三日月の夜  by司

御蔭さまでこのブログも1周年をまたずして20万HITの訪問者を迎えることができました。

感謝をこめてなにかお話をと考えて、短編をUpしてみました。

原作のスペシャル番外編三日月の夜をもとにしたお話です。

いつものドラマの延長とは違いますが原作を思い出して楽しんでもらえればと思います。

原作を知らない方にも楽しんでもらえるように仕上げたつもりはあります。

 *

「道明寺ッ」

クスッと照れくさそうに俺を呼ぶ声。

「オッ!」

笑って肩を抱き寄せる。

今ならこうやって歩くのも様になる。

牧野に惚れてどんな態度をとったらいいのか・・・

人を愛するということがどんなにせつないことなのか・・・

全く知らなかった高校時代のガキの俺。

思い通りにならないことなんてないと思ってた。

自分の想いが伝わらないのがこんなに・・・

つらくて・・・

苦しくて・・・

人生が終わるような感覚に陥らせて悩ませるものなのだと初めて知った。

その気持ちが何なのか分かんなくて苛立った。

ただ一つ気になる存在。

浮かぶのは俺に笑顔を見せるお前の顔。

なあ・・・

牧野、知ってるか?

俺がデートに誘った女ってお前が初めて。

きっと最初で最後。

他にはいない・・・

きっと永遠にお前だけ。

言葉ではなくただ見つめ続ける想い。

それは俺の柄じゃない。

でも・・・

高校でお前を見つけるだけで熱くなる想いが確かにあったんだ。

俺・・・

お前に出会わなければ・・・

どうなってたのかな?

きっと・・・

愛しいと思う気持ちが自分をやさしくすることを知らずにいたと思う。

ふと見上げた夜の空。

三日月だけが知っている俺の純情。

健気な思い。

思い出して照れくさくなっていた。

牧野に見つからねぇ様に天を仰いだ。

三日月の光がやさしく俺達二人を照らしてほほ笑んだ。

初めて女に惚れた。

それがどんな感情なのか分からずに戸惑う気持ち。

言葉も態度も裏腹で・・・

すべてが裏目に出てしまう。

俺を殴れるやつは姉貴を除けばお前しかいない。

極上な強気な視線に心を奪われる。

そしてまた悩める夜を独り過ごす。

生まれてこのかた俺から女を誘ったことはない。

そこにいるだけで俺の傍には言いよる女は数知れす。

その俺が声をかけてやろうと言うのだ。

ポッとなるのが普通だろう。

牧野は俺に惚れている!

そう言い聞かせて奮い立つ。

けど・・・

誘い方わかんねぇ・・・

こんな時はあいつらしかいねぇ。

女の扱いは断トツだから。

学校の廊下をあきらを探して歩きまわる。

「司なんだよ」

見つけたあきらはやや不機嫌な顔で立ち止まった。

探してたなんて思われたくないからキッと眉を吊り上げる俺。

「ちょっと聞きたいことあんだけど」

照れくささを隠しながらも頬が少し熱くなる。

「デートの誘い方!?」

「あほが!でかい声出すな!」

恥ずかしいじゃねぇかー

大声で叫ぶあきらをぶん殴る。

デリカシーのなさすぎだ。

「いてえぇ」

「後、総二郎には言うなよッ。あいつが顔つ込むとロクなこと言わねぇ」

「デートってあの貧民牧野か?」

つまんなそうな目を向けやがった。

お前の趣味じゃねぇのは知ってるよ。

「誰でもいいだろう!」

ずばりと言いあてられて焦る俺。

バレバレダと言う様に呆れた顔をあきらに向けられた。

「つーか、普通はデートしようとか誘うのか?」

「普通はそう言う言い方はしねーよ。どっか行こうぜとか・・・」

聞き逃さないようにメモをとる。

忘れる訳にはいかない。

でも・・・

頭に覚え込むのは無理がある。

記憶力が悪い訳じゃねーぞ。

慣れない言葉は間違いやすい。

「あと、ああいう女は高級なとこ連れて行くなよ。公園でハトにでもえさやってトーク

高級なとこ以外いったことねぇんだけど・・・

トークーってなんだ?

「話」とブスっとあきらがつぶやく。

話ってなに話す?

話す事ことなんてねーぞ。

何にもうかばねぇ・・・。

「って・・・おい」

あきらがフッと視線を前に向けている。

「牧野っ」

「なによ」

「司が話があるって?」

あきらーーーーーッ。

牧野を呼び止めるなぁぁぁぁぁぁ。

うをーーーーーッ。

心の準備ができてねーぞーーー。

どうすんだ!?

有無も言わせぬ展開。

わざとじゃねーのか!?

さっき殴った仕返しだろうか。

なにも言えねーじゃねーか。

しっかり予習復習して本番に備える!

そのくらいしてもうまくいくかどうか分かんねーのに!

どうするんだーーーーーッ。

牧野がじっと見つめてる。

どっか行こうぜと気楽に言えとポンと肩をあきらに叩かれてゴクンと喉が鳴った。

ど・・

ど・・・

どーーーー。

どもって動揺して唾液も出ねェし言葉も出ねぇーッ。

「ど?」

牧野に怪訝な顔を向けられた。

牧野ーッ!

不思議そうな瞳で俺を見つめるんじゃねぇ!

「どてっぱらに穴を開けてやる」

舞い上がっていた。

バシッと牧野の足が俺の腹をけり上げる。

よたつく俺を残して牧野は大股で去っていく。

「お前・・・言うに事欠いて・・・」

呆れてみてるあきらの反論なんて聞かなくても分かってる。

自分じゃどうしようもない想い。

気にくわなくてあきらに八つ当たりしてた。

あの後も結局総二郎にも相談した。

一人の女も誘えねェなんて情けねぇと、総二郎に喧嘩売られてここでも八つ当たり。

それは惚れた女を口説けねェ俺の心の弱さを隠すため。

「どこか行こう・・・・」

「デートしろ!」

「俺に付き合え!」

部屋の中に置かれた等身大の鏡に向かって言い放つ。

鏡に映る俺はどうみても威張って強制気味な凶暴さ。

これじゃ、また牧野に蹴りを入れられる恐れあり。

やさしく・・

やさしく・・・

やさしく・・・と・・・

笑ってにっこり・・・

ひきつるようにしか笑えなかった。

俺の柄じゃねぇーーーーッ!

牧野が拒否できないようにドンと言い放てばいいだけだ。

絶対近いうちに誘ってやる!

拒否されたらどうする?

そんなわけねえだろうーーーッ!

鏡に向かって映る自分に強がった。

なにやってんだか・・・

窓辺から見える三日月に笑われてる様な気がしてた。

 

ち**様の『あきらの三日月の話の中で、司があきらにつくしちゃんを誘う相談する場面のお話を司視線で』というリクエストにお応えして書いてみました。

リクエストありがとうございました。

このお話読み直すたびにもっと丁寧に書きたかったと修正しまくりです。

結構思い入れ強くなっています。

?と思った方はお許しを~

原作ではあきらが「俺は太陽に隠れる三日月だ満月にはなれない」って落ち込んでつくしの言葉で元気もらって、

「俺に似合う女はこういう女だ」ってつくしの事好きだって気がつくんですよね。

でも親友が好きな女だと思うとブレーキがかかるってさすがはあきらだとジーンとした記憶が・・・

懐かしく読み返してしまいました。

初めて原作とつなげたお話いかがだったでしょうか?

今回のお話にも原作と同様に三日月を絡めて書いてみました。

原作とコラボのお話もいいかも!?と思われたら FC2 Blog Ranking をプチっとお願いします。