霧の中に落ちる月の滴 30 (完)

予定では・・・

切なく終わらせるつもりでした・・・

やっぱ私には無理だったなぁ・・・

結局はいつものHappyなつかつくと類で終わるってことで・・・(;^ω^)

昨年から連載中のお話はどれも更新が滞り、お待たせしていますが、このお話でようやく完の文字が付けられました。

お付き合いありがとうございました。

 *

「いきなり後ろからかよ」

「類のやつ、思ったより女子力高いな」

「顔が見えない分、耳元で聞こえる告白ってドキドキするんだよな」

大学に来た俺に偶然を装って「司」と声をかけてきた総二郎とあきら。

俺が大学に来る理由は牧野しかないことを知ってるから始末が悪い。

頼みもしねぇのに俺についてきた二人。

牧野を見失うことだけは避けたい俺がこいつらを相手にする余裕はなかった。

そして牧野に声をかける類と遭遇。

誘ってもねぇし、頼んでもねぇのに、勝手についてきて勝手にしゃべる。

類に抱き付かれる牧野にもムカムカしてるのにこいつらの言葉が俺の心音を跳ね上げる。

「同情から始まる恋もなくはないしな」

「もともと牧野は類が初恋のわけだしな」

言いたいことを口にする総二郎とあきらをジロリと睨みつける。

俺の不機嫌さに、今、気が付いたようにあきらが一歩軽い調子で後ろに飛んで逃げた。

怖がってねぇし。

俺の分身が頭の中ではあきらを羽交い絞めにして殴りつけてる。

殺気じゃなく殺意が芽生える。

「「あっ」」

牧野から目をそらしたのは一瞬。

なんで牧野が類に抱き付いてんだよ!

まさか・・・

こいつらの言う通り同情から類の告白を受け入れた・・・とか・・・

そんなの!

許せるわけねぇだろう!

「おい、司!見てるだけじゃねぇのかよ!」

背中に聞こえたのは総二郎の声と、もう止められないと判断したようなあきらのため息。

歩幅は足を進めるたびに大股になって最後は駈け出して二人に迫る。

「類!なに、抱き付いてんだよ。

告白は許したが、牧野に抱き付いていいとは言ってねぇぞ」

類から離れないままに牧野が何でいるの!の感情を見せて俺を凝視して固まった。

「俺じゃなく、牧野が抱き付いてるんだけど」

ひょうひょうとした類の声。

その声でようやく自分から類に抱き付いてると理解した牧野。

そして、気まずい表情を見せた牧野が慌てて類から離れた。

遅せぇんだよ。

「今朝まで俺のベッドにいたのに、今度は類のベッドにもぐりこむつもりかよ」

「あのねッ、それ今言うことッ!」

気まずい空気はどこかに蹴落とされたマングースと蛇の睨み合いの様相の俺と牧野。

どこかで牧野のスイッチが切り替わった。

怒っていいのは俺じゃねぇのかッ!

「告白って?

それを許したって、なに?」

牧野の不機嫌のスイッチはそこか。

つーか

怒っていいのは、この場合は俺だけだろうがぁ。

ふつふつとした煮える牧野の瞳が怪しく光る。

「花沢類からは告白もされてないけど」

「てめぇ、抱き付いてたじゃねぇか。

あれは俺に対する裏切りだろうがぁ」

「告白を許すのは裏切りじゃないんだ」

感情を爆発させる俺とは対照的な感情を押し殺したような牧野の声。

いつもギャーギャーうるさく俺に食いついてくるいつもの牧野のキレ具合とも違うから勝手が悪い・・・

つーか・・・

押されてる。

「あのね、花沢類の記憶が戻ったら喜んだだけでしょう。

それでつい抱き付いただけだから」

ため息交じりの牧野の声。

呆れてる。

そんな感情を全面に俺に押しつけてきた。

「記憶が戻ったから抱き付いていいってことにはなんねぇだろう」

・・・

ん?

まて・・・

牧野は記憶って言ったよな?

「記憶って・・・類のか?」

「道明寺が記憶をなくしてなきゃね」

さっきから厭味ったらしい牧野の声。

剣山並みの棘の鋭さ。

「戻ったのか?」

牧野の相手をするのも機嫌を取るのも後回しに類を見る。

「なんか、もどったんだよね」

他人事のような類。

「類ッ」

しっかりと抱き付いたのは俺も牧野と一緒。

「殴られそうで怖い」

「それなら殴らせろ」

嫌がる様子の類をしっかりと抱きしめながらつぶやく

「それはダメっ」

俺と類の間に割って入ってきた牧野は必死の形相。

「殴らねぇよ」

そう言いながら必死すぎる牧野を見ながら類とかわす視線。

クスっとした笑みがこぼれるのにそんなに時間はかからなった。

たくっ・・・

牧野・・・

お前と付き合うと苦労させられるな。

喧嘩別れで事故にあって、その事故も裏があるし・・・

類は記憶なくしちまうし・・・

お前と付き合うのも楽じゃねよ。

だからこそ大事だっていつも思えるのかもな。

何よりも守りたいのはお前だけで・・・

「牧野」

「なによ」

「俺は類の告白を許したけど、誰にもお前を譲るつもりはなかったからな」

告白は許せても俺以外のやつが牧野が触れられるのはどうにも我慢できなくてつい飛び出しちまったけどな。

正直言えば二度と、どっちもさせねぇ。

小さくうなずいて見せる牧野の頬はほんのりと赤い。

あの時の喧嘩がやっと修正できたという感じだ。

なげーよ。

まて・・・

あれ?

あの喧嘩って・・・理由はなんだったけ?

いまとなれば、どうでもいいか。

 

拍手コメント返礼

ゆみん様

喧嘩の理由はたぶんわからなくなってますよね。

つかつくの言い合いは日常的でしょうからね。

またやってるくらいにしか周りは見てないだろうなぁ・・・(;^ω^)