門前の虎 後門の狼 25(完)

二人の愛は最強なのさと見せつけることができたのかどうか・・・(;^ω^)

田畑君の役割はいったいなんだったのだろう・・・

きっと優紀ちゃんが慰めてくれるはず・・・

総ちゃんがいるから優紀ちゃん総ちゃん以外は目に入ってないかぁ~

ほかの女子も田畑君の落ち込みに気が付いてないことが予想されます。

「あれだな・・・」

「あれだよな・・・」

にんまりと俺たちを見つめる数メートル離れた位置からのあいつらの視線。

「司を骨抜きにできるのはやっぱ牧野だよな」

「それを本能で自覚なしにやってしまうとこはすごいよな」

「牧野だからそれができるんだよね」

俺と牧野の間に水を差すまでのスタートラインにあいつらが並んだのがわかる。

お前らの存在を思いだしたらこいつは俺を突き飛ばしてわーとかギャーとか騒いでしまうだろうがぁぁぁ。

せっかくあれだ・・・

こいつから俺にキスして、できあがってるいい雰囲気を壊わさせがぎゃーたまるか。

苦しいとか。

息ができないとか。

離せとか。

俺の腕の中でのたうち回ってる間はこいつの頭の中は俺でいっぱいなはず。

1%でもお前らにやるもんかと眉を吊り上げて見せた。

「どうして、また腕の力が強まるのよ!」

ぎゃーぎゃーざわつく声に俺を非難するように見上げた瞳が加わった。

「離したくねぇからに決まってるだろう。

折角お前から抱き付いてくれたのに」

「抱き付いてきたのは道明寺のほうでしょう」

顔を赤らめて心の動揺が直ぐ顔に出ている。

「自分からキスより抱き付かれる方がお前は恥ずかしのか?」

忘れてたって顔をすんじゃねぇよ。

「道明寺だっていきなりするじゃない

「何を?」

「だから・・・キス・・・」

キスのとこだけ消え入りそうな声。

「俺がキスすればお前は俺にキスを返してくれるんだ」

俺の言葉に何度も表情を変える牧野は可愛くてしょうがねぇ。

この世界で俺にそう思わせるこいつの存在は天下一品。

近づける俺の顔を避けるように牧野の腕が俺の顎を押す。

邪魔なんだよ。

その手は片手で難なく確保。

確保した腕を引き上げるように力を入れて俺は牧野の身体を自分に引き寄せた。

「俺らのこと忘れてんじゃねぇの?」

「お邪魔なら消えるけど」

煽るような総二郎とあきらの声。

そして一人笑みを作る類。

消えるなら黙って消えろ!

