第2話 抱きしめあえる夜だから 5

*

-From 1-

2度あることは3度ある!

仏の顔も3度まで!

これは使い方が違うか・・・

花沢類が突然訪ねて来て西門総二郎、後は美作あきらを残すのみ。

何の偶然だ?

測ってやってる様に思えるのは気のせいか?

会社を出ようとしたその刹那。

「よう!元気か!」とすがすがしい笑顔が迫ってた。

あっという間に私の目の前はダークスーツに取り囲まれる。

臆することなく聞こえる美作さんの声。

「おっ!牧野もVIP扱いだなぁ」

「似合わねぇ」

言われなくても私もそう思う。

だからって大声で笑われるほどの事でもないと思うのだけど。

「道明寺が勝手にやってるの!」

ダークスーツ軍団の脇の下から顔をのぞかせ怒鳴ってた。

焦ったような表情で上から私を見つめるSPがガバッと身体を動かし私を背中の後ろに隠した。

「ブハハハハ」

「類に聞いたけどホントだったんだ」

「司も大変だよなぁ」

大変な想いをしてるのは私の方だぞ。

「道明寺が大変な訳ないでしょう!」

「ああ・・・悪い、牧野も大変だ・・・」

「クククッ」

美作さんの笑いは止まらなくなっている。

「・・・あの・・・美作さんは心配いらないと思うんですが・・・」

「何事もなくお屋敷まで護衛するように仰せつかっていますので・・・」

「ごめん、俺は牧野に用事があるんだけど。アポとってたよなッ」

アポなんてある訳がない。

約束なければ会えないような待遇はまだない。

どちらかと言えばアポイントが必要なのは美作さんの方だろう。

美作さんの咄嗟のいい訳?戦略に乗っかってカクカクと顎を上下させる。

「約束あるから、話をさせてもらえるかな・・・」

「しかし・・・」

「牧野はしっかりこちらで責任を持つ」

なにか言いたげなSPを美作さんが視線で制する。

さすがはうら社会を牛耳る美作さん。

威圧感は半端じゃない。

その後ろにはこれまた手ごわそうな男たちがずらっと並んでた。

ここでやりあってもこっちの負けは目に見えている感じだ。

SPは困惑気味で私の後ろへと下がった。

「大丈夫だから」

声が裏返りそうになっていた。

美作さんにと並んで乗り込む車の後部席。

「なにかあった?」

「何にもないけど、おとといは類、昨日は総二郎と付き合ったんだって?」

「まあ・・・成り行きで・・・」

「俺だけ仲間はずれはないだろう」

「私に付き合うほど美作さん暇じゃないでしょう?」

「暇じゃないけど、たまには息抜きしないとね」

「息抜きって・・・私!」

「そう」

ニヤリと笑う美作さん。

頬を膨らませながらもプーッと音を吹き出してしまってる。

「・・・息抜き・・・必要だろう?牧野にも・・・」

いつも美作さんには安心できるさらりとしたやさしがある。

押しつけでなく・・・

一方的でなく・・・

スッと心の奥を包み込んでくれるような安らぎみたいなものをくれる人。

環境の変化。

生活のズレ。

無理してないと言えばうそになる。

道明寺が居ない不安も淋しさがとめどなくあふれるのもきっとそこから生まれてる。

「ありがとう」

「えっ?」

「みんなやさしいんだから」

「私が一人で淋しがってるとでも思たんでしょう?」

「珍しく俺達3人暇だったからな」

照れもせず美作さんはじっと私を見つめてる。

暖かい想いが浮かぶ瞳の色で。

「ありがとう」

もう一度噛みしめるようにつぶやいた。

-From 2-

「なんだこりゃぁ!」

奥まった部屋の机の上のPCの画面を見つめて叫んでいた。

なんで会社の社員食堂に類がいる!?

それもつくしと向い合って楽しそうにカレーなんて食っている。

俺がいなくなって次の日だぞッ!

早え~

感心してる場合じゃなかった。

携帯をつかんでボタンを押していた。

「おは・・・よう・・・なにか用?」

あくびの混じった寝起きの類の声。

「お前・・・なんで俺の会社の社員食堂にいたんだ?」

「なに?なんのこと?」

「つくしと二人で仲良くカレー食ってたろうがッ」

「牧野はカレーじゃなかったよ」

朝早くからなんの事?と非難めいた吐息交じりの類の不機嫌な反応。

「そんなことはどうでもいい!」

類とつくしが二人で昼食をとっていたのがムカムカするのだから仕方ない。

あの社員食堂は俺と牧野の会社で二人で過ごすわずかな時間。

小さな幸せ。淡い喜び。

他の男になんて譲れねェーッ。

悪びれない類の低音の響きが癪に触る。

「仕事で司の会社に行ったから牧野と食事しただけ」

「それ以外何にもないから牧野を責めるなよ」

「責めるつもりはねぇよッ」

なんかあったら困るだろーがァ。

お前に言われなくても分かってる。

愚痴ることならあるかも知んねーけど。

「類!俺が帰るまでつくしに近づくなっ!」

「相変わらずだねぇ」

クスッと笑って携帯が切れた。

ドカッと革張りの椅子に携帯を握りしめたまま座り込む。

PCのキーをクリックしてSPからの次の報告メールを開いた。

総二郎・・・?

次は総二郎!!

PCの画面を二度見してしまってた。

日本庭園の夜の風景。

柔かい光の中に浮かび上がる和服姿の男女の姿。

総二郎と、はにかんだ笑顔を浮かべるつくし・・・。

振袖を着てないだけましだと思う心の余裕なんてどこにもあるはずない。

どうみても総二郎に寄り添う女性って感じだ。

類よりあぶねぇじゃねーかっ!

