Perfect dungeon 2

*

「つくしさぁ、ため息つくぐらいなら素直に喜んでおけば良かったのよ」

道明寺と別れた後に呼び出した優紀が私の付いたため息の後に小さなため息を付く。

「だってさ、いきなりだよ」

「一緒に歩いててホイって」

スラックスのポケットから無造作に取り出したリボンのついた箱を鼻先に付きつけてきた道明寺。

形的には指輪の箱って気が付いたけど婚約指輪が入ってるなんて思わない雑な渡しかた。

食事の後の夜景の見える部屋で、テーブルの上にそっと置いて・・・。

「遅くなってごめんな」

はにかんだ道明寺の笑顔を見て指輪を受け取って、照れくさそうに私が笑う。

そんな・・・夢。

「演出ってものがあるでしょう!!!」

鼻息を荒らげて勢いよく置いた拳がドンとテーブルに音をたてる。

「ダイヤがバカデカいとか、豪華とか、ぜいたく過ぎとか言っていたわりにはつくしが本当に怒ってるのはそこなんだ」

「つくしも女の子らしくなったよね」

頬杖を付いた優紀はからかう様に口元を緩める。

そんな注訳付かなくていいから!

「まあ、あんなに感動的なプロポーズをされちゃ、欲が出るのもわかるけどね」

「あの時、指輪まで贈っておけば道明寺さんも指輪をつくしに突き返されるような悲しい目に会わずに済んだわけだ」

「指輪が家が買えそうなくらいの値段はしそうだったから怖かったのも事実なんだからね」

ハイハイって軽く優紀に返事を返された。

「天下の道明寺ホールディングス代表が贈る婚約指輪なんだからつくしでも想像はつくでしょう」

「それはそうだけど・・・」

「ところで、つくし・・・」

「なに・・・?」

身を乗り出して私との距離を優紀が詰める。

「ほら、よくテレビで婚約会見とか指輪を見せてやるじゃない」

「あれ、やらないの?」

「芸能人じゃないつーの!」

そんなド派手なことをされた日には私は大学にも通えなくなりそうで怖い。

「結婚は4年は先だから」

「だったら、つくし婚約指輪はもらっておくべくじゃないかな」

鼻先で優紀が声を小さくした。

「なんで」

「何が起こるか分かんないんだから高価な方がより別れた時の慰謝料になるわよ」

「えっ・・・」

道明寺と別れるってこと?

指輪突き返して怒った道明寺の顔が浮かんだ。

あんなケンカ何時ものことで、私たちにとってはありきたりなはずで・・・。

フラれるのは私なのか?

「こら、マジにとるな」

「道明寺さんとつくしの結びつきは最強だから」

明るく笑う優紀にちょっぴり今回のことは私が言い過ぎたのかって反省した。

素直じゃないよね。

好きな相手に指輪を贈られてうれしくないはずはなくて・・・。

あきらめかけた恋が・・・。

好きな相手と手を取り合えた瞬間にプロポーズされて・・・。

世界で一番幸せだって思えたのは嘘じゃなくて・・・。

あいつの嬉しそうな笑顔が目の前で弾けて・・・。

いまさらその腕を離すことなんて出来るわけがない。

もう二度と「さよらな」なんて言えそうもないって分ってる。

たぶん道明寺も・・・私も・・・。

帰ったら道明寺に連絡を入れよう・・・かな。

「司、朝のテンションはどうした?」

落ち込んだときに限ってふってわいてくる昔なじみの顔が3つ並ぶ。

「牧野はいないの?」

最初に類が気にするのは何時も牧野。

何時も牧野にだけ類が向ける優しげな表情は封印されて意外そうな声が響く。

今日はそんな類の態度も気に障る。

「見て、わかんねェか、俺だけだよ」

「さては指輪をつき返されたとか?」

総二郎が考えるそぶりも見せずに即答。

俺の不機嫌さを考えれば誰でもわかるつーの。

頬を染めて喜んでる予定の牧野は俺の横にいねぇしな!

