パズルゲーム 序章

別館でお知らせした類君がらみのお話です。

ドタバタなことは間違いなし!

さてさてどうなるのか。

はじまり、はじまり。

*

艶やかな光りに包まれて客船が港に入る。

汽笛の音が、登る朝日の中に吸い込まれて消えていく。

司と牧野の披露宴は豪華客船を貸し切っての一大イベント。

「これで司はやっと落ち着けるんじゃねェの」

「しかし、結婚してすぐ別居を余儀なくされるって、あの司がよく我慢したよな」

「その後、司の浮気だろ?」

「あいつらといるとあきねぇよな」

招待客が船から降りるのを見送る司と牧野を眺めながら総二郎とあきらが顔を見合わせる。

俺たちが誰よりも司と牧野を祝福してる。

忘れていたはずの牧野への思い。

そう簡単に忘れらるものじゃない。

司の横で幸せに微笑んでる牧野を見てると俺も笑顔になれる。

司に向ける牧野の表情。

牧野のすべてが輝いて、体中から愛が溢れてる。

それは世界中でただ一人司にだけに向けられたもの。

幸せにしろよ。

俺の愛した牧野を。

声に出さずに小さく唇を動かした。

その数日後・・・。

牧野が俺の目の前で渋い顔を作る。

本当にこんなつもりじゃなかったんだ。

どうしようもない状況で浮かんできたのは牧野だった。

父親の仕事を手伝って常務の肩書を持つ俺。

司のド派手な結婚披露パーティーは次の日の新聞の一面を飾りいまだに世間の噂の中心を占めてる。

牧野が一般女性ってことで二人の写真も司だけが顔をさらしていた。

牧野の情報はシークレット。

可愛い牧野の写真を誰にも見せたくないって司の本音がちらちらと見える。

独身時代は牧野を見せびらかしてしょうがなかった奴とは思えない変わりようだ。

モデル並みのスタイル抜群の容姿。

誰もが振り返るほどの美人。

牧野が聞いたら青ざめそうな道明寺代表夫人の姿が出来上がってる。

今、俺の目の前にいる牧野は初めて会ったころと点で変わらなくて、いまだにブレザーを着せれば女子高校生で通るあどけなさを残す。

「無理、絶対無理」

動揺を隠せずに上ずる声。

飲みかけていたジュースの入ったグラスをテーブルに置き損ねて黄色い液体が揺れてテーブルに落ちる。

視線が落ち着かないままテーブルの上を牧野がおしぼりで拭き上げる。

焦る牧野にその必死さと対照的に俺は楽しくてしょうがない。

結婚しても、道明寺夫人となっても牧野は牧野のまんまで、大学で一緒に過ごした穏やかな時間に引き戻してくれる。

「あきらに頼まれた時は引き受けたんだよね?」

あきらが祖父から結婚を進められて、その時に付きあっていた女性と別れるために牧野に彼女のふりを頼んことはしはっている。

そうじゃなくても牧野の彼氏のふりをしたり、婚約者に間違えられたり、俺はずいぶんと牧野を助けた。

貸しは有るはずだ。

返してもらおうなんて今日までこれっぽちも思ったことはなかった。

「それは・・・」

黙り込むように途切れる声。

俯いて、テーブルの下に向ける視線。

「俺はダメなの?」

見えない表情を覗き込んでつぶやく。

慌てて上げた牧野の視線と俺の視線が絡みつく。

直ぐに赤くなる頬。

これもで出会ったころの牧野のままの反応を残す。

「類に見られて頬を染めんじゃねェよ」

何時も司が不機嫌になった原因が目の前にある。

司には悪いが今でもそれが可愛いって思うんだ。

家族や妹への情愛だから、司、心配はするな。

「あの時はまだ学生で結婚してなかったし・・・」

モジッとなる牧野はこれ以上の強気な態度は出来ないって分る。

もう一押し。

「でも司と婚約はしてたよね。だめ?」

「結婚と婚約は別物でしょう」

ここで息を吹き返して牧野の声が大きくなった。

「好きな子が学生だから結婚は先だって設定で誤魔化したいんだ」

「私社会人だよ!無理があるでしょう」

全然無理じゃない。

「プッ」

必死で否定する牧野に可笑しさがこみあげて笑い声が漏れる。

「花沢類、笑うとこじゃない」

ムッとした声。

「ごめん、牧野なら、十分学生で通る」

そう言ってまた口元から笑い声が漏れる。

「学生に見えそうな子をほかに知らないんだよね」

ククッと開きかける口元を引き締めて牧野から外さない視線。

「それが、私に頼んだ理由なの?」

立ち上がりかけた姿勢が息を吐きながら椅子に座りなおす。

どうやら話を聞く気になってくれたらしい。

「あっ、演じてほしいのは高校生だから」

落ちそうなくらいの大きく見開いた瞳が俺を見つめる。

「道明寺にばれたら大変なんだから」

「しばらく出張でいないのは知ってるよ」

牧野が両手で頭を抱え込んでテーブルにゴンと肘をついた。

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拍手コメント返礼

アーティーチョーク 様

つくしはいつも似たような場面に追い込まれてますよね。

ソロソロ慣れる頃合いだと思うんですけどね。(笑)

この手のパターンのお話は書きやすくてしょうがありません。

ココチャン様

こんにちは、思い切って連載はじめちゃいました。

司君がどこまで類クンを追い込めるのか!

追い込めないだろうなぁ・・・(^^)

aimi 様

司にしたら一番嫉妬する相手ですよね。

なんせライバルですから。

類君が司の様にぐいぐい行く性格だったらつくしはどうしたんでしょう。

気になるところです。

音楽のイメージでピッタリくることありますよね。

類君ではリクエストで書いたことと有りますが、司じゃまだなかったな・・・。

MISIAさんのEveryuhing。

なるほどですね。

おかゆ

始まりからバタバタになりそうな予感を匂わせて♪

司君ガンバ~~

頑張るのは類君?

ココア様

お知らせありがとうございます。

拍手の調子が悪かったんですね。

午前中いつもならすぐ拍手数が上がってくるんですが、別館で感じた手ごたえのわりには反応がないと思っていました。

原因が分かってホッとしたかな。

ウケてないのかとドキドキでした。

これからどんなふうにパズルが重なってはまって仕上がりはどうなるのか。

色々考えてますのでお付き合いをお願いします♪

みぽお様

ここで高校生設定ってなによ~~~と意外性があって面白くないですか?

つくしちゃん22歳なんですけどね。

あなたなら大丈夫♪

真央ちゃん高校生の役を『僕の初恋~」でやってましたからね。

あっ、あの時中学からでしたね。