あいつ!なにやったんだぁぁぁぁぁぁ!

「ったく」

二日も続けて俺が居ない間になにやってるのか・・・

俺の心配が杞憂じゃなくなっている。

結婚しての積み重なった余裕も積み木が崩れていくようにガラガラだ。

「西田!」

「いかがなさいましたか?」

俺のただ事でない様子に心配そうな顔じゃなく顔をしかめてる。

「帰る・・・」

「はぁ?」

「帰るって言ってるんだ!すぐに手配しろ!」

強制!命令!後には引かねぇ!

「本気ですか?」

「つくし様になにか?」

しかめっ面にため息が加わった。

「な・・なんで・・・つくしッて判るんだ?」

「日本の会社でなにかあったとか思わないのか?」

「会社関連の重要事項なら私にもすぐ連絡が入りますから」

「仕事を放り投げてまで日本に帰る理由は他にはないでしょう」

「つくし様が離婚届を書いて実家に帰ったとなれば別でしょうけど・・・」

「そんなはずないだろッ!」

「でも・・・あぶねェかもしれない」

「はっ?」

「これをみろ!」

PCの画面を180度回転させ西田の目の前に突きつける。

「類に総二郎だぞ!」

「俺がいないと思ったらふってわいて来やがった」

「ああ・・・それなら原因は私です」

「代表が出張前に花沢物産との仕事の提携で類様が本社にこられることが解かってましたから」

「つくし様が一人では時間を持て余せると思いましたので、声をかけてもらうよう頼んだのです」

「類様だけでは代表が機嫌を損なうと思いましたので他の方にも一言伝えておきましたが・・・」

西田の言葉が終わらぬうちにメール受信音がピ~ロンと響く。

メールの題名は「つくし様のご報告」

開いたメールをチラッと横目で見る。

今度はあきらかぁぁぁぁぁ!

二人で車に乗り込む写真。

気にくわねぇーーーーッ!

「つくし様も慣れない生活と環境の変化大変だと思いますが・・・」

「つくし様にも気を抜くことも必要かと・・・」

「俺がいたら気が抜けねぇみたいじゃねぇか」

「ある意味そうだと・・・」

西田がにこりと笑みを浮かべる。

「嫉妬せず大きな気持ちでお見守りください。時としては寛容なお姿も魅力となります」

「では」

何事もなあったように頭を下げて西田が部屋のドアをガチャリと閉めた。

「っくそーーーッ」

机の上の書類の束を思い切りドアに投げつけた。

-From3 -

奪う様なキスを返された。

別れ際のせつない思いが身体の中に流れ込む。

あふれる様な愛しさすべてをおしつける様なキスが降り注ぐ。

くちびるが触れるだけで・・・

何もかもが崩れそうになる。

抱きしめている腕も触れ合う指先もすべてに感覚が研ぎ澄まされて翻弄される。

頑なな意地も・・・

つまらない強がりも・・・

大切なこの思いもすべてが解けあって連れさられる。

大切な愛しい想いがあふれ出て体中にながれこんでいく。

抗う気持ちも糧にする様に指先に導かれ気がつかぬうちに小さく悲鳴を上げた。

今のすべてを愛してる。

・・・

・・・?

・・・・・・・!?

「これ!いいでしょう!?」

「最後まで読むともっといいよ!ジークーと身を焦がす恋!」

桜子が夢見る顔で片手に文庫本を持ってつぶやいた。

「まだこんな恋してないのよね~」

美作さんに連れられて行ったホテルの最上階。

花沢類に西門さん、桜子に滋まで勢ぞろいしていた。

「今夜は楽しもう」

美作さんの一言で今夜の集合が私の為であると分かってしまう。

否定する理由などなにもない。

部屋に足を踏み入れた途端に滋と桜子の3人で肩組んでうれしさの悲鳴を上げていた。

F3は勝手にやっていいよの暗黙の態度。

自然に3人固まって話題の中心は私になっていた。

「新婚はどう?」

「司はやさしい?」

「さあ・・・こんなもんじゃないのかな・・・」

男性関係はこの二人の方が断然上級者だと思うのだけど・・・

「つくし!恋愛はイメージ!」

「はぁ?」

「大事だよ~」

「つくされるばかりが能じゃない!」

「読んでみてッ。ハーレクイン」

「みんなハッピーエンドだから」

強引!横暴!俺様!お金持ち!

道明寺みたいな男性主体の恋愛物語。

愛を信じない男が一人の女性と知り合って忘れらなれくなって愛を知るのよッ!

似てない?つくしと・・・

波状攻撃で二人から聞かされる別世界。

女性は経験浅くて男性は・・・

身体が火照ってまともに言える訳がない単語が続く。

「あ・・・どうかな?」

「あははは・・・」

・・・・対応が解からなかった・・・。

「だから!道明寺さんが帰ってきたらしっかり魅力を見せつけてっ!虜にするということですよ!」

照れもせず言いきる桜子。

「そのために集合したんだからッ」

言い放つ滋の横で西門さんと美作さんが同時にシャンパンを噴き出していた。

続きは 抱きしめあえる夜だから 6 

今回の西田さん。

黒幕は実は・・・という展開いかがでしょう?

司御帰還の前のワンクッションこのあたりでどうでしょうか♪

これがどう作用するのかそれは滋と桜子にかかってる~

たまたまハーレクインのマンガ雑誌を読んでいてなにか使えないかと思いついたお話です。

おもしろいかな~と。

小説自体はまだ読んだことはありません(^_^;)

拍手コメント

nanako様

いい塩梅アクセント化している西田さん(爆

この後の刺激はほどほどで~

夏休み最後の土日ハードです。

明日はどこにも行かないと娘に宣言!

あと二日の辛抱!

妄想お金持ち楽しめたでしょうか?