第11話 花に嵐のたとえもあるが・・・ 12

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-From 1-

「・・・・賭けはもういいの?」

「最初から明日までなんて本気で考えてないよ」

「司だしなぁッ」

「あんまりやり過ぎると俺らより牧野が大変だろう?」

美作さんがニヤリと笑う。

グーの根も出ないとはこの事とか。

「だからほどほどねッ」

西門さんにウインクされた。

このどこがほどほど!?

怒り爆発寸前で大股でキングコング並みに帰って行ったぞ!

ホテルの部屋の中の物が形をとどめているか不安な状態。

その中なに私一人で?

未界のジャングルに足を踏み入れる方が楽ではなかろうか?

大蛇が大口開けて待ち構え、その中にのほほんと入っていくような神経は持ち合わせていない。

「牧野が一人で戻れば司の気も晴れる」

遊んで煽って怒らせて最後の締めは私!

みんなをひきつれて機嫌をとるよりは確かに確実性はありそうだが・・・

私・・・

どうなるんだーーーッ。

生贄の気分?

「ゆ~うき~」

眉を八の字で優紀に泣きつく。

「ここはやっぱりつくししかいないよ。頑張って!」

ポンと背中を押されてた。

「お手柔らかにって司に言っといて~」

「明日は部屋から出てこなくてもいいぞ!」

口々に好き放題!

あのお祭りコンビめッ!

怒りと恥ずかしさ両方が体中を駆け巡る。

顔から火が出る気分。

「あんまりからかうな。牧野が部屋に戻れなくなってしまう」

花沢類の言葉を背に受けながら思い切り走りだしていた。

キョロキョロ人目を気にしながらエレベーターに乗り込む。

私以外に誰も居ないことにホッとため息が出た。

誰も私に目をくれる人などいる訳がないのに赤い顔を他人に見られたくないと思うのは乙女心。

恥じらい、羞恥心。

エレベーターのランプが上へと上がるのに比例して心拍数も上昇するようだ。

口から心臓が飛び出そう・・・

別になにも期待してる訳じゃない!

これは単に道明寺の機嫌を戻すためにやるだけなんだから!

あのお祭りコンビの思惑通りにはいかせない!

今朝まで以上のことが起こる訳はないのだから・・・。

昨日の夜・・・

思い出してまた鼓動が悲鳴を上げる。

部屋の前で深呼吸を数回。

やっぱり鼓動は平均値を倍は超えていそうだ。

カードキーを差し込んでカチャッの音を合図にノブを回す。

「ど・・う・・・みょうじ?」

部屋の中は真っ暗で物音一つしない。

手探りで壁のライトのスイッチを探し出しパチンとつけた。

「道明寺?どこ?」

「なんで、お前がくんの?」

低重音の声が斜め後方から突然飛び出した。

「ワッ!びっくりした!」

「お前・・・あいつらの味方してるんじゃないよな?」

こめかみをピクピク痙攣させて警戒気味の道明寺。

「バ・バカなこと言わないでよ」

「みんながもういいって、賭けは終了」

「あっ!?」

機嫌が直るかと思いきや道明寺の青筋は数本に増えて今にも切れかかりそうだ。

「道明寺?」

「俺はあいつらに許されたって訳だ・・・」

「えっ?」

「俺様をなめんじゃねぇーーーーーッ」

道明寺の気迫に押される様に壁際に私の身体は張り付けられてしまってた。

私・・・

どう何のーーーーッ!

 

-From 2-

両目をギョッと見開いて牧野が身体を固くする。

お前にはなにもしやしねぇーよ。

心の中でつぶやいた。

好き勝手にやられた気分。

それは俺がこいつにいっぱいいっぱい惚れてる証。

それをあいつらも分かってる。

隠すつもりはさらさらないがからかわれっぱなしは癪に障る。

今回の賭けも俺の嫉妬心が強いのを利用して遊ばれた。

分かっていてもあいつらの思う様に反応してしまう俺は情けないほど牧野に惚れている。

だが・・・

あいつらに許される必要もないし、遊ばれる必要もない!

まともにあいつらに付き合う必要なんかなかったんだ。

『はいそうですか』なんて喜ぶ芸当俺にはねぇーぞ。

「ど・・・どうしたの?」

牧野が不安げに俺を見上げてる。

「牧野荷物まとめろ!」

「えっ?」

「いいから早くしろ!ここを出る」

「・・・でも・・・優紀もいるし・・・」

牧野の視線が泳いで躊躇する。

「グダグダ言ってるとそのまんま無理やり連れて行くぞ!」

「・・・やっぱり悪いよ」

「チッ」

壁際に張り付けて動けないくせに言葉だけで懸命に否定する。

お前に拒否権ないてないはずだ。

素直じゃないのは了承済み。

俺よりあいつらを選ぶなんて絶対許さねえぞ。

お前がどうすれば素直になるかは経験済みだ。

強引に唇を黙らせる。

牧野の身体の力が抜けて素直になった。

離した口元から吐息がもれた。

「あいつらに付き合う必要なんて初めからなかった」

「もともと二人で楽しむ予定だったんだから、もう邪魔はさせねェ」

「意地はるなよッ」

「べッに意地なんて・・・」

小さく弱まる声。

誘われる様に唇を重ね合う。

我慢できねェ・・・。

崩れるように重なり合う。

抱きしめている身体の温もり。

素肌に触れる指先に理性が流れ落ちて行く。

どこまでもとめどがなく流れ出る欲する思いを解き放つ。

飽きることなく牧野を抱きしめた。

「あいつら・・・いねーぞ!」

「司らしいんじゃない。まあ、予測出来たけどねぇ」

「俺達遊びすぎたか?」

総二郎に類、あきらがもぬけの殻の部屋に集まって顔を突き合わせる。

「あいつら見てると飽きねーよな」

「司、威張って高笑いしてんじゃねぇの?」

「あいつの機嫌が直れば俺達は安泰」

総二郎とあきらが視線を交わしながらニンマリとする。

「牧野、頑張れよ」

二人の幻影を見つめながら類がつぶやいた。

                                     END

これにて終了。

夏休み期間中になんとか終わらせようと書き始めたお話です。

終わって一安心。

最後はmebaru様のコメントをヒントに書かせていただきました。

ありがとうございます。

拍手コメント返礼

nanako様

ありがとうございます。

無事?完結です。

中途半端な終わり方ですが・・・・(^_^;)

最後は『トンズラ』どこに行く~

・・・と思いつつ続編のおまけの話し書いていますけどね(爆