気が付いたなら少しは気を遣え!

ジロリと睨む。

「司、お前の小指・・・」

「ぶははははは、それ、牧野の薬指にはめるやつじゃないのか」

肩肘ついて頭をのせていた小指の第2関節にとどまるダイヤの指輪。

あのバカ 力!

どうやってもぬけねぇッ。

あきらが気が付いて遠慮なく吹き出して笑い声をあげた。

「目に浮かぶな」

顎のラインを指先で数度なぞりながらニンマリとした視線を総二郎があきらに向ける。

「司が牧野に指輪を見せて、豪華とか高いとか似合わないって言ってつかえされるとこ」

二人で人差し指で互いを指してケラケラと笑い声を挙げた。

俺の傷ついたプライドを考えたら笑えないだろうがぁぁぁぁぁ。

「いい加減にしろよ」

「てめえら俺を慰めようとか思わないのか?」

「慰めたら暴れるだろうお前は」

落ちつけとでも言う様に椅子から立ち上がりかけた両肩をあきらが押さえる。

「だから言ったろう、最初は少し軽めのリングにして結婚まじかにド派手な指輪を贈れって」

「司が俺らの忠告を聞くやつじゃねェけどな」

俺は俺の信念がある。

こいつらに言われてそれを曲げたら俺じゃない。

つーか、普通素直に指輪くらい勿体付けずに受け取ればいいんだよ。

この俺様が指輪を贈る相手は牧野だけだぞ。

喜ぶあいつの顔しか思い描いてなかった。

「俺のもんだって印を牧野に付けたいって司の気持ちもわかるけどね」

「大学で牧野の存在知らねェやついないだろ」

「命知らずはいないよな。俺も怖い」

さっきから言いたい放題。

遠慮というものがこいつらにはない。

「牧野はモテるんだぞ」

この俺が愛してるただ一人の女。

「司が一番惚れてるもんな」

「るせっ」

あきらの声に緩みかけた頬に力を入れた。

遊ばれて、殴る気力もなくてこいつらから顔をそむける。

耳朶に触れるダイヤの冷たい感触。

なんで、俺の小指にしっかりと収まってんだ。

「まずはその指輪をはずして牧野に受け取ってもらわないとね」

類の言うとおりそれが理想。

牧野が素直に受け取るとは思はない。

「俺が代わりに贈ろうか?」

にっこりと微笑んで類がつぶやいた。

それじゃ意味ねえだろうがぁぁぁぁぁ。

類が本気で牧野に贈って牧野が本気で受け取ったらどうなる!

「そんな、危険な賭けにノレねぇよな」

俺と類と牧野。

類の気持ちが牧野にあったことを承知してる総二郎とあきら。

「牧野が俺以外になびくわけねえだろう」

強めの声とは対照的に浮かぶ不安。

今だに類に微笑みかけられると赤くなって照れ笑いを浮かべる牧野。

牧野は類が嫌いじゃないって分ってるから心がザワツク。

俺から謝らない!

早くもその決心は緩んできた。

牧野に電話すっかなぁ・・・

ダメだ!

すぐに会いに行こう。

ガタッ。

椅子から立ち上がり飛び出してく体勢をとる。

「司どうした!」

「牧野に会ってくる」

「おい!その前に指輪をどうにかしろ!」

「石鹸で洗えばとれるはずだぞ」

あきらが言った通り洗面所で指を必死に擦る。

意外にあっさり指輪はするりと小指から抜けた。

知ってんなら早く教えろッーーーーー。

お楽しみいただけたら応援のプチもよろしくお願いします。

 ブログランキング・にほんブログ村へ

拍手コメント返礼

ココちゃん様

先週は真央ちゃんでまくりでしたものね。

映画も見に行きたいけど時間がないのが残念です。

ひみ嵐の真央ちゃんは完全に成長したつくしで見ておりました。(笑)

EX-LOUNGE’TAKAHIROって見てません。

七番街さんのブログ、検索で分かるかな・・・(^_^;)