第12話 ないしょ?ないしょ!ないしょ!? 2

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-From 1-

西田の奴・・・

なにやってる?

普段とたいして変わらない態度なのだがなぜか気になる。

その『なぜ?』が、分からず気に障る。

「キャー」とざわついた隣の部屋。

女性の騒ぎはいつもの事。

子供の頃から慣れている。

牧野以外は見る気もしない。

牧野が俺にキャーキャー言うのは悪くはないがあいつが騒ぐ訳ないよな。

この状況を見たら少しはヤキモチを焼いてくれるのか?

「調子こくな」と蹴りいれられる?

F4の周りの騒ぎは高校、大学とあいつにも免疫できているからたいした反応は示さないか・・・

淋しすぎるよなぁ。

「西田!」

怒のこもった俺の声に落ち着き払った「只今参ります」の西田の態度。

振り向きざまに誰かを背中に隠した雰囲気。

「誰だ?」

「新人の掃除婦ですよ」

にっこりとほほ笑んだ。

西田が笑みを浮かべるだけでも異常なのに接点のない掃除婦の相手するなんてますます異常じゃねぇか。

「西田・・・俺に隠し事なんてないよな?」

「ございません」

こいつの感情・・・

表情からは全く読ませねェから怪しさは底が見えない。

追及しても西田が喋る訳ないよな。

うまくごまかされるのがおちだ。

使いやすくはない食えない秘書。

俺の方がうまく踊らされている。

俺に隠し事する時はいつも一枚ばばぁがかんでいる。

それも牧野がらみ。

牧野は大学の勉強が忙しいから2週間は会えないと勧告を受けたのはつい昨日の大学校内。

別に変わった様子はなかったはずだ。

「会議が始まりますよ」

「あ・・・ああ」

納得いかないまんま席に着いた。

会議中も上の空で気になった。

掃除婦・・・

俺に関係あるはずないのになぜ気になる?

分かんねェーーーッ。

最上階への帰りの廊下。

目につくネズミ色の作業着。

「おい」

声をかけて振り向いたのは昔からよく見かける中年のおばさん。

怪訝そうに見つめ返された。

「どうかしましたか?」

「なんでもねぇ」

「この後は・・・・・なってます・・・」

西田のスケージュールも中途半端にしか頭に入らなかった。

「西田さん!あの子よく働くね」

「気も効くし覚えが早いし、さすがは西田さんの姪御さんだ」

西田とこのおばはん、顔見知りか?

西田って他の社員には一目置かれてるというか煙たがれている存在だぞ。

こんな軽い調子で西田に話しかける人物を俺は見た事ない。

「姪御って、なんだ?」

「西田さんの姪御さんが清掃員のバイトしてるんですよ」

西田に話しかける同じノリで俺にまで簡単に喋りだすおばはん。

西田に聞くより手っ取り早い。

「その子の年齢っていくつ?」

「まだ詳しくは聞いてませんけど二十歳そこそこってところでしょうか」

俺としゃべるのがうれしそうな感じでおばはんは喋りまくる。

「西田お前に姪がいたって初耳だな」

「私にも親戚はいますから」

社会学習の為にバイトをさせてるんです」

そう言いながら一瞬西田の顔が強張る。

すぐに元の表情の見えねぇ能面に戻ったが、俺の見間違いじゃないはずだ。

「その子の名前教えてくれる?」

振り向いたその先におばはんの姿はなくコンテと一緒に下降するエレベーターの中へと消えていく。

「坊ちゃんが気にする様なものではありません」

「お前の姪なんだろう?」

「だからなおさら気にしてもらはなくて結構です」

「牧野じゃねぇよな?」

「今さら何のためにこんなところでつくし様に清掃員のバイトをさせる必要が?」

これ以上質問をさせない様な西田の強気の態度。

牧野に何かさせるんだったら道明寺の内情を知るためには俺の傍でって言うのが妥当だよな。

確かにそれはそうなんだが・・・

気になるんだから仕方ねぇッ!

「西田・・・その姪に会わせろ」

「いいんですか?」

「はぁ?」

「私の姪に坊ちゃんが興味もったなんてつくし様が知ったらどうなるか・・・」

「お前が言わなきゃばれねぇよ」

「私はつくし様の味方ですから」

澄ました顔で言って俺を追い越す様に前へと歩き出す。

くそーーーッ!

絶対自分で会って確かめる!

西田の背中に向けてどうにもならない不満をガバッと吐き出していた。

 

 

-From 2-

道明寺グループ本社ビル2階総務室廊下前。

せっせとモップを動かして掃除する。

ここなら道明寺が来ることもないだろう。

御曹司・・・

跡取り・・・

玉の輿・・・

すれ違う3人の女性社員の言葉にドキリと胸が高鳴った。

エレベーターが来るのを待ちながらも3人の話は尽きない。

結構美人系のお姉さま方。

「見た?」

「見た!」

「しっかり挨拶したわよ」

「うちの御曹司の方がいいわよねぇ」

キャハッと笑いあって着いたエレベーターに乗り込んだ。

道明寺と他の御曹司を品比べ?

その辺の学生と同じノリだ。

分配は道明寺に上がったようだ。

ここは喜ぶべきなのだろうか・・・

複雑な心境。

視線をエレベーターの先からモップの進行方向に戻そうとクルッと振り向く。

「テッ!」

目の前には手触りのよい高級そうなグレーのスーツ。

男性の胸に顔を突っ込んでしまってた。

「すっすいません」

バッタのように頭を下げて平謝り。

「君、気をつけてないと困るよ。大事な取引先の常務さんなんだぞ!」

高級スーツのその横に割って入った中年のおじさんの声が頭の上から響いてくる。

見上げた先は髪の生え際が後退したはげ親父。

頭のてっぺんまで真っ赤になって怒ってた。

怒鳴り声は道明寺で慣れている。

あっちの方が相当ビビる。

「本当に申し訳ありませんでした」

「いいよ。そんなに謝らなくても、僕の方も気がつかなかったんだから」

「それになんの害もない」

「逆に若い女の子が胸に飛び込んできたのは久しぶりだ」

頭を上げた目の前ににっこりとほほ笑む男の人。

声も若いし・・・顔艶もいい。

若い?

若くない?

年いくつ?

中年剥げ親父には負けるけどいずれはツルツルになりそうな生え際の後退ぶり。

顔がいいだけにもったいないと思って眺めてた。

「それじゃ」

軽く手を上げてまだなにか言いたそうな中年オヤジを促してその人は去っていく。

貫禄あるなぁとその背中を見送った。

続きは ないしょ?ないしょ!ないしょ!?3 で

最近の人気のお話はこの連載のお話のようです。

まだ設定が見えてない分楽しみがあるのかな?

今回はいつもと違う感じの男性を絡めて見ようと思います。

いつも顔のいい男ばかりじゃおもしろくないなぁと浮かんだのが・・・

顔はいい、性格もいい御曹司。ただ一つたらなかったのは髪の毛だったのです♪

別にあってもなくてもつくしには関係ないでしょうけど(^_^;)

拍手コメント返礼

nanako様

こんにちは。

隠し通せるのか?最後はばれる?ばれない?

まだどう転ぶか分かりません(^_^;)

いろんな方にいただいたコメントからヒントにもらえること多々あるんです。

残暑きびしですがnanako様も御身体御大事に。