HAPPY LIFE 5
*-From 1-
「オッ!いる」
人のお腹に手を押し当てて胎児が動くのを確認してニコッとほほ笑む道明寺。
「・・・だから・・・いるッて言うの辞めてくれない」
水槽の中で飼ってる訳ではないのだから。
「じゃなんて言えばいいんだ?」
「普通は動いたとか、元気だとか・・・」
聞かれて困った。
やっぱり道明寺の表現力から言ったら『いる』が妥当?
あーーーーーッ。
その前に!
暇さえあれば四六時中お腹を触ってる夫っていないと思うんだけどねッ。
胸を触られるよりはましだけど。
「お前さ、いつまで会社に来るの?」
お腹からようやく手を離して道明寺がソファーにもたれかかる。
離した手は私の肩に移動しただけだけの体勢。
「産休に入るまでは働くつもりだよ」
「あと2カ月は働けると思うけど」
答えながらぺたぺたと今日病院でもらったエコーの写真を、赤ちゃんの記録BOOKに張り付ける作業を続ける。
一番最初の写真と比べるとしっかり人間の形になっている。
私の栄養をとってしっかり大きく成長してるんだとホンノリと幸せがあふれてくる。
「そんなに働くつもりか!」
「お腹が出てきたら働かないもんだと思ってた」
道明寺の声にギョッとなって作業を中断してまじまじと道明寺の顔を眺めてた。
もしかして・・・
もう会社行かせないとか・・・考え出している?
「元気なら身体動かしていたほうがいいんだよ」
「この家にいたら右のものを左に動かすのも誰かやってくれるもん、間が持たないよ」
ブツブツと不満そうにつぶやく。
「あぶねえだろうが」
「なにが?」
「転んだり、こけたり、倒れたら」
それ全部同じ意味だと思うけど。
お前結構抜けてるからって・・・
あんたに言われたくないわよぉ!
「そうじゃないと俺、お前に張り付くぞ!」
最大の脅しをかけてきた。
「でもね、しばらくはそこまでお腹も大きくならないし、まだ妊婦かな?みたいな見た目だよ」
「家にいるより会社にいた方が道明寺により近いし、なにかあったらすぐ会えるから安心かも」
道明寺の表情の変化を見逃さないように必死で食い下がる。
道明寺の顔が引き締まって考え込んで固まった。
おーーッ、説得成功?
思った瞬間。
「俺のオフィスの隣にお前の部屋を作らせる」
「えっ?」
「な・・・なにィーーーーーッ」
「それが一番安心だろう」
満足そうに道明寺がほほ笑む。
「冗談でしょう!」
「俺は冗談は言わない」
完全に本気モード丸出し状態。
今にも部屋の工事の発注をしそうな感じに慌ててしまう。
墓穴を掘ったとはこのことか。
それで落ち着ける訳がない。
胎教に悪いし、ストレスがたまりそうだ。
「もう少しはこのままでお願い」
拝み倒す感じで言ってみた。
「俺がお前に会いに行っても文句言わないよな」
「言わない」
法律事務所にちょこまかと顔出す道明寺に文句を言ったのは妊娠前。
「つくし様は逃げませんから」
「仕事がたまっては御屋敷には戻れなくなります」
西田さんに諭されて、脅されて少しは大人しくなっていた。
「昼食ははずっと一緒だぞ」
「わかった」
代表夫妻食堂で昼食!
この絵も何となく社員食堂に収まりつつある。
「行きも帰りも一緒だからな」
「ハイ」
私の帰りをチェックしてるのはいつもの事。
「残業してください」と西田さんが仁王立ちしてたの・・・
この間もあったよな。
「それなら許す」
ニンマリとする道明寺の策にはまった気がしてきた。
続きはHAPPY LIFE6で
-From 2-
「変わりはないか?」
変わりがある訳ない。
道明寺が顔を出したのは2時間ちょっと前。
本社ビルから外に出るたびに必ず一度は道明寺が事務所に顔を出す。
そして外から帰って最上階に上がる前に10階で降りてまた顔をのぞかせる。
最近の恒例行事。
「動いてねぇな」
人のお腹をさすってニコッと笑って出て行った。
赤ん坊もしょっちゅう動いている訳はない。
寝てることの方が多いんだけど・・・。
「俺がお前に会いに行っても文句言わないよな」
「言わない」
そう約束させられた次の日からそれははじまった。
事務所のみんなもケラケラ笑って見つめてる。
「ほほえましいわね」と玲子さん。
「午前中は代表が常務を怒鳴っているところに遭遇したけど別人じゃねえよな」とは甲斐さんの弁。
「つくしちゃんの前じゃ別人だからね。彼は・・・」
岬所長の言葉に「迷惑なんですから」と言って少しの抵抗。
まあ・・・
なんだかんだ言ってもうれしいんだけど。
昼休み。
またまた道明寺が顔を出す。
約束を守らないと最上階に私専用の部屋作られることは事務所のみんなが知っている。
「作ってもらえばいいのに」
からかいながらもみんな協力を惜しまず手助けしてくれている。
最近は道明寺の時間に合わせての昼食タイムが出来るように融通を利かせるやさしい先輩方に涙がこぼれるほど感謝をしている。
「重いもの持つな!」
持つなって・・・
食事の乗ったお盆持ってるだけだけど。
私をテーブルに座らせて二人分の食事を運ぶ道明寺。
セルフサービスも今では慣れたものだ。
「代表・・・奥さんに使われてる?」
「あの代表が・・・」
「キャー!イメージがーーーー!」
社員の驚き様に恥ずかしくってうつむくしかなかった初めの頃。
道明寺の甲斐がいしいその姿を見慣れた今では、『身重の妻を気遣うやさしい人柄』
このフレーズが加わって好感度が2割増だとか。
これは妊婦にいいだとかどこで情報を仕入れてくるのか道明寺が自分の皿から私の皿へほうれん草をのせる。
「もう充分食べたけど・・・」
「二人分だろうがぁ」
二人分って・・・
大人二人分の量が食べれる訳がない。
「体重が増えすぎると大変なんだから。出産の後、体重が戻らなかったら責任とってもらうからね」
「責任ならいくらでもとるぞ」
「夜の運動なら任せておけ」
ニンマリする道明寺に真っ赤になって酸素不足の金魚みたいに口をパクパクさせていた。
今回は司君上手で攻めさせてみました。
この後は~どう攻める!!
拍手返礼
LUCA様
いつもお手数おかけします。
大変助かっています。
いや~ほんと申し訳なさでいっぱいですが、チェック本当にママ甘いですね。
結構見直しているつもりで入るんですけど(^_^;)
これからもよろしくお願いします。