進の姉貴夫妻観察日記 1(抱きしめあえる夜だら 番外編)
*今日家に姉貴が帰ってきた。
身分違いの恋に苦悩しながらなんとか結婚までこぎつけた姉貴。
婚姻先を追い出された訳ではなさそうなので安心する。
あの姉貴にベタ惚れ状態の道明寺さんならしばらくは大丈夫だと安心している。
姉貴のどこがいいのか聞いたなら「全部惚れてる」だもなぁ。
道明寺さんが出張でいない間の里帰り。
「家を建てたの知らなかったよ」
なぜ知らせないと頭をつかまれげんこつグリグリって・・・
俺!中坊じゃないぞッ。
少しはセレブの奥さまらしくなったかと思ったが、全然変わっていない姉貴の態度にホッとした。
久しぶりに4人で囲む食卓。
にぎやかさが増していつにもなく上機嫌なオヤジ。
「つくし~」とたまに酔っ払って寂しがって涙をほろりと流すことは内緒にしておこう。
「頻繁に帰ってこられたら心配になるわよ」
冗談かマジか分かんない顔のおふくろ。
「心配なんかさせないから大丈夫」
にこやかに姉貴が言い放つ。
姉貴が返ってくるとしたら道明寺さんと喧嘩して気が収まんなくて屋敷を飛び出すパターンはありそうだけど。
それも痴話げんかかじゃれあいかそんなもんだろう。
深刻な事ってこれまでにほとんど終わってしまったと僕は見ている。
「お姉ちゃん道明寺さんと喧嘩するたびに帰ってくるかもしれないもんねェ」
からかう様に言ってポクッと殴られる。
相変わらず手は早い。
次の日姉貴とおふくろは楽しそうに連れだって出かけてった。
女の買い物には付き合えないと僕は辞退を申し入れる。
土曜日にデートの相手もいないのかと余計なひと言。
「姉貴だって道明寺さんと知り合わなければ同じようなもんだろう」
「結構もてたわよ」
マジな顔で言われて驚いた。
「へぇ~それ、道明寺さん知ってんの?」
べロ出してそのまま姉貴はおふくろと出て行った。
自分の部屋でのんびりと過ごす。
一人の時間の使い方も最近慣れてきた。
「ピンポン~」のベルの音。
こんな時オヤジはテレビの前から離れない。
慌てて2階から降りてインターホンを確認する。
長身のスーツ姿の男。
セールスなら御断り。
インターホンの画像を見て固まった。
道明寺さん?
姉貴の話では帰国は明日って言ってなかったか?
焦らなくてもいいのに焦ってしまう。
あの道明寺さんの独特のオーラーの威圧感。
姉貴がいなけりゃ太刀打ちできそうもない。
「とうさん!道明寺さんだ!」
「えっ!」
慌ててリビングからオヤジがかけて来てインターホンの手前でドタッとこけた。
転がるように玄関まで男二人で行ってドアを開ける。
俺達の顔を見て道明寺さんの瞳に落胆の色が映る。
「つくしは来てませんか?」
ここでにこりと笑みを向けられた。
その笑みに無言の威圧感を感じるのは僕だけだろうか。
「来てるけど・・・ここにはいません!」
オヤジも僕と同じく緊張してるのか、日本語がおかしくなっている。
道明寺さんからしたら姉貴が道明寺さんに会うのを拒んで隠れてると思われかねない。
「今、母と買い物に・・・」
僕がフォローした言葉も道明寺さんの耳には届かなかったようで「つくしどこだッ!」と血相変えて家の中に飛び込む道明寺さんの背中をボォーと見送った。
その慌てふためく後ろ姿にはさっきの威圧感はなくなってご主人さまを求める飼い犬の様。
世界を牛耳る道明寺財閥の総帥のかけらも残ってない。
姉貴惚れられてるなぁ。
再確認させられた。
「兄さん!靴!」
「おう!スマン」
慌てて靴を脱いで玄関先に投げ捨てる道明寺さんに僕にも余裕もできてククッと笑いが漏れる。
オヤジの方はどうしたらいいか分からない感じでまだオドオドしてる。
姉貴がいないのを確認して道明寺さんが玄関先に戻ってきた。
「そんなに焦らなくても・・・」
投げ捨てた靴を玄関に並べながらニヤリ笑える心の余裕。
それも道明寺さんが姉貴に夢中だと分かるから。
「あ・・・焦ってなんかねぇぞ」
口ごもる感じに言って顔を赤らめている。
「つくしはママと買い物に行ってるよ」
そう言って緊張感がようやく溶けたようにオヤジが笑い声をあげた。
「兄さんが姉さんの事を愛してるのしっかり確認したから」
悪戯っぽく言った僕になにか言いたそうに唇を尖らせて道明寺さんが口をつぐむ。
姉貴をからかうよりおもしれぇーかも!
そんな思いが消えなくて、「グフフ」と笑いがこぼれて笑いが止まんなくなった。
コメントから思いついた抱きしめあえる夜だら 番外編。
つくし、司の二人様子をつくしの家族側から書いてみたらどうなるだろう?
それなら進が一番いい人選では?
そんな感じで里帰り編番外編を数話書いてみたいと思います。
賛同得られるといいのですが(^_^;)