第12話 ないしょ?ないしょ!ないしょ!? 25

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-From 1 -

連れて行かれたのは都内の高級住宅地の一角。

周りを木々に覆われた閑静な雰囲気たたずまいの純和風造りの邸宅。

看板も掲げずに、一般にはそれと知られてない有名な料亭らしかった。

「財政会のトップしかこれないんだぞ」と道明寺が私に耳打ち。

「ここならお二人のことも外にはばれませんから」

後ろから付け加える西田さんを余計なことをしやがって見たいな目で見て道明寺が舌打ち。

玄関の手前にどこかで見た記憶の男性が立つ。

視線があって、さっと顔いろが変わったのは私ではなく相手の男性。

あの意識過剰の早・・・なんだっけ?

名前も忘れてる。

花沢類を紹介しろとか付き合ってるんだろうとか言いだして私を脅そうとしたのは先週の出来事。

「あーーーッ」

「どうした?」

思わず声を上げた声を両手で塞ぐ。

「申し訳ありませんでした!」

目の前に頭をひれ伏して土下座。

目が点になった。

「何だ?」道明寺まで怪訝な顔。

「こいつ誰に謝ってる?俺か?お前?」

私の顔を覗き込んだ道明寺の目があやしく光る。

「俺はこんなやつ知らねぇぞ・・・」

「お前!つくしに何かしたのか!?」

なぜこんなときだけ感が冴えるのか。

土下座の男は道明寺の声に完全に委縮してしまってる。

「大したことじゃないから・・・」

「なんで大したことなくて大の大人が土下座する」

「ほら!掃除のバイトの時ちょっとねぇ」

「ちょっとってなんだ?」

「お前のちょっとはちょっとじゃねえだろうがぁ」

道明寺の威圧は私に移行気味だ。

「ほら、私の彼氏を花沢類と勘違いしてね・・・」

「それだけだから・・・」

場を察した西田さんが土下座の男を連れ去るように別な社員に指示を出す。

「西田、後のことはしっかり報告させろ」

こんな時の道明寺の威圧感は周りをピンと張りつめさせる。

そして私に道明寺の顔が向いた。

「だからなんで類が彼氏なんだ」

「気にくわねぇ」

そこに話を持っていかれたらどうにもならない。

「誤解が解けたことに嫉妬しないでよね」

「るせっ」

不機嫌な顔にさっきの威圧的要素は全くなくなって思わずふくように笑い声を上げてしまった。

「笑うな」

「だって、道明寺が・・・」

言葉を笑いが遮る。

照れくさそうに顔をゆがめる道明寺はやんちゃな部分が丸出しで、今から接待をする側の緊張感は抜け落ちている。

「じゃれ合いはそれくらいで」

西田さんの声に顔を見合わせて道明寺の顔が気まずそうに小さくほころんだ。

通された一角は庭園の見える様にふすまを開ききった広々とした座敷。

座敷の中をそよ風がゆっくりとふき抜けて気持ちいい。

席の数から推察すると6人程度の少人数の食事会らしかった。

「少し早く着いたか」

道明寺に勧められるままに座布団に並んで座る。

正座は苦手なんだよなぁ。

数分後に相手側が3名が現れた。

金髪美女に従う男性陣も典型的な白人容姿の外国人。

当たり前か・・・。

にこやかに会話にかわされる中、妙な緊張感に包まれる。

最近は片言の英会話なら少しはついていける。

道明寺に婚約者と紹介されて慌てて握手を交わす。

表情を崩す道明寺とは対照的に緊張感から抜け出せずにいる。

仕事がうまくいってなによりです。

これからもいい関係を~

みたいな意味の会話が穏やかに続く。

食事もさすがにおいしい。

が・・

目の前の食べ物に箸が進まない。

上機嫌で早口でしゃべる道明寺。

完全にその会話は聞き取れなくなった。

でも・・・

その内容はうすうす察しがつく。

英語が得意でなくてよかった。

本当にそう思える道明寺の緩んだ顔。

後ろの方では西田さんが真顔のまんま顔がこわばった。

金髪美女は道明寺の会話の中でちらちらと私に視線を移して小さく笑い声を上げる。

「変なこと言ってないでしょうね」

道明寺の袖の端を我慢できずに引っ張った。

「心配すんな、俺がお前のことをどれだけ大事か言ってるだけだから」

ニンマリと緩んだ顔が目の前でますます緩む。

これ・・・

接待だよね・・・

恥ずかしさにここから逃げ出したくなった。

恐る恐る視線を向けたその先でにっこりほほ笑む美女と視線がぶつかった。

「うらやましいです」

聞こえてきたのは綺麗な日本語。

日本語しゃべれるんだ・・・

感心してる場合じゃないよーーーッ。

泣きたくなった。

 

-From 2 -

「それじゃ、そういうことで」

にこやかに握手を交わす道明寺と美女。

話が見えてないのは私だけ?

