ハロウィンの夜に 7

 *

「牧野」

花沢類が気を利かせてどこからか椅子を持ってきてくれた。

優雅に座るなんて余裕はない。

マントのせいで腰を曲げるのも苦労する。

手が自由にならないのがこんなに体中の動きを抑制するとは思わなかった。

立ってるのはさすがに限界で・・・。

道明寺のやつーーーーーッ

「喉かわいたろう?」

スマートな感じでカクテルグラスを口元に寄せられる。

方膝ついてにっこりほほ笑む西門さん。

流される雰囲気に口元をクラスに近づける。

ゴクンと喉を鳴らす状況でふと視線を上に向ければ道明寺の顔に青筋が見えた。

その道明寺の姿を隠すように美作さんが現れる。

皿の上には数種類のおいしそうな果物。

「糖分摂ると疲れがとれるよ」

少し強引気味にサクランボが唇に触れる。

それを口に含んだ。

周りから聞こえる悲鳴?感嘆!狂乱の声?

どう見てもかしずかれてるよね・・・私。

贅沢すぎるッ。

それもF4!

いやF3か・・・

一人は今にも切れそうな雰囲気ではどす黒い雷雨を降らせてきそうだ。

「牧野ぐるぐる巻きで身動きとれずにかわいそうだから」

花沢類の声にも敏感に不機嫌傾向で反応する道明寺。

本来ならあんたが私の世話するべきなんでしょう!

イヤ・・・してもらってらそっちの方が困るかも・・・・。

不吉な予感。

「貸せッ!」

「俺が全部やってやるよ」

西門さんと美作さんを私から遠ざけるように割って入ってグラスも皿も全部とりあげる道明寺が見えた。

本気で世話を焼いてくれるつもりだろうか?

やっぱり不安が先に立つ。

「司、お前が人の世話やけるのか~」

「お前がやけるのは嫉妬ぐらいのもんだろう」

もっ!この二人は道明寺を煽るのはやめてほしい。

どうせなら機嫌を直してくれないものだろうか。

ニンマリ悪戯気味の二人の視線。

期待するのは無理みたいとフッーとため息が出る。

「道明寺、マントから両腕だけでも出してもらえたら楽になるんだけど」

「そしたら自分で出来るし・・・」

「これじゃ楽しくないよ」

呆れたような顔で道明寺が私を見つめてる。

どうして私が道明寺にそんな顔を向けられないといけないんだぁぁぁぁぁ。

「無理!」

「駄目!」

「ヤダ!」

威圧感が最後はふてくされ気味の様相を含む声色。

呆れて言葉も出てこない。

「牧野あきらめな、司は独り占めしておきたいんだよ君のこと」

私の顔の先には花沢類の顔がひょこっと現れてクスッと笑った。

言葉では反応できずに身体の中がポッと熱くなる。

「どけっ類!」

花沢類の身体が引きはがすように離れていく。

「もう、帰るぞ!」

「えっ?」

「まだパティー終わってないよ」

「お前そのぐるぐる巻きのまんまでいる気かよ」

「絶対俺はこのマントをとらせる気はないからな」

怒りのこもった声を耳元で宣言されたと思ったら身体がひょいと浮いて・・・

わーーーッ!

横抱きにされている。

「構わねえよな」

「牧野は司に落札されたんだからいいんじゃねぇ」

薄情すぎるっーの。

「それじゃ、好きにする」

好きにするって・・・・

どうすんのよーーーーーッ。

「ちょっと、ヤダ」

「暴れんな、あんまし暴れるとここでキスするぞ」

「ウッ」

それはそれで困る・・・。

このまま行ったらそれ以上に困るのか?

イヤじゃないけど・・・。

困ることはないんだけど・・・。

折角のハロウィンの夜。

楽しむはずの料理にお酒に仮装パーティー。

もっと楽しんだ後で雰囲気も良くなって・・・

なんて願いは道明寺には届きそうもない。

格好が天狗だしね。

「二人っきりのほうがいいだろうが・・・」

「微妙につかれそう・・・」

身体の力を抜いて道明寺にすべてを預けた。

で・・・

行きついたのが道明寺の部屋で・・・

部屋の中はハロウィンの飾り付けがしてあっていつもとは違う雰囲気。

「どうしたの?」

「本当はお前と二人で楽しむつもりだったんだ」

なんかクリスマスと勘違いしてないか?

ハロウィンて二人で楽しむものだっけ?

やっぱりなんだかびみょう~。

「マントとるぞ」

「やっぱ恥ずかしいよ」

「俺は恥ずかしくねぇぞ」

「それに俺が落札したんだよな」

道明寺の指先がマントの端をつかむ。

「笑ったらイヤだからね」

「笑うわけないだろう」

ゆっくりと道明寺の手が動いて黒いマントが私の身体からはがれ落ちた。

あんなことやこんなことまで行きたかったのですが(^_^;)

sako様のつくし目線のF3をというリクエストにお答えして追加して見ました。

次は「つくしチャンの執事バージョン」?

メイちゃん執事、ドラマを思い出して~

どんなだったかな(^_^;)