第2話 抱きしめあえる夜だから 11

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-From 1-

時差のせいなのか・・・

それとも俺の横でスースー寝てるこいつのせいなのか・・・

真夜中すぎに目がさめた。

どうせなら眠れない夜より眠らせない夜の方が良いに決まってる。

そう考えながら胸の奥へとつくしを抱きしめた。

甘い匂いが鼻腔をくすぐる。

一人寝のベットの中で思い描いた白い華奢なからだと温もりが腕の中で寝息を立てる。

抱きしめあって・・・

キスして抗う様に見せる仕草も・・・

皮膚を伝う指先は愛おしさに狂おう。

すべて俺を受け入れて漏らす甘い吐息も・・・

何もかもが全部覚えてる愛しい想い。

細胞の隅々まで行きわたりみずみずしさを取り戻す様に生命力があふれだす。

これだから離れられないんだ。

起こさないようにそっと額にキスを落とした。

気がつくと布団の中で枕を抱いて眠ってた。

いつスリ変えやがったぁぁぁぁぁ。

責める相手は隣にいない。

温もりだけを残して消えている。

あいつを胸に抱いたまま「おはよう」って照れるあいつを抱きしめていたかった。

俺の小さな楽しみ、願いは無残に砕け散ってしまってた。

枕を胸に抱いたまま「フー」と長い溜息。

しょうがねえから階段を下りてリビングに向かう。

「あっ、おはよう!」

上機嫌な笑顔でつくしが台所から声をかけた。

トントンと小刻みにテンポよく響く音。

何の音だ?

「マナ板の音だよ」

俺のつぶやいた独り言が進に聞こえたようで教えてくれた。

家族全員がリビングに集結済み。

「洗面所は分かるよね顔洗って来て」

つくしに促されて、顔を洗ってリビングに戻る。

考えたら台所が見える場所にテーブルがあるなんてありえない設計の家しか知らない育ち。

戻って見たらテーブルの上にはご飯に味噌汁、卵焼きにきんぴら納豆が並んでた。

俺も結構覚えたぞ!

庶民の味。

家が狭いのも悪くない。

そう思える不思議な空間、暖かさ。

そろって食べる朝食。

「うまい」

俺の言った一言につくしが極上にほほ笑んだ。

つくしの家族に別れを告げて迎えの車に二人で乗り込む。

今生の別れみたいに家族と一人づつ抱き合って涙を流す一歩手前みたいなつくしの雰囲気。

黒塗りの高級外車に周りには屈強な大男のSP数人。

俺が無理やり連れ去るみてぇーじゃねぇーかッ。

近所に勘違いされる心配ないよな?

車に乗り込んだ後は笑って手を振った。

「楽しかったようだな。俺がいない間」

「そうでもないよ」

ドキッとした気まずさを張り付けたままつくしが答える。

「類に、総二郎、あきら?それに滋に桜子」

「締めは実家だもんなぁ」

「いいよな、俺は一人で忙しく仕事をしていたと言うのに」

そんなことを責めるつもりは毛頭ないのに詰め寄るのは俺のこいつへのただの甘え。

「淋しさのつけ・・・払ってもらわないと」

「ウッ」と言って固まったつくしの唇に自分の唇を押しつけた。

 

