
一人思いを巡らしている道明寺を横目で見ながら焦りは徐々にましていく。
窮屈さから抜け出す様に浴衣を脱いでバックの中から着替えを物色。
ここで道明寺が振り返ったらそれはそれで危機なんだけど・・・
目についたTシャツと短パンを速攻で着る。
それが無難な気になる雰囲気。
道明寺の妄想に付き合う気力も体力もあるはずがない。
「なあ・・・牧野」
振り向いた道明寺の目がテンテンになっていた。
いかにも落胆した表情。
「あー楽になった」
「着なれないものはダメだね」
おどけるような表情を作り道明寺の気をそらせる作戦。
無駄だった・・・
押し倒されて完全に身動きを拘束されている。
「・・・まだ・・・みんながいるよ・・・」
わずかな抵抗。
「それがどうした。ここまでは入ってこねえよ」
「どうして浴衣を脱いだんだ?」
「俺が脱がしたかったのに・・・」
不満そうにつぶやく口元。
対照的にやさしく指先は私の素肌を滑る。
「今は・・・ヤダ・・・」
拒否を飲み込むように強引に唇を押し当てられた。
だから・・・
嫌だって言ってるでしょうがぁーーーーッ。
力いっぱい道明寺の胸元を両腕で押しのける。
ごろんと道明寺がベットの上から転げ落ちた。
道明寺のバカ!
-From 2-
「もう!なに考えてるのよ!」
「みんながいるのに!」
枕で胸をガードしてペットの上から怒りのこもった目を向けられた。
「なにって、お前のことしか考えちゃいねェ」
「私の事じゃなくって、やることしか考えてないでしょう!」
エッチ!変態!バカ!って・・・
3拍子そろえやがった。
しょうがねーだろうがーーーッ
昼間から刺激の強いもん見せられてッ。
夜は夜でお前から煽ってたぞ!
それに久しぶりの逢瀬ってやつ?
悶々とする方が当たり前。
ここで立たなきゃ男じゃねぇーーーツ。
自分に力説してる場合じゃなかった。
牧野を引き寄せるタイミングを完全に外してる。
ダッシュで部屋のドアを開けリビングに牧野が駆け出した。
出口で手にもった枕を俺の顔面に投げつけて。
「テッ!」
命中。
「俺の勝ちッ~」
総二郎の声?
あいつらぁぁぁぁぁーーーー。
また人を肴に遊んでやがったのか!
「俺も司が置いてきぼりくらう方にかけたかったのに~」
牧野を追って抜けだしたドアの前であきらが悔しそうにほざいてる。
「いい加減に出て行きやがれーーーッ」
頭の中は爆発沸騰。
「湯気で出てるぞ~」
俺を煽る総二郎。
俺の不機嫌な気持ちなんてハナにもかけていない。
「私!今日は優紀と一緒の部屋で寝るから」
エッ?
じーと牧野を見入ってた。
俺をこの部屋に一人にするつもりなのか?
せっかくのスイート。
お前のこれからの時間を全部俺にくれるんじゃなかったのか?
そんな約束を確かにしたぞ!
襲われたら困るって・・・
本気で思ってるのかよ!?
お前の親友は困った顔してんぞ!?
「牧野、このまま司と喧嘩したままだと良くないよ。せっかくのバカンスなのに」
類!
やっぱお前はいい奴だ。
ここぞの時の俺の味方はお前だけ。
「それに・・・」
「一緒のベットに寝なくても部屋はいくつもある」
牧野から俺に視線を移して類がにっこりほほ笑んだ。
確信的に俺を冷やかしてるじゃねーかぁぁぁぁぁ。
「そろそろ自分の部屋に引き揚げるぞ」
意味深な含み笑いを残して部屋を出て行く邪魔した奴ら。
数分前に出て行っておけ!
そうすれば・・・
今ごろは二人シーツの波の中。
くんずほぐれつ・・・
抱きしめあって甘い言葉をつぶやいて・・・
あーーーーッ。
思っただけでたまんない。
俺のしましまな気持ちは溜まってる。
「私・・・こっちの部屋で寝るから・・・」
無情にも俺の鼻先でパタンとドアが閉められた。
呆然としばらく無気質な白いドアを眺めてた。
クソーッーーーーー!
ここからどうする!
牧野ーーーーーッ!
-From 3-
「なあ・・・」
「おい・・・」
「牧野・・・」
パタンと閉めたドアの向こう側。
立ち止ってる道明寺の気配。
ドアの側にもどってそっと耳を寄せる。
動く気配なし。
静かな攻防。
開けろー!とか。
ドアぶち破るぞーッ!とか。
出てこい!とか。
いつものように強引な態度で攻められれば強気で拒否できるはずなのに・・・。
こんな時に弱弱しい声をかけてくる。
強引で、我がままで、傲慢な俺様のふてぶてしい態度はどこに行った?
「本当に俺を一人にする気か?」
「つまんねぇ」
「さびしい」
「お前の顔が見たい」
「声が聞きたい」
「一緒にいたい」
「愛してる」
口説き文句にしたら最低だ。
それでも私に対する愛情はいっぱいに溢れてる。
率直すぎる愛情表現。
それが分かるからなおさら始末が悪い。
ずるい・・・。
ホントにずるい奴。
そのまま一人でベットに入って布団をかぶる!
そんなこと出来そうもなかった。
「もう誰もいないぞ」
そんな問題じゃないんだけど・・・。
少し開いた扉の向こう。
せつなそうな瞳が覗いてた。
二人の攻防は道明寺に軍杯が上がりそう。
クッスと小さく笑いが漏れる。
「襲わないでよね」
口を開いて出たのは照れ隠し。
それでも気分が花火が終わる頃の状態に戻るのはまだ時間がかかりそう。
「無茶はしない」
やさしくつぶやくその向こうで愛しそうに熱い瞳に私が映る。
そのまま道明寺の笑顔がこぼれた。
思わず指先が道明寺の頬に触れる。
「バカ・・・」
頬に触れていた指先をギュっと強く道明寺が握りしめた。
自然に身体が寄り添って抱きしめられる。
「本当にダメなんだからね」
胸の中に閉じ込められてつぶやく言葉は抑制力にならないと知っている。
それでも自分の鼓動の音が道明寺に聞こえないように願ってた。
これ以上・・・
抱きしめられたら立ってられなくなる。
顔を道明寺の胸から外して上を見上げた。
道明寺の顔が下がって唇が降りてくる。
私はゆっくりと目を閉じて道明寺の唇を待つ。
そして・・・
二人の唇が重なった。
続きは 花に嵐のたとえもあるが・・・9 で
まあそう言う事で次回をお楽しみに♪
バカンスは続く~
拍手コメント返礼
ミミ様
はじめまして!
ここまで追いつくの大変だったのでは?
ありがとうございます。
これからもよろしくお願いいたします。