何がどうなった?

「お前、明日は会社来なくていいから」

はぁ?

それはそれでうれしい気もするのはなぜ?

「明日はご令嬢の相手を頼む、それがお前の仕事だ」

「お前のこと可愛くて妹みたいだと」

上機嫌に顔をほころばす道明寺。

「東京は初めてだそうだから案内してくれ、俺は時間ねぇし」

「私がいなくてもいいんだ」

少しすね気味に言ってみる。

「その代わり、朝まで一緒だからな」

道明寺の顔がニヤケている意味がよくわかった。

「きょ・・・今日は帰りたんだけど、週末からその泊りっぱなしだし・・・」

「聞こえねぇ~」

しっかり聞いてるじゃないかぁぁぁぁぁ。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!

拉致された。

あくる朝、美女の滞在中のホテルの前で道明寺と別れる。

走りだす車を見送ってホテルのロビーへと向かう。

待ち合わせは1階の広々としたロビー。

あんな美女が人待ち顔で立っていたら目立つだろうななんて考えながらあたりを見回す。

まだ来てなさそう・・・。

数メートル先に金髪の男性。

ハリウッドスター?

周りのオーラーが輝いてる感じ。

ギリシャ神話から抜け出た様。

F4とは違う輝きを放つ。

そのまま見ていても飽きないイメージ。

道明寺が横にいたら「浮気すんな」と怒鳴られるぞ!きっと。

その美青年と視線が合ってニコッと頬笑みを向けられた。

目の前に段々と近づいたほほ笑みは「ハ~イ」と軽く唇を開く。

えっ?

あっ?

ただの挨拶?

でも・・・

この声・・・

聞きおぼえがあるん・・・だ・け・ど・・・。

「昨日はありがとう」

えーーーーーーーッ!

まさか!

昨日の美女!

背格好は似ているけど・・・

髪は短いし、男だし・・・

声は一緒だし・・・

どうなってんだーーーーーーーー。

パニックになって言葉にならない。

「驚いた?」

誰でも驚くよ。

「ど・・どう言うことですか?」

「あっ女装の趣味はないからね」

そしてまた天使の頬笑み。

もともと双子の交渉相手。

姉貴が日本に来るはずだったが直前に彼氏と旅行に出かけたせいで通称『ジョン』が日本に派遣されることになったらしい。

「それなら別に男性でもよさそうだけど」

「相手先が男性の場合は姉貴が交渉した方がスムーズに行くからね」

「反対に相手が女性の場合は僕」

軽めの調子でにこやかな告白。

確かに・・・

場合によっては見惚れているうちに交渉は終わってるかも・・・・・。

「姉貴の前であんなに別な女性のことべた褒めする男性を初めて見たよ」

「姉貴って言っても僕の変装だけどね」

「結構面白いんだよね、ばらした後の相手の反応」

ケラケラと大口を開けて声を立てて笑うジョンは飾らないザックバランな性格の様だ。

「道明寺にばらすより君にばらした方が楽しそうだし」

その魅了するほほ笑みの下には悪魔が見えるようだ。

結局からかわれてしまってる。

このことが道明寺にばれたら・・・

ただじゃ済まなそう。

「案内を頼むね」

全く悪びれた様子など微塵もなく当たり前の様にハグされた。

そう言えばいましたねそんな男性社員。

覚えておいででしょうか?

私もほとんど忘れていました。

実は美女はハンサムだった!

なんて思わぬ展開いかがでしょう?

そして道明寺に秘密が~出来たって展開。

これでまた終わりが遠のいた(^_^;)

拍手コメント

けいさ☆様

金髪美女とのやりとり見たいです?

次のお話出来上がってるから少し追加してみます。

つくしの自慢しまくり?

いえいえ、自分がどれだけ惚れてるかしゃべってるだけかも~