-From 2-

ねちっこい

何気に触る道明寺の指先。

昨日は我慢させたからなぁと今は私が我慢する。

それに加えて自分がいない時の私の行動。

全部道明寺に筒抜けでSPから逐一報告がいっていたことは西田さんから報告済み。

「類とカレー食べてたよな」

「私はカレーは食べてないけど」

「社員食堂で俺以外の奴と食事するな。目立ってしょうがない」

道明寺の時ほどギャラリーは多くなかったと思うのだけど。

「花沢類と二人で食事することそんなにある訳ないでしょう」

「少しでもあったら困る」

すねたように言って道明寺の指先私の腰のあたりを徘徊気味。

くすぐったいのと道明寺のすねた態度がおかしくて「クス」と頬が緩む。

「わざわざ着物着て総二郎とパティー何なんだ?」

「話の流れでそうなって付き合っただけだから」

「振袖着て行った訳じゃないから問題ないでしょう」

あれは確かに参った。

私たちが結婚してから自分達には縁談が増えていい迷惑だみたいな感じで言われた。

西門さんが女性を紹介されるのを避けるのに私を利用したことは内緒にしていたほうが無難そうだ。

「そんな問題じゃねえだろう!」

「総二郎の横にお前が並んでいるのが問題なんだろうがぁ」

「お前の横に並んでいいのは俺だけだ」

車の中で誰にも渡さないって感じに抱きしめられる。

息出来ないよぉぉぉぉぉ。

「あっ、わりっ」

少し緩められた腕の中で「ハーッ」と大きく息を吹いた。

「ホテルでなにしてた?」

「えっ?」

「人が勘違いする様な聞き方しないでよねッ」

「ホテルの中の出来事まではさすがに報告届いてないからなぁ」

F3に滋に桜子が集まったことは知ってるはずなのにいじわるっぽい表情を浮かべる。

「俺はその頃一人で淋しかった」

私はその頃みんなに結婚生活はどうとかこうとか、ハーレクインの小説まで引き合いに出されておもちゃにされてだけだ。

まあ・・・御蔭で・・・淋しくはなかったけど・・・

あの後アルコールの酔いに任せて盛り上がって・・・

後は覚えてない。

二人一緒に邸に帰り着く。

前もって連絡を受けていた使用人たちに「お帰りなさいませ」と出迎えられた。

ムスッとした感じの道明寺に無理やり手をひかれた状態でその前を早足で歩いていく。

バタンとドアを開けて入る二人の私室。

「つれぇー」

一言言って道明寺の頬がニマッと緩んだ。

「顔を作るの苦労した。気が緩むとだらしなくなりそうだったんだからな」

道明寺の腕がグッと動いて私の体を包み込む。

久しぶりに「ドクン」と胸打つ道明寺の鼓動を耳元で聞いてドキッと私の鼓動も反応する。

ようやく二人っきりになれた大事な時間。

そのまま私の腕を道明寺の背中にまわして負けないくらいに抱きしめた。

「トントン」

ノックされる部屋のドア。

「誰か来たよ」

「ほっとけ」

「そんな訳にはいかないでしょう」

渋々私から腕を離した道明寺がドアを開ける。

「お届け物が届いてます」

テーブルの上に置かれた段ボール2つ。

送り主は西門さんと美作さんに桜子に滋。

「あいつらなにを送りつけて来たんだ?」

無造作に段ボールを道明寺が開ける。

「なんだ?」

道明寺がとりだした箱のパッケージ。

媚薬・・・夜を大胆に・・・

「へぇ~」興味深深な感じに道明寺は箱を凝視中。

まずい予感がして女性陣からの箱を開けた。

箱の中には派手な下着とその下にハーレクインの本が数冊。

『久しぶりの二人の夜に・・・』

そう書かれたメッセージカード付き。

横から道明寺の指が伸びて来て箱の中から一枚のパンティーをつかむ。

「いいんじゃねぇ」

やけにうれしそうに眺めてパンティーを開いて眺めてる。

「これ・・・真ん中開いてんぞッ」

使い方を想像する道明寺から慌ててそれを取り上げる。

「こんなの使わないんだから」

「俺、何にもつけてない方が好きだけど」

背中から道明寺の腕が伸びてきて抱きしめ捕われる。

久しぶりの二人の夜って・・・・

まだ昼間だぁぁぁぁぁぁぁ!

心の中で叫んで・・・

             ・・・・諦めた。

 

-From 3-

そして俺達は・・・

何度も抱き合い愛し合った。

これが本当の俺達の日常。

当り前の極上のひと時。

温もりを確かめるようにまた抱きしめる。

「いつまでこのまま?」

照れくさそうにシーツを引っ張ってつくしが顔下半分を隠す。

「朝まででもたんねぇかも」

「まだ夕方だ、時間はある」

「もう夕方でしょう」

帰りついてつくしをベットの押し倒したのはお昼前。

そろそろ夕焼けに空が染まりそうな時刻が近づいている。

「遠慮して誰も邪魔しになんか来ないから心配するな」

「折角だからこの媚薬つかってみるか?イチゴ味らしいぞ」

あいつらの送りつけた箱を手にとってつぶやいた。

「そんなの使われたら身が持たない・・・」

言ってつくしが耳まで赤くする。

その顔が媚薬以上に俺に作用するって知らねぇだろう。

「こっちのパンティーでもいいけど」

「つけてない方がいいんでしょう!」

自分で言って後悔したような表情を作って赤くなる。

そんなもの枕元に置いとくなと怒った顔で睨まれた。

ふくれっ面も俺に甘えてる様にしか思えない。

「いや~折角だし、あいつらに報告する義務なんてあるんじゃねぇか?」

「そんなのある訳ない!」

顔を真っ赤にして動揺気味のつくし。

それがおもしろくてしょうがないからからかいたくなる悪戯心。

笑いながらつくしを抱き寄せ真顔になった。

「お前を見ていると媚薬以上に作用してくる」

「えっ?」

少し開いた唇から舌を絡め取る。

漏れる吐息に激しさが増してくる。

さっきまでのは俺のNYでの淋しさの分。

今からは昨日のお前の実家で我慢させられた分。

耳元でそう囁いた俺の言葉に「うそ・・」とつくしの唇が小さく形を変えた。

それ以上の言葉を飲み込むようにまた口づける。

俺の愛撫に反応して色づく素肌にキスを落とす。

ゆっくりとやさしく・・・

愛しいものを傷つけぬけぬように壊さぬように・・・

唇で触れた素肌を慈しむ。

どこまでも深いつながりの中、これ以上深くいりこめない限界までのぼりつめて果てた。

そして・・・

また・・・

          ・・・強く抱きしめた。

続きは抱きしめあえる夜だから 12

ちょっとした悪戯をF3と滋と桜子に準備させてしまいました。

このくらいやりそうじゃないですか?

二人には必要ないでしょうけどねぇ(^_^;)

拍手コメント返礼

すうすう様

なんとか甘あまで仕上げていました。

これでなんとか司の希望はかなったのかな?