第11話 花に嵐のたとえもあるが・・・ 11
*-From 1-
「お前らの悪だくみはなんだ?」
「ひでぇー言い様!俺達は純粋に司と牧野の事を思ってるだけだろう」
「そんな気さらさらねえだろうがぁッ!」
腕組みしたまま総二郎とあきらをガン見した。
「司に耐えしのぶ我慢の限界なんてもんに挑戦してもらおうかな~なんて思ってるんだけど・・・」
「あっ!」
「『今から丸1日牧野に触れない』なんてどうよ!」
「守れなかったらその時点で司はここを引き払う」
「守れたら俺達が引き払ってやる」
「そんなこと簡単じゃねぇかぁ」
牧野に触れないのはつらいがそこまで我慢できないことじゃない。
今日の朝までに結構充電できてるしなッ。
明日になれば二人きりになれる。
おいしい関係てことだ。
悪くねェ。
こいつらが俺達の事を思ってると言ったのはまんざら嘘じゃない。
・・・と・・・
ほくほくと笑いがこみ上げる。
「それじゃ、決まりな」
「あぁ、問題はねぇ」
ニンマリと総二郎とあきらが視線を合わせる。
嫌な予感が顔に出てしまってた。
「本当にそうかな~」
「俺達が牧野にこんなことしても手も足も出せねーぞぉ」
言いながら総二郎が牧野の肩に腕を回す。
牧野が身体に力を入れて強張った。
わざとやるんじゃねぇーーーーッ。
握りしめた拳が震えてる。
さっきのこいつらを見直したのは撤回だーーーーッ。
信用した俺がバカだった。
「そんな事は言ってなかったじゃねえか」
完全に愚痴。
恨み。
ひねくれた。
無理やり取り消す!
取り消させる!
「男にニ言はないんでしょう?」
なんで牧野が味方する!?
引くに引けねえじゃねぇかぁぁぁぁぁ。
「司が我慢できそうもねえようなことにしないとおもしろくねえだろうが」
「罰ははじまってるからな」
「俺1時間」
「それじゃぁ俺は30分」
俺が負ける算段で賭けをするんじゃねぇーーーッ。
「牧野!こいつらにお触りさせたら承知しねぇからなっ!」
総二郎とあきらを指さして牧野に強制的に強引に言い放つ。
「ちょっと、お触りてなによっ!」
「人が触られて喜んでるみたいじゃないの!」
「そう俺様に思われたくたくなければ逃げ回れ!」
自分じゃどうしようもなければ牧野に対応させるかしかない。
お前も俺と離れるのは不本意だろうと勝手な解釈。
「これ、私に対する罰じゃないのよ。それにボートの上じゃ無理だよ」
不機嫌に顔を赤らめる牧野の身体が揺れるボートに足をとられてふらついた。
「危ない」
類が牧野の身体をギュっとささえている。
「そうそう」
「牧野に責任転嫁はひどすぎる」
類は牧野に手を差しのべながら俺を攻めやがった。
なにを言っても言い訳がましくて次の言葉が見つからない。
だから触んなぁーーーーーッ。
心の中で大声あげた。
-From 2-
ボードはハーバーに戻るために西に航路をとって進んでる。
にぎわいを見せていたビーチーも人影はまばらになってきた。
「なんか、おもしろいねぇ」
優紀がケラケラ笑っている。
もともと西門さんを見つめてはうっとりしていてすこぶる機嫌がいい。
西門さんの嫌そうな顔も受け入れ済みの状態で隙があらば隣へと滑り込む体勢をとっている。
西門さん以外には全く興味を見せなかった優紀だが、道明寺をからかう素振りの西門さんは優紀には新鮮でおもしろく映るらしかった。
「いつもさ、茶道の時は真剣だし、周りに女性がいたら見られない様ないい表情して笑うよね」
「くったくなくて・・・」
「楽ししそうで・・・」
「あどけないっていうか・・・」
「かわいくない?」
「ただの悪戯坊主になってるだけでしょう」
私達二人から少し離れた位置で天下のF4が言い合っている。
この状態を見たら少なからずF4のイメージは地に落ちると思うのだが、優紀はこんなF4もいいねとまんざらではない表情を作ってる。
「お前ら!牧野に近づくなッ!!」
両腕を広げて私の前で防波堤になっている道明寺。
ディフェンス気味に身体を揺らす美作さん。
つられる様に道明寺が腕を左右に動かす。
横では西門さんが「右」「下」「左」と指示を出して喜んでいる。
「危ないよぉ」
「ーーーるせっーー」
どうせなら応援しろって言いながら視線は美作さんにくぎ付けだ。
「今日は釣った魚を料理してもらおうよ」
「釣ってない奴は食事抜きかな?」
いつの間にか私の横に並んで花沢類がにっこりほほ笑んでいた。
「あーーーッ!類!お前いつの間にそこにいるんだ」
「司があきらと遊んでいるからねぇ」
「牧野の相手はしっかりしてやるから」
グイッと道明寺が一歩踏み出した途端、ボートがガタンと動きを止めた。
「着きました」
ボードの操縦者に促され花沢類が最初にボートから降りる。
「牧野」
花沢類から差し出された手を道明寺の視線を気にしながら「大丈夫」と断った。
・・・結局・・・
花沢類には身体を支えられたのだけど・・・
揺れる身体に当り前のようにスマートに差し出される腕。
振りほどきようがなかった。
「司・・ここは我慢だぞ」
西門さんのつぶやきが私の耳にも届く。
振り返ったその先でわなわなとふるえてる道明寺のひきつった顔が見えて思わず顔をそむけてた。
このまま朝まで道明寺が我慢できたとして・・・
私は無事でいられるのだろうか・・・
「ワァーーーーッ!」
海に向かって雄たけびを上げている道明寺。
自分の身は自分で守る!
