第12話 ないしょ?ないしょ!ないしょ!? 3
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午前中の仕事も一段落。
屋上でベンチに腰掛けておばさんと並んで座ってお弁当を開いた。
「弁当は自分で作ったの?」
「ハイ、安上がりですから」
卵焼き、ウインナーにきんぴらにおにぎり2個、さばの煮つけは昨日の晩御飯のおかず。
たいして手を加えたものではない。
私のお弁当としてはやや少なめな量だけど・・・
道明寺の奴が失礼にも私の腰を抱いた後「少し太ったか?」なんて言ったせい。
食事制限しなくてもこのバイトでやせ細りそうな気分になっている。
「夜の残りものですけどね」
「いいお嫁さんになれそうだね。つくしちゃん」
「そうですかぁ」
御世辞でもうれしいものだと笑顔になった。
道明寺の顔がプカっと浮かぶ。
あいつと結婚したらこんなお弁当作ることなんてないと思うけど。
「うちの息子26歳だけど会ってみない?」
「えっ?」
「今は彼女いなさそうだからねぇ」
「親が言うのもなんだけど真面目ないい子だよ。将来有望な外務省勤務。それに次男だし、養子でもいいから」
期待した顔で見つめられている。
「・・・あっ、うち弟がいるんで・・・」
そんな問題じゃない!
道明寺のおかあさんの拒否できない頼みごとでバイトしていて、ここで息子を紹介される展開って・・・
なんなのよぉぉぉぉぉ。
「私はつくしちゃんが気に入ったのよ」
「まだ知り合って半日ですよ!」
「それに彼氏いますから」
「学生?」
「まあ・・・同じ大学ですけど・・・」
「男は社会人になってからだよ」
全然聞いていない?
効いてない?
引きも切らずに「会うだけでもどう?」と食事を忘れた感じで詰め寄られる。
だから彼氏がいるんだってばぁぁぁぁぁ。
それも相当強烈で個性的な奴。
ここの御曹司だぞ!
言える訳なかった。
「とにかく無理です!」
「私は諦めないから」
横で弁当をかき込みながら力強く頷くおばさん。
何の決心してるんだぁぁぁぁぁぁッ。
息子を紹介されそうになったとばれただけで道明寺から拉致されて閉じ込められそうだ。
これで会う羽目にでもなったら・・・
思わず背中にツッーと冷たい汗が一滴流れてた。
「プルッ」と携帯音。
慌ててポケットから取り出す。
携帯の相手は西田さん。
これ幸いと「すいません」と断ってベンチから立ち上がりおばさんから離れた。
「今大丈夫ですか?」
「ハイ」
「坊ちゃんにばれそうになりました」
「えーーーっ!」
叫んだ口元を慌てて手のひらで塞ぐ。
「ばれたって、なんでですか?見られてませんよね?」
「見られてはいないんですが、坊ちゃんの勘も馬鹿に出来なくて・・・」
私が給湯室から出て行ってからの一部始終を事細かに西田さんが告げる。
掃除婦のおばさんと偶然会って聞いたことで西田さんの姪が私じゃないかと疑ってる道明寺。
なんでこんな時だけ勘がさえる?
「つくし様のことになると犬以上に鼻が効くようで・・・」
「どうするんですか?」
これからの対策を伝授されて携帯を切った。
「彼氏から?」
「・・・いえ・・・ 西田・・・のおじさんからです」
さんをおじさんに慌てて変えておばさんに答える。
「そう、私は用事を思い出したから先にいくね」
携帯の相手が彼氏じゃないと聞いて喜ぶ素振りでおばさんがベンチから離れていく。
ベンチに戻り頭を抱えるように座り込んだ。
そのそばから聞きなれた着信音。
げーーーーーー道明寺だよ。
唇かみしめて力いっぱいに握りしめた携帯を睨みつけるように見つめてた。
-From 2-
「遅いッ」
不機嫌そうな声が携帯から響く。
なかなか携帯に出れなかったのは西田さんからの情報のせい。
西田さんからの連絡の後すぐっていったいどんだけタイミングが悪いのか、心の準備ができてなかった。
「出たんだからいいでしょう!」
無理やりの努力で声を荒げる。
・・・
・・・・
・・・・・
この沈黙が怖い。
「お前、今どこ?」
「どこって?大学に決まってるでしょう」
いきなりの確信に声が上ずる。
「今日は講義はないって言ってなかったか?」
「し・・調べ物があって来てるの。もうすぐ帰るけど、なにか用?」
・・・・
・・・・・
静かになった携帯の変わりにドキドキと心音が大きく響く。
「お前、俺になにも隠してねぇよな?」
なぜこうもドキリとすることをストレートで投げてくるのか。
面と向かってじゃなかったことだけが救いか。
「今さら何の隠し事があるのよ」
声が1オクターブほど上がって自分の声じゃないみたいだ。
ここからが挽回だとゴクリと唾を飲み込んだ。
「西田さんに聞いたんだけど・・・」
「西田さんの姪がバイトしてるんだって?」
「道明寺がその姪の子を気にしてるって聞いたんだけど・・・」
「会わせろってどういうつもり!」
道明寺には反論させず一気に喋りまくった。
「なんでお前がそれ知ってる?」
携帯の向こうで焦り気味の道明寺の声。
「ぼっちゃんが変な気をおこさないように夜にでもデートしてやって下さいって携帯がかかってきたの」
「お・・俺がお前以外の女に興味持つ訳ねぇだろう」
「じゃあ!なんなのよ!」
「・・・西田の・・・姪?おまえかなぁ~なんて」
要領を得ない尻つぼみの声。
「あっ?」
「何でもねぇよッ」
最後は怒鳴り声で誤魔化してきた。
「私が知らないところで私以外の女の人と会ったらいやだからね」
最後は一つ・・・坊ちゃんが喜ぶようなセリフをお願いしますの西田さんの言葉を念頭に置いて声を必死で作る。
効いたか?
「・・・おっ」
照れが交った道明寺の声色にうまくいったと確信をもった。
「今日会えるのか?」
「えっ?」
「勉強が忙しいって・・・」
「西田がデートしろって言ったんだろう?」
それは事の成り行きで喋ったセリフ。
会うって・・・
会ってデートしてウソをつきとおせる自信はないぞ。
会えるかァァァァァァ。
「仕事忙しくないの?」
「西田が考えてるだろう、じゃなきゃあいつがお前にデートしろなんて言う訳ない」
断れる確率がどんどん下がってくる。
西田ーーーーッ。
デートの予定は入ってなかったはずだよね。
いない相手に確認しても収まるはずがない。
「それって・・・今日?」
バカなことを言って「当り前だろう!」とまた怒鳴られる。
「仕事が終わったら連絡する」
返事をする間もなく携帯は切られてた。
続きは ないしょ?ないしょ!ないしょ!? 4 で
謎の御曹司だけではなくて、もう一人エリート公務員登場!
まだ実際には登場してませんが(^_^;)
登場するのかぁぁぁぁ。
どうなる?
どうする司君!
司を追及するつくしのくだり、mebaru様のコメントをヒントにいたしました。
ありがとうございます。