強張った牧野の表情が俺からあいつらに移った。

「道明寺離せ!」

爪を出した猫に顔を引っかかれるような反撃。

「あいつらのことは気にするな」

あいつらから牧野を隠すように胸の中に押しつけた。

「そうそう、気にしなくていいから」

「俺たちは帰るから司は牧野をちゃんと送ってけよ」

「あっ、そうか・・・お前ら一緒に暮してたんだったな」

あいつらが何か言うたびに牧野の身体が俺の腕の中でビクンとふるえる。

「無視してたほうが恥ずかしくねぇぞ」

牧野の両耳を押さえた俺に抵抗せず黙ってされるがままに牧野がおとなしくなった。

恥ずかしいとか・・・

みんなに顔を合わせられないとか・・・

そんなこんなで今のこいつの頭の中はどうしようもなく焦りまくってんだろうけどな。

「じゃましたな」

俺らの横を素通りしたあいつらはそのまま待たせてあった車に乗りこんでいなくなった。

あいつら、何しに来たんだか・・・。

それでも今夜俺たちをいつも以上に親密にさせてくれたのは間違いねぇって思う。

シーンと静かになった夜の街に聞こえるのは俺の腕の中の牧野の息づかいの音だけ。

「帰るか・・・」

緩めた腕の中でコクンと照れ臭そうにうなづく牧野がこれ以上にないくらい愛しくてしょうがなかった。

ゆっくりとした時間の流れをこいつと二人歩きたい。

車は追い返してとぼとぼと歩く。

半身後ろを歩く牧野と手をつないだまま歩く。

つながった牧野の指先が俺の手のひらの真ん中をくすぐるように動く。

それは自分の存在を俺に知らせるような甘ったるさ。

ギュッと握った指先は俺の手のひらで窮屈だとでもいうようにまた動く。

離したり握ったり・・・。

そんなバカげた子供みたいなやり取りが声に出さなくても俺とお前をしっかり結び付けてる気がした。

「あっ・・・道を間違ってない?」

俺の腕を引っ張って牧野が足を止める。

まっすぐ行こうとする俺を左に誘導するように牧野が身体の向きを変えた。

「間違ってねぇよ」

「でもマンションあっちじゃなかったけ?」

「お前は自分の家の道も、もう覚えてないのかよ」

俺の見つめる先にあるのは牧野の両親が住んでる家。

すげー間抜けな顔が俺を見つめてる。

「強引にお前と一緒に住んでも意味がねぇって気が付いた。

お前を俺と離れられねぇって思えるくらい愛させねぇととな」

「俺にすがりつかせて一緒に住みたいってお願いされるまで待つことにした」

だからいったんはお前を実家に戻すことにした。

俺の我儘、願望だけでお前を縛り付けてもそれは楽しくねぇし。

「縋り付かないかもしれないわよ」

「お前が大学を卒業したら俺たちは結婚するわけだから、俺一人が浮かれて一緒に住んでも面白くねぇからな。

俺が無理やりお前を縛り付けてるように思われても癪だ」

これ以上田畑みたいな勘違い野郎が出没するのも迷惑。

「一緒に暮すのをあきらめる代わりに俺が会いたくなったら速攻で呼ぶからな」

「もうッ。縛り付けてると思うけど?

自覚ないんだ?」

くすくすと笑みをこぼす牧野を街灯が照らす。

「このくらいの俺の我儘は許容範囲ないだろう?」

「道明寺・・・」

嬉しそうに顔をほころばすな。

家に帰れると思って喜んでる表情を見せられるとそれはそれでムカつく。

「あっ・・・・」

腰に回した腕が強引に牧野を引き寄せた。

密着した身体から牧野の柔らかな胸の膨らみの感触が伝わってくる。

「ちょっ・・・んっ・・・」

柔らかな唇の感触に牧野の声が詰まる。

押しあてた唇に牧野の切なげな吐息を漏らす。

軽く触れるだけのつもりが抗う素振りが消えて俺を受け入れてキスを返す牧野に煽られて止められなくなった。

頭を力いっぱい抱え込んで舌先が牧野の唇を割って口内に滑り込む。

くぐもった悩ましい声に引き寄せられるように吸い上げる感触と懸命に絡み合う舌先。

舌と唇が痺れる息苦しさの中ようやく唇を離して息を継ぐ。

高揚してとろりとした濡れた瞳で俺を見つめる牧野の表情はとてつもなく俺を誘う。

一気に心音が高まり身体の熱が一点に集中するのがわかる。

どうしようもなくなる雄の本能に火が付く瞬間を何度となく俺に味合わせるただ一人の女。

「やっぱ、今日は帰すのやめた。

お前を帰すのは明日にする」

「えっ?道明寺ッ!話が・・・違う!」

戸惑う牧野の手首をしっかりと握りしめて身体の向きを変える。

「道明寺・・・歩き方・・・変・・・」

お前のせいだッ!

最後までお付き合いありがとうございました。

拍手コメント返礼

りり 様

このお話にもたくさんの拍手ありがとうございました。

俺様の司らしい単なるいちゃこらなお話だったような気がします。(笑)

そうそう類の記憶喪失のお話書かなくっちゃ♪

virgo 様

こちらこそ最後まで読んでくださりありがとうございました。

もうちょっと甘く終わらせても良かったとは思っています。

スリーシスターズ様

相思相愛の二人。

これは花男の王道ですよね。

王道が好きな私には書きやすいお話でした。

もっと横道じゃやなかった王道なお話を作り上げて楽しみたいと思っています。