なるべくF4から離れていよう!
そんな思いで優紀の背中に小さく身をかがめて丸くなってしまってた。
-From 3-
ホテルの奥まった庭先。
釣った魚以上の豪華な料理。
お寿司に刺身にバーべキューにフランス料理にイタリアン。
目の前でシェフが料理してくれている。
釣った魚はどこだ?と牧野が目を皿のように開いてる。
6人で食べるには食べきれない膨大な量。
釣った魚が今日の夕食。
類がそう言ったから手配してやった。
やられてばっかりじゃたまらない。
「食べたいなら、食べさせてやってもいいぞ」と、胸を張る。
「別に・・・」
「レストランならホテルの中にもある」
類にあきらに総二郎がさらっと俺に背中を向けた。
おい!
こら!
思わぬ逆襲。
「牧野はどうする?」
「えっ?」
「このまま牧野を司と二人っきりにはできないからな・・・」
勝ち誇った顔であきらがニヤリと笑った。
「でも・・・・料理がもったいないよ・・・」
「道明寺だけじゃ食べきれそうもないし・・・」
「俺ら全員でも食べきれねーぞ」
「司がどうとでもするさ」
こいつらが俺に頭を下げる気はなさそうだ。
牧野ならすぐに飛びつくだろうと俺の考え。
俺はそれでも十分。
牧野が一人で居るだけでいい。
マジにそう思ってた。
こいつらが牧野を置いて行くようなヘマはしそうもないことに気がついた。
「俺達が居ない間に何かしでかすとも限らないからなぁ」
「司がどうしてもって言うなら食べてもいいが・・・」
「いやなら牧野を連れて俺達は別なところに行く」
「どうする~っ」
結局追い込まれたのは俺の方。
「しょうがねぇから食べてもいいぞッ」
「強気だねぇ司は・・・」
「頼まれれば一緒に食事してやってもいいけどなぁ」
「クッ・・・」
俺があたまを下げれる訳ねーじゃねーかぁぁぁぁ。
「お・・・」
「お・・・お・・・が」
「「お?」」
「おとといきやがれっ!」
「「ブハッハハハハハ」」
「付き合ってやるよ」
腹抱えて笑いだしやがった。
料理を皿に取ってテーブルに座る。
俺の両脇には総二郎とあきら。
向かい合って類に牧野に牧野のダチ。
じっと皿を見つめたままフォークとナイフだけを動かしてる。
視線を上げてしまったら怒りは沸点を超特急で超えそうだ。
「牧野、これおいしいよ」
「本当だ~」
「ほっぺた落ちる~」
「牧野、口元になんかついている」
「えっ?どこ?」
いったいなんの会話だッ。
イチャイチャしてる様にしか聞こえねぇ類と牧野の会話。
このまま顔を上げたら我慢できそうもねぇッ!
見ない我慢もできそうもなかった。
「いい加減にしろッ!」
テーブルをひっくり返す勢いで立ち上がる。
「司、落ち着け!」
目の前で牧野が優紀にほっぺを拭いてもらってた。
身体の力が少し抜けおちる。
類じゃねぇのか・・・。
だが・・・
我慢の限界がそこまで来ている。
「付き合ってられるかッ!」
「まだ俺は牧野には指一本触れちゃいねェからなぁ。部屋に戻る」
吐き捨てるように言って一人でテーブルを後にした。
「あーーー怒ったなぁ。限界?」
「まあ司にしちゃもったほうなんじゃない?」
総二郎とあきらはやれやれと言う様に肩をすぼめる。
「このくらいにしといてやったら?」
「そうだよかわいそうだよ」
類にコクコクとつくしが相槌を打つ。
「へぇ・・・牧野はやっぱり司の味方するんだ」
「司が牧野を触れないのかわいそうだと思ってるんだ」
「別にそんな意味じゃなくて・・・」
総二郎のからかい気味の調子につくしの言葉尻は小さくなる。
「牧野、司の機嫌直してあげなよ」
つくしに視線を向けて類がクスッとほほ笑んだ。
そんな会話が食事の場所で続いてるとは知る由もない司は、怒りをまき散らす様にエレベーターに乗り込んでドンと拳で最上階のボタンを押していた。
続きは 花に嵐のたとえもあるが・・・12 で
我慢モードの司君!我慢できるのか?できないのか?
どっちにしても最後は甘あまで~
それじゃーーーーッ
おもしろくないと総二郎とあきらが申しております。
拍手コメント返礼
nanako様
わが家の子供はバッチリ31日まで夏休みです。
後5日・・・
最後の週末は忙しくなりそうです。
司はまさに蛇の生ころがし
耐えろーーーッ!
耐えるんだ司!
その後はどこで爆発するのか・・・・
知らないことにしておこうかな(爆