第2話 抱きしめあえる夜だから 10

*

-From 1-

もうすこし・・・

もうちょっと・・・

まだたんねぇ~

・・・って、いつまでキスをねだるつもりだ。

最初は素直に応じてた私もヤバいと感じてる。

そろそろと道明寺の指先は胸のあたりを彷徨ってもう片方は太ももの上を移動中。

「ど・・・道明寺・・・」

「あっ?」

「この辺で・・・抑えといて・・・」

「まだ・・・みんなお風呂入ってないから・・・」

道明寺の腕をつかんで動きを抑制する。

「風呂から出たらまた当分二人っきりにはなれねぇだろう?」

道明寺の指先が私の指先を絡め取る。

「今はそんなこと考えてる場合じゃないでしょう?」

なぜか疑問符を末尾につけた気の弱さ。

「俺・・・いつもそのことばかり考えていた」

道明寺の唇が私の頬に軽く触れながら形を変える。

「少しでも長くここにいた方がいいだろう?」

そこまで長く風呂場には入れないと思うんですけど・・・

それでなくても道明寺と触れ合う体温でのぼせそうなのだから。

早くここから出たい!

そんな私の気分は察知せず道明寺の触れる密度が増して行く。

「あッ・・・あのね?」

「・・・・多分・・・寝る部屋は二人っきりだと思うけど・・・」

「それを早く言え!」

ザブンと湯船から立ち上がり道明寺が風呂場を後にする。

「エッチはなしだからねッ!」

叫んだ言葉が耳に届いたかどうかは疑問が残る。

広くなった湯船に膝を抱えたままの状態で固まった。

道明寺が風呂を出てから数分、着替えを終えてみんなの居間に戻る。

照れを隠す様にタオルで髪の毛をガシガシと拭きながら。

「落ち着かなかった・・・」

ポッリと言った言葉はママに届いたようでクスッとママの口元から笑いがこぼれてる。

「2階に布団敷いておいたからね」

「邪魔しないから」

どこにどう気を使われてるんだか「ありがとう」と言いながら顔が変に強張って笑えない。

「あー俺、眠い!」

どうみても眼力いっぱいの視線からは眠気は見えてはいない。

「時差があるからなぁ~」

わざとアクビを漏らしてる。

「あっ、そうだね、NYから帰って来たばかりだものね」

進が道明寺の芝居に化かされた。

「気の効かないお姉さんですいません」

頭を下げる必要なんてどこにもない。

進の無垢な分にも困ったものだ。

だから大学に行っても彼女が出来なんだよ~と余計な心配。

「それじゃ、お先に失礼します」

道明寺の腕がぐるっと首に巻きつく。

「まだ、髪が乾いてない」

「そんなのどうとでもなる」

さっきの風呂場までのDVD再現のように抵抗する間もなく階段の前まで引きずられる。

「ほら、部屋まで案内しろ」

期待感丸出しの顔で道明寺が見つめてた。

-From 2-

案内された部屋は南向きのちぃせぇー部屋。

ドアが一つに窓も一つ。

これが一般家庭だってつくしが笑う。

シングルベット一つにつくえが一つ。

これだけでいっぱいな感じだ。

「前のアパートから私の荷物そのまま持って来たんだって」

ベットの横に髪を拭きあげながらつくしが腰を下ろした。

ベットのマットレスがギシッと小さくきしむ。

それだけでドキッと心音が飛び跳ねた。

「部屋があれば道明寺と別れても帰ってこれるだろうって冗談言われちゃったよ」

「それじゃあこんな部屋の必要はねぇな」

「俺とお前が別れるなんてことないだろう」

つくしが照れたように小さく「うん」と頷いた。

つくしの足元、ベットの下には一組の布団。

「どっちで寝るんだ?」

「どっちでもいいよ」

シングルベットに二人はきつそうだ。

布団なら落ちる心配もねぇし床に足が出ても問題ないだろう。

落ちる心配もねぇし。

「布団でいい」

「それじゃ、私がベットね」

思わずポカンと開いた口元を気を取り戻す感じで慌てて引き締める。

「おい!一緒に寝るんじゃねぇのかよ」

「無理に決まってるでしょう」

呆れた顔で言い放たれた。

冗談じゃねーぞーーーーッ

「お前、さっきなんて言った!」

じっと大きく見開いた目が固まって頬を染める。

「・・・寝る部屋は・・・二人っきりって・・・」

「なんで二人っきりの部屋で別々に寝るんだよ」

「それも布団とベットだぞ!離れ離れじゃねぇかぁッ」

「離れ離れって・・・」

手はつなげる距離だとつくしがゲラゲラと大口開ける。

「ここ実家だからね」

分かってる。

緩んだ口元をぎゅっと締めてつくしが真顔になった。

「隣の部屋には進がいるんだからね」

それがなんだ。

「変なことしたらすぐみんなんにばれるから」

ばれてもかまわねーぞッ!

「ばれないようにすればいいだけだろう?」

「・・・ばれないって・・・」

つくしの腕をとり俺の方に抱き寄せる。

「キャッ!」「ワッ!」

「ドタッ」

部屋に響くつくしと俺の声に重なる倒れ込む床の音。

体勢を崩したつくしの全体重が俺の片腕にかかってこらえきれずに二人で布団の上に倒れこんでしまってた。

「今の・・・下に響いたよね?」

オドオドした感じにつくしがつぶやく。

「大丈夫だろう?」

「もう、ヤダッ!変に思われちゃうよ」

火照る頬を隠す様につくしが両手で顔を覆う。

「勝手に想像されるなら今からなにやってもいいんじゃねぇか」

「どっからそんな考えになるのよッ」

「お前が欲しいからに決まってるだろう」

つくしの唇と触れ合いそうな距離でつぶやく。

「そう言うことは家に帰ってから言ってくれないかな」

俺の唇を少し避けるように顔を横に反らせながらつくしが真っ赤に照れた。

「ブハハハハハ」

噴き出す様に笑ってた。

こいつが恥ずかしがりやで素直じゃなくて手がかかるのは理解済み。

ややこしい女に惚れたものだ。

「もう1日ぐらい我慢してやる」

「その代わり寝るのは一緒だからな」

一つの布団にもぐりこんでつくしを抱き寄せた。

いつもの余裕のあるキングサイズのベットよりぎりぎりの空間の小さい布団。

窮屈感なんてまるで存在しなくって愛しい思いだけに包まれる幸福感。

お前と抱きしめあえる夜。

離れていられるのが不思議なくらいに思えてくる。

本音を言えばもっと深く抱き合いたいが我慢を思いやりに変える余裕もついてきた。

今は・・・

温もりを感じることだけでも十分だ。

こうじゃなきゃつまんねぇ

心の中でそうつぶやいた。

続きは 抱きしめあえる夜だから 11

オッ!司大人の対応!

という感じで書いてみました。

猪突猛進型の方がどちらかと言えば好みなんですが(^_^;)

拍手コメント御礼

nanaco

まさか実家では~

という結果になりました。

あとは帰宅してからゆっくりと♪

水入らずではなかったんですよ。

旦那は単身赴任中で週末しか帰らないもので~

2泊3日完全に一人の時間を楽しみました。

台風直撃の影響たいへんだったんですね。

私の方はそこまで影響はなくて助かりました。

リゲル様

夫婦だから無問題だけど、家族がいる所でしちゃうのはつくしには無理だろうなという観点からお話を進めさせていただきました。

司はどこでも構わないでしょうけどね♪